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久しぶりの冒険者ギルド

*少し前話を書き直しました。





 ビビが家に来てから二ヶ月と少し、僕は大好きな冒険者ギルドに殆ど顔を出せていなかった。

 雪が積もっていて依頼も少なかったし、それよりも後回しに出来ない問題があったから仕方ない。


 その問題が何かと言えば、ビビに毎日齧られて血が足りない状態が続いているせいだね。

 でもそんな日々も今日までだよ! そう、僕は神様に“再生”スキルを授けられたんだ。


「これからは飲み放題?」


「かなり飲めると思うよ。魔力で補充出来るから⋯⋯飲む?」


「む⋯⋯強請(ねだ)ったみたいじゃないか」


「強請ったよね?」


「⋯⋯」


 朝の雑木林の中で、ビビの瞳が真っ赤に染まっていた。その大きな瞳を見れば直ぐわかるんだよ?


 僕が切り株に座ると、ビビが僕の右膝の上に腰掛ける。襟が少し(まく)られて、ひんやりした柔らかい肌が首筋に当たった。直ぐにチクリと牙が立てられて、ゆっくり時間をかけて飲み始める。


 この時、ビビから言われた注意事項がいくつかあるんだ。


 髪の毛を触るな、話しかけるな、ポリポリ菓子を食べるな気が散る、暇なら背中を抱いていてくれの五つである。

 飲み終わると、ビビは噛んだ傷口を舐めるのが癖だ。飲み終わった後にも約束した事があるんだけど、吸血鬼ルールは難しい⋯⋯


 飲んだ感想を聞くな、あまり見るな、菓子でも食っていろ、などなど。

 丁度血を飲み終わったみたいだし、お菓子でも食べるかな。あー仕方ないなー。サクサクもしゃもしゃ。


「ビビ。雪遊びしない?」


「しない」


「今日は雪合戦しないの?」


「流れ玉が岩を貫通するようなのを雪合戦とは言わない。戦争だ」


「そうなんだぁ」


 この後はビビと一緒に雪で鎌倉を作った。雪の滑り台も作り、ドラゴンの立派な雪像も作る。

 雪で遊ぶのは楽しいな。次は何を作ろうか⋯⋯


「そろそろ帰らないといけないぞ」


 ビビに声をかけられて、今日やらなきゃいけない事を思い出す。


「あ、もう朝食の時間?」


「そうだ。弁当も作るんだろ?」


 色々忘れそうになってたよ。今日は久しぶりに冒険者ギルドへ行くつもりだ。


 僕はギルドカードを取り出して、ステータスをチェックする。ついでにスキルもチェックしておこう。



*名前 アーク

 種族 人族

 年齢 5

 出身地 ドラグス


 魂魄レベル 49


 体力 991

 魔力 1459


 力  688

 防御 298

 敏捷 1552


 残金 5127635ゴールド


 武術系スキル


 中級剣術レベル2

 剣技“パワースラッシュ”、“ウェポンスナッチ”、“アーマーブレイク”、“オーラスティンガー”

 中級短剣術レベル2

 短剣技“クイックシャドウ”、“シャドウウォーリアー”、“スピードバインド”、“バックスタブ”

 中級体術レベル3

 体技“二段跳び”、“岩砕脚”、“震激雷波掌”、“加歩”、“超重踵落とし”

 中級弓術レベル1

 弓技“ディスタントビュー”、“エンチャントアロー”、“インビジブルセカンドアロー”



 魔法系スキル


 生活魔法レベル3

 “クリーンウォッシュ”、“イグナイト”、“フリーズ”

 火魔法レベル5

 “ファイアバレット”、“ファイアスネイク”、“ファイアアロー”、“ファイアボール”、“ボイルドファイア”

 火炎魔法レベル1

 “フレイムランス”

 水魔法レベル5

 “バブルボム”、“ウォーターフォール”、“ドライミスト”、“ウォーターウィップ”、“エリアレイン”

 氷魔法レベル1

 “ブリザード”

 風魔法レベル5

 “エアークエイク”、“エアーショット”、“エアーコントロール”、“エアーカッター”、“ダストデビル”

 暴風魔法レベル1

 “サイクロンブレード”

 土魔法レベル5

 “ヘキサゴンストーン”、“クレイゴーレム”、“ストーンハンド”、“フォーリングロックス”、“ストーンエッジ”

 大地魔法レベル1

 “アースドリル”

 光魔法レベル4

 “ライト”、“ポイントレーザー”、“オプティカルカムフラージュ”、“ミラージュ”

 神聖魔法レベル4

 “ヒール”、“リジェネーション”、“キュアポイズン”、“リフレクション”


 補助スキル


 魔力感知レベルMAX、魔力操作レベルMAX、魔力高速循環レベル3、魔力消費軽減レベル8、魔力増強レベル4、魔法威力増強レベル1、探索レベル7、気配察知レベル9、尾行レベル6、隠密レベル9、悪路走行レベル9、荷運びレベル6、忍耐レベル8、苦痛耐性レベル6、精神耐性レベル1、毒耐性レベル4、火耐性レベル6、水耐性レベル1、氷耐性レベル2、風耐性レベル1、土耐性レベル1、礼儀作法レベル5、暗視レベル5、自然回復力向上レベルMAX、超回復レベル1、敏捷強化レベルMAX、高速移動レベル3、筋力増強レベル8、分割思考レベルMAX、並列思考レベル2、思考加速レベル1、投擲レベル8、料理レベル5、解体レベル5、釣りレベル2、回避レベルMAX、超回避レベル1、危険感知レベル9、威圧レベル3、気力操作レベル5、身体強化レベル5、再生レベル1。


 ???スキル


 魔気融合身体強化レベル2


 ユニークスキル


 恩恵の手引書、無限収納


 称号


 猫の天敵、お姉さん殺し、町のアイドル、魔法使い、小金持ち、我が道をゆく者、ゴブリンキラー、オークキラー、夢を追いかける者、異名を持つ者、金持ち


 テイム


 ヴァンパイア ビビ  レベル38/45


 B級魔剣“ドラゴンシーカー”

 “遺伝子吸収”、“魔気融合増幅”、“魔法強化”、“ホーミングレーザー”、“毒尾”


 結構色んなスキルが増えている。ギルド行けなかった間に頑張ったんだよ。

 今ならベスちゃんと戦っても五秒はもつ? かな? 自信無いなぁ。





 冒険者ギルドに到着です。なんか照れる。久しぶり過ぎてね。

 僕はミルクさんに笑顔でお辞儀をすると、何も知らないビビまでミルクさんにお辞儀をした。ミルクさんのカリスマ性に気がついたのかな? ビビ。


 依頼よりもまずは知人に顔を見せなくちゃ。


「おはようございます!」


「アークちゃん! 今まで何してたの?」


 ミラさんが驚いた顔をする。そしてガシッと僕を捕まえて抱き上げた。

 寒いからミラさんも暖かそうな服を着ているね。ああ、ふわふわで柔らかい。良い匂いがする⋯⋯このままだと寝てしまいそうにな⋯⋯え? 何で抱き上げたの?


 去年の年末も今年の新年も、僕はギルドに顔を出せなかった。それなのにいきなり僕が来て、ミラさんもびっくりしたのかもね。

 でもとりあえず抱き上げるのは違うと思うんだ。気持ち良いから気にしないけど。それにこの安心する感じが好きなんだよね。

 僕はミラさんが大好きだぁ。


 今はもう1月下旬。もうそろそろ2月になるんだなぁ。


「寂しかったわ。アークちゃんを一日一回は見たいのよ」


「訓練してました。前より大人に見えますか?」


「見えるわ。可愛いもの」


 良かった。僕も成長してるんだな。


「その子は誰?」


「僕の仲間のビビ。テイムした吸血鬼さんだよ」


「テイムしたの!? でもそうなんだ。よろしくねビビちゃん」


「よろしく」


 ここでもビビの魅了は効果を発揮している。吸血鬼がどうとかはミラさんには気にすることが出来ない。

 都合のいい情報だけをすり込ませるだとかビビが前に言ってたかな? 普通の吸血鬼にはここまでの魅了は使えないみたい。ビビがユニーク個体だから出来るんだって。


 ビビは誰かを悲しませたりはしない。そんなことをするくらいなら、ビビは森から出て来なかった筈だもの。


 ミラさんに捕まえられて、何故かギルドの女子寮に向かう。でも何故寮なの? まだ皆に挨拶してないのにな。


「ミラさんどこ行くの?」


「着けばわかるわ」


 ビビもわけがわからないって顔をしているよ。今日は久しぶりの挨拶を皆にしてから、迷宮に入って遊ぶつもりだったんだ。

 お金はスタンピードの魔物を全て売ってすごいことになっている。バススさんに注文した武器がそろそろ完成する筈だから、今のお金から200万くらい減ると思うんだけどね。

 それでも300万ゴールドくらい残るから、無理に働かなきゃいけないわけじゃないんだけどさ。


 そろそろ迷宮にも行ってみたい。ダンジョンでだけ使える魔法を覚えたいと思ってたんだ。


 ミラさんが誰かの部屋の前に立つと、軽くノックをして声をかける。返事は無いみたいだけど、不規則な足音がこちらに近づいて来た。


「ミラ⋯⋯先輩⋯⋯ごほごほ」


「いいもの持ってきたの!」


「っ!!」


 部屋から出てきたのはシェリーさんだった。体調が悪いのか、額に汗の玉が見える。


「こんにちは。シェリーさん風邪ひいた?」


「アーク⋯⋯ちゃん⋯⋯ごほっ」


「アークちゃんに任せるわね! Sランク依頼よ!」


「いえっさー」


 わーい。Sランク依頼だぞ! 目に見えない病魔と戦うわけだ。


 という冗談を挟んでから、ミラさんは仕事へ戻って行った。


「シェリーさんベッドに戻って」


「うぅ⋯⋯運んで⋯⋯アークちゃん」


「わかりました。僕は頭、ビビは足」

「わかった」


「⋯⋯何か違う⋯⋯ごほごほ」


 シェリーさんをベッドに寝かせ、おでこに手を乗せてみる。


「ちょっと熱いね。無理してない?」


「⋯⋯苦しい⋯⋯頭痛い⋯⋯咳が⋯⋯ごほごほ」


「少し横向きになろう。食事は出来てる?」


「ちょっとだけ」


「あんまり辛かったら神父様呼ぶよ? 僕にはまだ状態回復魔法使えないから」


「ごほごほ⋯⋯いい⋯⋯自力で治さないと⋯⋯ごほ⋯⋯体強くならない」


「わかった」


「その子は?」


「ビビ。自己紹介しといて」


 ビビにシェリーさんを任せ、僕は部屋の換気をする。まだ寒い一月なので、室温を魔法で暖めた。

 果物を絞ってジュースを作り、生活魔法の“フリーズ”で冷やす。次は汗を拭いて着替えさせると、濡れた布を額に置いた。

 “ヒール”と“リジェネーション”を使って、後は様子を見れば良いだろう。


「楽になったよ」


「良かった」


「撫でて〜アークちゃん」


「よしよ〜し」


 風邪の時は弱るよね。とても寂しくなったりする。今日の予定は変更で、このままシェリーさんの看病をしようか。

 夕方過ぎればきっとミラさんも来てくれるだろうし、それまでシェリーさんの我儘を聞いてあげよう。


 僕は母様がしてくれるのと同じように看病してあげた。いくつかシェリーさんの要望に応えていると、安心したように瞼を閉じる。

 寝るのが一番だって聞くからね。これできっと良くなる筈だよ。


「アーク」


「ん?」


「人間って病気するよな。私も看病はしたことがある。病気するとどんな感じになるんだ?」


「病気で症状は違うと思うけど、辛くて何も出来ない時なんかは誰かに傍にいて欲しくなるかな。心細くなるんだよ」


「そうか」


 ビビがシェリーさんの前髪を撫でる。何故かついでに僕も撫でられた。


「寂しいのは嫌なもんだ」


「そうだね。ビビも寂しかったら甘えて良いんだよ?」


「私は病気しない」


「病気は体だけじゃないからね」


「しつこい。私はいい」


「僕はよくない」


 時々換気をしながら、僕は魔法のイメージトレーニングをする。ビビも精神統一をして時間を潰しているけどね。ビビはたまにシェリーさんを撫でてあげている。

 僕はそれに気づかないフリをしながら、ビビの優しげな横顔を見るのでした。






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