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不安を隠す人々。焦りのBランク冒険者

 沢山の応援、誤字報告ありがとうございます(´;ω;`)

 週間、月間、四半期ランキングも上がりました。これからもよろしくお願いします!





 水路がブルーにライトアップされていて綺麗。水面が光っているように見える。ヘイズスパイダーの問題が解決していないけど、街は賑やかな様子を見せていた。


 生活圏に魔物が入ってきている状態なんだ⋯⋯それでもパニックになっていないのは、冒険者ギルドの信頼が厚いって事かな? 兵士さんの姿も見えるから、何かあれば駆けつけてもらえる安心感があるのかもね。

 冒険者ギルドと領主様の私兵が、上手く協力しあっているから何とかなってるのかも。きっとそれだけじゃない⋯⋯住民の皆の協力もあって、治安が崩壊しないように保たれているのかもしれない。

 きっとここの領主様も、住民の皆から愛されるような人なんだろうね。


「凄いね、ビビ」


「ん? 何がだ?」


「何でもなーい」


 全部勝手な妄想推理だもの⋯⋯まったく外れてるとは思ってないけどね。



 僕とビビは警戒をしながらも、それを表情に出さないように巡回をしていった。気配拡大感知スキルを使用しても、街全体をカバー出来る程広くはない。


「ビビ、あれ綺麗だよ」


「ガラス細工の置物か⋯⋯確かに綺麗だな」


 そこには猫のガラスで造られた置物があったんだ。尻尾までピンと伸びているから、どこかにぶつけたら折れて取れちゃうかもしれない。でも可愛いし綺麗だなぁ。


「買ってく?」


「置く場所ないだろ?」


「確かに⋯⋯でも記念に何か欲しいんだよね」


「問題が片付いたら見てみようか」


「うん!」


 良かった。ビビの許可が出たよ! やっぱり初めて来た街は楽しいんだよね。どれを見ても珍しいくて気になっちゃうんだ。何を買うかだけでもチェックしておこう。


 アルフラが観光地なのも理由の一つかもしれないけど、ヘイズスパイダーのせいで夜中まで営業しているお店が多い。まだ二十時ちょいだから、そんなに夜中でもないかな。いつもならビビとお風呂に入ってる時間だね。


 店の人は笑顔で客引きをしているけど、不安を抱えているせいか疲労気味で顔色が良くない。


「大丈夫です? おじさん」


「お? どこの子だい? 食ってくか?」


 屋台のおじさんに話しかけたら、笑顔で言葉を返してくれた。でも目の下にはクマがあり、明らかに疲労感が隠せていない。


 心配だな⋯⋯早く何とかしてあげたいよ。皆夜にはぐっすりベッドで寝たいよね。


「じゃあ⋯⋯えーっと」


 屋台では焼きたてのピッツァが売られていた。チーズとトマトソース、炙られたベーコンの香りにヨダレが出そうになる。


 夕食はもう食べたんだけど、これを見ちゃうと挙手したくなっちゃう。チーズびよーんって伸ばしたいなぁ。いつか食べる用に買っておこう。


「十枚下さい。おじさん」


「おお! そんなに買ってくれるのかい。良いねぇ。一枚おまけしてやるよ」


「嬉しいです。ありがとー!」


 詠唱が聞こえないようにリジェネーションをかけてあげた。神聖魔法は驚かれるから、バレないようにしてみたんだ。


「アーク。あれ」


 ビビが指差した方向には、ピカタサンドという物が売られていた。溶いた卵をつけて焼いた鳥肉を、パリパリのバケットに挟んだ食べ物みたい。


「食べたいの?」


「うん。少〜し興味がある程度だな⋯⋯少〜しな」


「あはは。そっちも行こうね」


 ビビは鳥肉が好きだと言わないんだ。好きな癖に〜。


「出来たぞ。40ゴールドだ」


「ありがとうございます。どーぞ」


「確かに。毎度あり! 沢山売れたからか、元気が出て来たよ」


「良かったです。あんまり無理しないでね?」


「はっはっは。ありがとさんよ」


 元気が戻ったみたいで嬉しいな。


 ピッツァは薄べったい厚紙の箱に入っていた。十一枚重なっているから凄い迫力があるよ。

 そっと両手で受け取ると、箱の隙間から良い匂いが漏れてくる。


 一度屋台から離れ、少し暗い路地で無限収納へしまった。食べる時が楽しみだな。


 ビビの食べたがっていたピカタサンド屋さんへ行くと、恰幅の良いおばちゃんが機敏な動きで料理をしている。鳥肉はピカタにする前に、何かに漬け込んでいるみたいだね。


「こんばんは」


「おや、いらっしゃい」


 おばちゃんは楽しそうに仕事をしている。でもやっぱり疲れているんだね。


 僕はさっきの店同様に、大きなピカタサンドを十個注文した。リジェネーションも忘れてないよ。疲れが目についた人をどんどん回復させていこうかな。


「ありがとうね! 坊やは早くお家へ帰りなよ」


「こちらこそありがとうございます。お仕事無理しないでね」


「わかってるよ」


 大きな紙袋を渡されて、おばちゃんに手を振った。食べる時の楽しみが増えたね。ビビ。



 人混みに紛れながら収納して、ビビと手を繋ぎながら歩いて行く。


「なあ、アーク」


「なーに? ビビ」


「あ、いや⋯⋯何でもないんだ」


 チラッとビビの顔を見ると、目が合ってから顔を逸らされてしまった。変な反応だね⋯⋯ビビが僕の左腕を抱き寄せた。ちょっと歩きずらいかも⋯⋯あら?


 武装した三人組の兵士さんが正面から歩いて来たので、一応頭を下げておいた。きっと僕と同じように街を巡回している人達だ。


 ふと、兵士の一人がこちらに振り向いて、僕達の前にしゃがみ込む。


「おい、チビ助に嬢ちゃん。親はどうした? 二人だけじゃ危ねえだろ?」


 その人は心配そうな顔をしながら、僕達の頭に手を置いた。確かに父様と母様がいないと考えると、世界滅亡の危機がきたら僕達だけじゃどうしようもない。


「街の巡回ご苦労さまです。僕達も同じくヘイズスパイダーを探しているところです」


「⋯⋯遊びじゃないんだぞ? もし本当に出て来たらどうするんだ」


「勿論倒します」


 兵士さんが溜め息を吐く。これはいつものパターンだ⋯⋯


「だから──」


「“ベヒモスモード”」


 兵士さんの言葉を遮るように、僕は魔装“ベヒモス”を起動した。説明してもなかなか伝わらないなら、先に自分が何なのかを教えてしまった方が良い⋯⋯このパターンは何度も経験済みだもんね。


「それは⋯⋯まさか魔装ってやつか?」


「僕は冒険者なのです。心配していただきありがとうございました」


「冒険者だって!?」


「はい。こちらをどうぞ」


 冒険者カードを取り出すと、兵士さんが目を見開いて驚愕した顔になる。


「び! Bランク!?」


 Bランクって、やっぱり驚かれるものなんだね。僕はもっと上を目指しているから、物足りなくて仕方ないんだけど⋯⋯


「はい、僕も不注意でした。急に襲われた場合、防具くらい着けていた方が良いですよね。すいません」


「名前がアーク⋯⋯Bランクでアークって、もしかして銀閃のアークさんですか?」


 アルフラの兵士さんまで僕のことを知っているの? 冒険者ならわかるけど、それ以外の人は何処からそんな情報を仕入れているんだろ?


 兵士さんが大きな声で喋るから、周りの目が僕に集中されてしまう。通行人の足が止まり、耳をすませている人までいるみたい。


 今は魔装を着けた事を後悔しているよ。銀ピカで目立つ見た目なんだよね⋯⋯竜のような篭手は迫力があるし、パッと見で高級品だとわかるから。


「兵士さん、そろそろカードを⋯⋯」


「これは失礼しました! お噂はかねがね聞いております! こちらお返し致します!」


「そんなに畏まらないで下さい。心配してもらえて僕は嬉しいですよ」


 カードを受け取りながら、僕は苦笑いで返事をした。心配して声をかけてくれたんだから、それを邪険に思ったらいけないよ。


「僕も巡回を頑張ります。兵士さんも気をつけて下さいね」


「はい! ありがとうございます!」


 兵士さんは背筋を伸ばし、見事な敬礼をしてくれる。


 あぅ⋯⋯それじゃ目立っちゃ──


「ッ!」


 気配拡大感知に魔物の反応が出現した。きっとこれがヘイズスパイダーの子供だ⋯⋯西北西の方角に約六百メートル。魔物と人の反応が近い!


 サッとドラシーを抜き放ち、夜空を突き刺すように切っ先を向けた。


「“ホーミングレーザー”」


「なっ!」

「なんだ!」

「ふえ⋯⋯」


 僕の突然の行動に、その場にいた兵士さんや商人さん達が驚愕の顔をする。ごめんなさい⋯⋯説明する前に倒したかったので。


 勿論殆(ほとん)ど魔力は込めていない。一筋の白い光線が、吸い込まれるように目標へと着弾したのがわかった。


「驚かせてすいません。向こうの方角に魔物の気配が出現いたしましたので⋯⋯ちょっと回収に行ってきますね」


 ビビと一緒に走り出すと、数秒後には現場に到着する。屋根に飛び上がり、一直線に飛び移って移動したから速かった。

 そこは街灯の無い暗い路地裏で、一人の酔っ払いが赤ら顔で(いびき)を掻いている。


 冷たい地面の上で寝たら風邪をひきますよ? ちょっと心配になっちゃうよね⋯⋯でもとりあえずは魔物の確認が先かな。


 ヘイズスパイダーは、体が真っ白い毛に覆われているんだね。ホーミングレーザーを体の真ん中に受けたから、蜘蛛は既に絶滅していた。大きさはポーラさんが言っていたように三十センチくらいかな。目が真っ赤だよ⋯⋯いちにーさんしー⋯⋯十二個もある。


 きっとこの酔っ払ったおじさんを襲おうと姿を現したんだ。危なかったね⋯⋯


「“キュアポイズン”、“リジェネーション”」


 これで大丈夫。少しすれば起きて家に帰れる筈だ。


 一度ヘイズスパイダーに手を合わせた。この魔物の親が、Aランクの魔物になるんだね。


 Aランク⋯⋯僕はその魔物に勝てるのかな? きっと簡単には勝てないんだろうけど⋯⋯


「どういう体になっているんだろうな。気になる⋯⋯」


「ん? どういう事?」


「持ってみろ」


 ビビが蜘蛛を掴んで寄こしてくる。持ってみると滅茶苦茶軽かった。


「すっごく軽いね」


「ああ、スプーンより軽いんじゃないか?」


「確かに⋯⋯」


 ちょっと不気味だな。半分幽霊なんじゃ⋯⋯ナイナイナイナイ! そんなわけなーい!


「つ、次行くよビビ! 迷子にならないように、て、手を繋ごう!」


「? わかった⋯⋯?」


 ちょっと背筋を寒くしつつも、僕達は巡回を再開する。ビビが怖がるから手を繋いであげたんだよ? ビビが怖がるからね!

 いくら気配拡大感知スキルを使おうとも、街全体をカバー出来る程広くは無い。なので、街の中を時計回りに移動しながら進んでいる。


 ビビと分かれた方が効率的かもしれないよね。他にも巡回している人達がいるから、無理に別行動する必要も無いけどさ。



 そんな時、鋭い視線に貫かれた気がした。勢い良く振り返ってみると、その先には湖がある。その湖の先、まさか対岸から僕を見ているの?


「どうしたアーク?」


「ん⋯⋯“ディスタントビュー”」


 弓技スキルのディスタントビューを発動した。


 かなり距離がある⋯⋯スキルを使っても真っ暗闇の森の中⋯⋯流石にあまり見えないね。ディスタントビューならかなり遠くまでは見えるんだけどな。


 ん? 何か動く影が見えた気が⋯⋯あ、あれは尻尾?


 月の光が反射して、妖しく光る目が見えた。僕とそいつは数秒間見詰め合う⋯⋯あれはイグラムで会った魔狼(まろう)だ。

 何でこんな場所にいるのかな?


 魔狼は僕から視線を外すと、ゆっくりと夜闇の中へ消えていった。何か伝えたいことでもあるのだろうか? 考えに没頭していたら、いきなりビビの顔が視界の真ん中に割り込んで来る。


「アーク?」


「ん、何でもない。ちょっと気になっただけ」


 また何か悪い事でも起きるのかな⋯⋯そうなってはほしくないよ。


 巡回を続けていたら、また良い匂いが漂ってきた。少し移動してみると、美味しそうな焼き鳥が売っている。


「焼き鳥か?」


「そうみたいだね。夜食にする?」


「ふむ。仕方ないな」


 何が仕方ないのかわからないけど、きっと仕方ない! 焼き鳥屋さんの屋台に近づくと、更に香ばしい匂いに涎が出て来たよ。脂が(したた)って炭火へ落ち、パチパチと爆ぜながら良い音が聞こえて来る。

 甘口ダレ、辛口ダレ、ネギ塩レモン、粗挽き塩胡椒、その四種類から味付けを選べるみたいだ。


 迷うなぁ。どれにするかなー。大きいから一本で十分なんだよね。


「らっしゃい」


「こんばんは!」


「どれがいいんだい?」


「少々お待ちを。ビビ決まった?」


「うん」


 本当は無理に買う必要も無いんだ。でも焼き鳥屋のおじさんにもリジェネーションをかけてあげたい。仕方がないなとか言いながら、ビビの目が輝いて見える。鳥肉好きだからね⋯⋯どれを食べるか僕より悩みそうだ。


「粗挽き塩胡椒味下さい」


「へい。嬢ちゃんは?」


「全部だ」


「まいど」


 ビビ⋯⋯かっこいい!



 それからヘイズスパイダーを七匹倒し、合計八匹倒すことが出来た。でもやっぱり親を倒さなきゃ終わらないだろうね。朝日が昇ってきたかと思えば、変な違和感も溶けて無くなってしまう。


 何だったのかわからないけど、蜘蛛が出始めると違和感を感じるのかも。


 これはきっと何か関係がある? でもビビには何も感じないんだよね。んー⋯⋯感覚的なあれだからなぁ。とりあえずまた今日の夜考えることにしようかな。



side Bランクパーティー“ふるさとフレンズ”。アシモフ



 俺は今日も成果を上げられなかった。リーダーなのに不甲斐ない⋯⋯早く親蜘蛛を倒さなきゃならないのに。


 現在森の中を探索しているが、ヘイズスパイダーの巣が見つからない。そもそも巣があるのかさえ謎なんだ。

 街の中にあるのか森の中にあるのかはわからないけど、退治しなけりゃ何時までもこの状態が続くんだろうな。


 はぁ。イライラする。


 これでもう何日目なんだ? 本当に探し出すことが出来るのだろうか。左手で剣の柄を強く握りながら、右手で大木を殴りつけた。


 ──ズシン⋯⋯


 思ったより重い音が響いてしまった。野鳥が木から飛び立って、こちらを迷惑そうに睨みつけていく。


 こんな八つ当たり、何の気晴らしにもならねーよ。


「アシモフさん。どうですか?」


 パーティーメンバーの一人が近付いて来る。彼は狩人で、探索にかけてはピカイチの腕前なんだ。当然俺より広い範囲を見て回っただろう。


「さっぱりだ。痕跡一つ見つからん。街の外にはいないのかもな」


「こちらもさっぱりです。あ、でも大きな足跡は見つけました⋯⋯報告しなきゃと思って戻って来たのです。まだ新しいものだったので⋯⋯」


「ヘイズスパイダーじゃないんだろ? そんな足跡なんて気にしてどうするんだ?」


「⋯⋯多分魔狼の一種だと思うんですが、かなり体の大きなやつみたいです。もし遭遇したら、パーティー全員で戦わないと勝てないと思われます」


「⋯⋯Cランク魔獣か? クソ⋯⋯ギルドに良い報告の一つも出来ないじゃないか。仕方ねーか⋯⋯一旦街へ戻るとする」


「はい」


 ヘイズスパイダーの次は大きな魔狼かよ。本当についてないな。


 街の住人にも被害が出ている。今パニックになっていないのは、この街には俺達がいるからだ。

 期待されている事は素直に嬉しい。絶対に倒してやるって気持ちもある。だけどヘイズスパイダーは隠密性に特化した魔物だ。出現報告が少な過ぎて、冒険者ギルドでも情報が殆ど得られなかった。

 相手はAランクの魔物⋯⋯戦闘能力はそこまで高くないらしいけど、討伐記録が無い魔物なんだ⋯⋯ハッキリ言って打つ手が無い。


 俺達が音を上げるわけにはいかねーよな。領主様も資料集めに奔走してくれている。今は皆で力を合わせる時なんだ。


 湖の外側から、綺麗なアルフラの街を眺める。


 あそこは俺が生まれ育った街だ。魔物なんかにくれてやるかよ!







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