前へ目次 次へ 27/71 春:沈丁花 空気の中に柑橘系の甘い香りが漂い、ああもうこんな時期なのか、とはっきり春の到来を知る。 どこで咲いているのだろう、と見回しても姿はなく、探しながら歩いていると、何軒も先の家の軒下でそっと、端にほんの少し紅がかった白い花を咲かせている。 それが例年であるが、今年は2週間ほども花が早かったせいだろうか。 花の方が先になった。 咲いているのに、匂いがないのだ。 首をかしげていると、先日、急にふっと香るようになった。 香りがやってくる時期は、例年通りのようである。