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閑話 舞台裏と封印されし者






side キジャ



 ここは兵舎の地下にある牢屋だ。陰湿な雰囲気であまり来たかない場所なんだが、そうも言ってられん。

 俺と領主は冷たい石畳に足音を響かせ、その最奥にいる人物に近づいて行く。


 数日眠りっぱなしだったが、今日男が目を覚ましたと連絡を受けた。


 領主から急に呼び出されたから何事かと思ったぜ。


「いやはや、アーク君は凄いね。まさかあの伯爵の弱みを握れることになるなんて⋯⋯クックック」


「この場所暗いんですから、顔がまんま悪役に見えますよ」


 そうだ。ここは地下なのでジメジメしている。暗いしちょっと不衛生な感じが好きじゃない。あと少しカビ臭いしな。そんな場所で黒い笑顔なんて見たくねえよ。


「これが笑わずにいられるかい? あの伯爵のアキレス腱と言っても良い人物だ。跡取り息子なんだからなぁ」


「そいつの使い方は領主様に任せますよ。俺は根っからの平民なんです。貴族の面倒事に好きで絡みたくないもんで」


「キジャ君は本当に貴族嫌いだよね。貴族って言ってもさ、内政の上手いやつもいれば戦うしか出来ないのもいるからね。悪事に走って金稼ぎに精を出すやつもいるけど、腹の中で何考えてるのかわからないのは全員同じさ」


「生きる世界が違うってことです」


「冒険者ギルドのマスターなら、貴族に似たしがらみもありそうだけど?」


「まあ実際ありますよ。馬鹿な連中と馬鹿に騒いでるのが性に合ってるんですが、それだけじゃギルドマスターは務まりませんね」


 お互い苦笑いになりながら、目的の牢屋の前に到着した。中には当然奴がいる。元Aランク冒険者⋯⋯


「氷竜剣のジルクバーン・フォルティーニだな」


「ああ? 誰だ〜髭面」


 その男はベッドに寝転がり、不遜な態度で欠伸を噛み殺す。目にはまだ力があり、薄暗さが獰猛な眼を強調しているようだ。


 流石の胆力だな。動じもしねえか。


「俺はこの町の冒険者ギルドのマスターだよ」


 ジルクバーンは上半身を起こし、口の端を吊り上げた。


「⋯⋯つーとあれか? お前はキジャかテイターのどっちかってわけだ」


「それくらいは知っていたか。テイターは夜勤だな。昼は俺だ」


「クックック。他にも知ってるぜぇ⋯⋯お前には懸賞金がかけられていたなぁ。確か8400万ゴールドの賞金首だった筈だ。何をやらかしたんだ?」


「古い話しだな⋯⋯それは解決済みになってるぜ? “コレ”で黙らせてきたからよ」


 俺が拳を握り締めると、それを見たジルクバーンが口笛を吹いた。自由を縛ろうとした国と喧嘩して、挙句の果てに懸賞首だ。今じゃ大人しいけどな⋯⋯しっかりと“わからせて”やったからよ。


「それと、今回お前に話をしに来たのは俺じゃねえ」


「わーってるよ。そこのセルジオス・ラム・ガルフリーだろ? クックック⋯⋯なあ? 底辺まで落ちぶれた騎士爵家の分際で、今更迷宮でのし上がろうってつもりなんだろ? なぁ? どんな気分だ? 平民に助けられて、恥ずかしくねーのか?」


 ジルクバーンが領主を煽り始めた。そこまでの挑発ではないように思えるが、対面を気にする貴族は多い。うちの領主を怒らせたいのか、それともどの程度までなら挑発にのるのかを確かめているのか⋯⋯


「ペラペラと良く喋るんだな。随分と口が軽そうだ。君はフォルティーニ家の次期当主だろう?」


「まあな」


 領主が一歩前に出た。どちらかと言えば臆病な性格なんだが、それを微塵も感じさせないようにしている。

 貴族のプライドか⋯⋯(ある)いは民を背負って立つ者としての責任感か⋯⋯その両方かもしれん。


「さあ、取り引きをしようじゃないか」


「いきなりかよ⋯⋯まあ俺も無駄は嫌いだ、いいぜ」


 領主が黒い笑いを見せた。


 こういうところを見ると、やっぱりうちの領主も貴族なんだと再確認できるな。


 話をまとめると、フォルティーニ家は今回の件から手を引くそうだ。捕まってしまったのは偶然で、アークの実力を舐めてかかって返り討ちになったそうだ。当然ながら捕まる予定は無かったんだとよ。


「私が望むのはまず奴隷の解放だ。次に君の領地で採れる希少なオリハルコンの定期的な融通で今回の被害はチャラにしてもいい」


「ああ」


「都市間移動の大型魔導車があるだろう? その周回ルートにドラグスを加えること」


「ああ」


「次に土木工事に特化した魔術師の派遣。魔石とこれから必要になる大量の資材」


「はいはい⋯⋯わかったわかったわかりましたよーっと」


「素直でよろしい」


「はぁ〜。はいはい。もう好きにしてくれよ」


 最後に派閥の移動を命じると、渋々ながらに了承した。全てが公になり、家が取り潰されるくらいなら従った方がましだろう。

 魔術の契約書にサインをさせて、内容を密書としてフォルティーニ家へ移送させる。


 この契約書が届けば、フォルティーニ家は蜂の巣を突っついたように慌てふためくだろうな。



side アキム



 このドラグスは凄い勢いで発展を始めている。街中の道も広くなり、大型の魔導車も大通りなら余裕で通れるようになった。

 領主が色々な所へ注意を向けているのが良くわかる。この調子でいけば、きっと五年後には凄い事になっているだろうな。


 少し不安だったんだが、ドラグスにも魔導車を見れる技師がいたんだ。迷宮でドラグスが発展するのを見越して、先に良い場所を確保しようってんだろうな。


 俺達は冒険者の助けを借りて、整備出来る工場まで魔導車を運んでもらった。工場って言ってもまだ掘っ建て小屋のようなものだったが⋯⋯その作業には世話になったモウメスさんもいて、あの時の礼を改めてする。


 原っぱの上に置かれたテーブルに着いて、あれからの事を話し合う。


 モウメスさんにアークの事を聞いてみたら、良くギルドで大人達に(いじく)り回されているらしい。


「わからん子供ですな」


「仰る通りですね⋯⋯不思議な子供ですよ。大人として負けていられません。また次の機会があればよろしくお願いします」


 モウメスさんが頭を下げた。ここまで腰の低いCランク冒険者も珍しいな。


 俺達は苦笑いをすると、珈琲を啜って空を眺める。今回、商人には被害は無かった。だが、冒険者の被害は酷かったな。


 何があって何に巻き込まれたのか教えてもらえなかったが、きっとろくでもない事に違いない。




side ???



 此処は結界に閉ざされた地の底。私は手、腕、腹、足首などを特殊な鉄杭に貫かれ、壁に張り付けにされている。

 ほんのりと魔力を含んだ水晶が、私のいる空間を照らしていた。


 惨めな姿ですね。まさか我が子等にここまでのことをされるとは思わなかったわ。


 閉じ込められてから何百年経っただろう? 何時になったら出してもらえるのか⋯⋯そんな日は来ないかもしれない。

 今の私は力を搾取されるだけの存在。出来ることと言えば、世界を見守り続けることしかない。


 何も出来ない無力感に苛まれながら、何とかしなければと思っている。だが現状は私の力だけではどうにもならないのだ⋯⋯


 かつて私は神の一柱だった。神とは摂理を組み上げて、世界のバランスを整えるための存在だ。

 人も龍も魔の者達も、全て私が創造した。だから全てが私の子供のようなもの。大地も空も海までも、どれをとっても愛おしい。

 しかし、私は裏切られた。異世界から来た者達の手引きで、今私はここに囚われている。


 異世界人は明らかに異常な力を有していた⋯⋯チート? とか言う能力を好き勝手に使い、世界のバランスを崩す者達だ。

 いったいどうすれば良かったのだろう。彼等の主張は楽しく異世界を遊び尽くしたいとのことだったが⋯⋯



 私は彼等の身勝手な主張にとても頭を悩ませることになる。良い解決方法はないかと下界を歩いていた時だった⋯⋯いきなり不意をつかれた私は力を奪われ、何者かにこの場所に封印されてしまった。

 そんなことが可能だと思わなかったのだ。神を封じる術があるなど誰が考えようか⋯⋯


 それから数百年の時が流れる。いかに異世界人と言えど、私から奪った力はそう容易くは扱えないだろう。その証拠に、秩序は未だに保たれたままなのだからだ。


 でもそんな平和が何時まで続くかわからない。駄目ね⋯⋯焦ってはいけない。希望はあるのだから。


 私は一人の子供を見つめていた。力の無い私が、最後に与えたスキルを持つ男の子だ。


 そのスキルの名は【恩恵の手引書】。全てのスキルの秘密を知ることが出来る最高のスキル。人によってはゴミになるようなスキルだけど、この子なら使いこなせると私は確信している。


 この男の子を始めて見た時、この子にはこれしかないとすら思えた。この男の子が成長すれば、きっといつか私を助けてくれると信じることが出来た。


「⋯⋯アーク」


 それがその男の子の名前⋯⋯私が託した最後の希望です。


 誰にも負けないで⋯⋯アーク。世界のために強くなって⋯⋯その先にきっと⋯⋯君の望む景色がある筈よ。


 私はアークに加護も何も授けてやれない⋯⋯そうすればすぐに異世界人にバレてしまう。この場所からでは力も貸してやれない⋯⋯強い神器も何も与えてやれない。


 もどかしい⋯⋯何て無力なんだろう⋯⋯


「創造主様創造主様」


 そんな時、風の大精霊の声が私に届いた。


 もうそんな時間なのね⋯⋯


 私の少ない手足とも言える精霊が、こうやって定期的に報告に来てくれるのだ。今日はどんな情報を持って来てくれたんだろう。


「異世界人達の動きですが、甘党さんは相変わらず甘味開発の日々ですぅ〜。とっても甘いんですね〜」


「甘党? 確か紅葉とか言う名前の異世界人でしたか⋯⋯あの娘は無害でしょう? もっと別の⋯⋯」


「引き続き“まかろん”の調査してきますぅ。気合い入りますぅ〜!!」


「こ、コラ! 待ちなさい! コラ〜!」


 精霊の気配が去って行った⋯⋯え? フリじゃないのね⋯⋯


 た、頼んだわアーク。本当に私は何もしてあげられないかもしれないわ!






 アクション日間15位に入ってました(´;ω;`)

 ありがとうございます(´;ω;`)

 四章ももっと楽しくなるように頑張ってまいりたいと思います。

 現在(5月1日)五章を執筆中です。


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