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決着。オークと姉妹

読んでくれる人が増えてきました。本当に嬉しいです(〃・д・) -д-))ペコリン





 八体いるクレイゴーレムを四体ずつに分けて、地面からの救出部隊(はなぐみ)と屋根上からの奇襲班(そらぐみ)に組み分けされた。

 僕は勿論奇襲班だ。クレイゴーレム達には個性があり、組み分けに少し時間がかかった。んむぅんまむぅと抗議してくるんだもん⋯⋯(ちな)みに人気だったのは奇襲班だけどね。


 さて、問題は無いかな?


 ハイオークのいる位置は少し遠い。でも二段跳びスキルを使えば余裕ありそうだ。使わなくても大丈夫だとは思う。


 女の子を捕まえているオークも遠いな。クレイゴーレムのジャンプ力だと、飛びかかる前に落下するだろう。んまむぅ⤵︎ ︎って⋯⋯それはまあ問題無いけどね。一応考えがあるからさ。


「すぅ⋯⋯はぁ」


 心を落ち着けて集中力を高めた。遠くで涙を流しているサラさんが、這ってでも妹を助けに行こうとしているのが見える。


 大丈夫だよ⋯⋯待っててね。今助けるから。


 オークの建物の上で、僕はクレイゴーレムの頭をむんずと掴む。


「まむぅ?」

「まぅう?」


 ニコっと笑い、直ぐにそれを山なりに投げた。標的に向かって落下していく仲間のクレイゴーレムを見て、残りの二体がガクガク震えているような気がした。うん⋯⋯きっと気の所為。残りの二体を投げてから、僕も屋根から飛び出した。

 スキルの二段跳びでハイオークの頭上まで迫り、魔剣“ドラゴンシーカー”を鞘から引き抜く。


 全力全開だ!


 魔力操作で体中に魔力を行き渡らせる。溢れ出た青い光を纏わせながら、体を限界まで引き絞った。人差し指のトリガーを引いて、魔剣本来の姿に戻す。


「はあああ!! “パワースラッシュ”!!!」


「プギャア!!」


 ハイオークの反応は早かった。流石に上位種と呼ばれるだけあるよね。普通に戦ったら強く感じたかもしれない。

 攻撃を食らう瞬間に、ハイオークは僕の狙う頭を傾けて躱す。しかし、


 ──ズザンッ!


 首の付け根から下が真っ二つになり、鮮血が辺りに飛び散った。やっぱり奇襲は強いよね。結局は即死になったようだ。


「はぁああ!」


 ぼーっとしている暇は無い。魔力操作の全力状態のまま、僕は次のオークに斬りかかった。


「プギィ!」


「プブ!」


 時を同じくして、空から降ってきたクレイゴーレムが、女の子を捕まえていたオークの顔に張り付く。

 クレイゴーレム達は容赦が無い。可愛いフリして目しか狙わないみたいだ。目潰しの連打パンチ攻撃に堪らず、オークは女の子を乱暴に手離した。顔に張り付いたゴーレム達を振りほどこうとするけど、滑る粘土体(ねんどたい)に上手くいかないみたい。


「まむう!」


「ええ!?」


 そこに救出部隊が到着する。驚く女の子の手を引いて、危ない広場から引っ張って行った。

 気を失っている女の子の方には、クレイゴーレム三体が到着して、一体が担架のように引き伸ばされて女の子がそれに乗せられた。


 ちょっと待って、あんな機能があるなんて知らなかったよ!


 残りの二体はその担架を持ち上げて、安全な場所まで退避する。


 でも良かった。皆上手くやってくれた。そういう僕は四体目のオークを斬り裂いた。


「ふっ!」


 大きいドラゴンシーカーを使いこなして、次々とオークを蹂躙していく。今は遠距離からチクチクやる場合では無い。僕がこの場を離れれば、せっかく救出した女の子を追いかけられてしまうかもしれない。

 サラさんも無防備な状態なんだ。


「やああ!」


 なのでなるべく注意を引けるように、僕は派手に動き回った。もう魔力残量も気にしない。青い閃光となり、オークを狩る一陣の風となる。


 絶対にあの姉妹を助けたいんだ!


「はあぁぁああ! ラストーー!!」


 ──ドパーーンッ!!


 会心の一撃だった⋯⋯最後のオークはちょっとやりすぎたみたいだね。遠心力を利用して重いドラゴンシーカーを全力で横薙ぎにしたら、胴体から上が宙を舞って縦回転しながら建物に突き刺さった。


 ふぅ。終わった〜。ベスちゃんの手を借りずに済んだよ。


 数秒間オーク達のために黙祷を捧げる。うん、切り替えていこう。


 周りを見回してから、パン!っと手を叩く。


「はーい。皆お疲れ様〜」


「むまう゛!!」

「んまああ゛!!」


 さっき投げたクレイゴーレムの抗議を受けながら、僕は魔力操作の全力状態を解除した。


「あはは。ごめんね。許して? つんつん」


「むうむう!」

「マッ!」


 そっぽ向いてるけど、一応許してくれたみたい。


「お⋯⋯おねーちゃーん!」


「モガああ!」


「おねえ゛じゃーん⋯⋯」


「モカ⋯⋯無事でよがったぁ」


 妹のモカちゃんがサラさんに走り寄り、勢いよく飛びついた。サラさんは座った状態で妹を抱きしめる。


 良かったなぁ。助ける事が出来て。


 それを横目に見ながら、僕はオークを回収する。


 あ、グレートソードもーらい。ハイオークの革鎧は駄目そうだね。どちらにせよ回収はしておこうかな。


「終わったな。アーク」


「ベスちゃん」


「格好良かったぞ! 娘達の救出を手伝おうと思ったけど、必要無かったみたいだね」


「ベスちゃんが後ろにいたから安心感があったんだ。何とかなって良かったよ」


「ふふ。それでも動いたのはアークなんだ。誇って良いぞ」


「えへへ。ありがとう」


 気を失ってた女の子も目を覚ました。状況がわからずぼーっとしていたけど、助かったと理解すると顔をくしゃくしゃにして泣き始める。


 足も血だらけで痛いだろうね⋯⋯体調も悪そうだ。僕も早く神聖魔法を使えるようにならないといけないね。

 抱き合う三人姉妹の前に立って、僕はポーションを取り出した。


「皆無事に助けられて良かったです。はい、ポーション飲んでね」


「あり、ありがとう⋯⋯ございます」


 サラさんは大分落ち着いてきたね。まだ妹達は泣いているけど、お姉ちゃんだからしっかりしなきゃと頑張っているのかも。

 さっきあんなに怖そうだったのに、妹を目にした時のお姉ちゃんって強いんだな。


 赤ちゃんが生まれたら、僕も強いお兄ちゃんになれるのかな? 流れる雲を見詰めながら、何となくそんな事を考えてみるのでした。





 僕と同じくらいの子がモカちゃん、七歳くらいの子がマーズちゃん、十五歳くらいのお姉ちゃんがサラさんだ。

 三人共まだ急には動けないけど、少し場所を変えてから座ってもらった。


 だって集落の中は悪臭がきついんだよ? 少し移動した所に良さげな場所もあったんだ。

 綺麗な原っぱで、真ん中に大きな切り株がある。季節は春真っ盛りだから、沢山のお花が咲いているよ。


 安心したからなのか、サラさんのお腹がキュルキュル鳴った。


「お姉ちゃんのお腹鳴った!」


「しー! モカ! しー!」


 ベスちゃんはそれを見て笑っている。サラさん顔が真っ赤だね。

 今日は僕の初討伐依頼の日だったので、お昼はお弁当を持ってきてたんだ。ベスちゃんといっぱい食べようと思ったから、結構量もあるんだよ。


「皆で食べよう。サンドイッチがあるから」


 無限収納って本当便利。切り株に大きなバスケットを取り出して、蓋を開けるとサンドイッチが並んでいる。

 無限収納ならいくら激しく動いても大丈夫! 中身が崩れたりしないんだよ。収納袋でもそうなんだろうか? 僕は持ってないからわからない。


 他にもフルーツとトマトスープもあるけど、食器がベスちゃんと二つしかなかった。足りない分は、ベスちゃんが収納袋から補ってくれる。


「いただいて良いのでしょうか?」

「モカもお腹空いたよ?」

「私も⋯⋯」


「どうぞ。僕が朝に作ったんだよ」

「アークの料理は美味しいんだ」


「ありがとうございます」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます」


「皆で食べたら美味しいもんね」


 サラさんの目がうるうるしている。湿っぽくなるのは駄目。もらい泣きしちゃうからね⋯⋯


 神様にお祈りを捧げ、全部綺麗に平らげた。オークのお肉も焼けばあるけど、流石にこの三人には見せられないよね。


「あの⋯⋯アークさんって凄く強いんですね」


「褒められると嬉しいです。毎日頑張ってますので」


 急にサラさんから褒められちゃった。いつも父様と母様を基準にして凹んでるから、強いって言われると嬉しいなぁ。


「長命種の方なのですか?」


「違いますよ。僕はアーク。人族で四歳です」


 僕は胸を張って答える。サラさんは目を見開いていた。


「本当に!? あの強さで四歳!?」


「わー。モカと一緒です!」


「アークが特別なだけだな。こんな四歳児は他にはいないだろう」


 サラさんがまた驚いてる。やっぱりモカちゃんと同じ歳なんだ。

 ふふふ。ベスちゃんは父様と母様の伝説を知らないからね。聞けばびっくりするかも! 僕なんかこれっぽっちも凄くないんだから。


「私見てないんだけど」


「凄かったのよマーズ。オークがバッサバッサ斬られちゃってね。あっという間だったんだから」


「モカも見てたよ! 青い光でばばばばって!」


 皆が僕の話をする。ちょっとむず痒い気持ちになります。嬉しいんだけど、どんな反応をしたら良いのか困っちゃうよね。


「アークは有名になるぞ。既に世界中の冒険者ギルドの職員は、アークの名前をチェックしているからな」 


「確かにあの強さなら有名になりそうです」


「既にCランク冒険者なんだ。なあアーク」


「Cランク!!」


 うぅ⋯⋯だんだん恥ずかしくなってきた。ベスちゃんの太腿に避難します。顔が見えないように。


「ふふふ。そんなんじゃ英雄も遠いぞ」


「褒められ慣れてないから⋯⋯」


「可愛いですね」


「だろう?」


 僕の事を恥ずかし死させるつもりなんだね!? 反撃に出る必要がある。


「ベスちゃんもBランクだもんね! いつでもAランクになれるってキジャさんから聞いた!」


「え!? ベスさんって、もしかして⋯⋯」


「竜戦鎚のベスちゃんだよ」


「ええええ!?」


 ふふふ。これでベスちゃんが話題の中心だ。


 と、思った時期もありました。ベスちゃんはベスちゃん。僕は僕らしい。話題を変えるのは難しいな。


 彼女達は隣町に品物を卸した帰りだったんだって。安全な街道をEランク冒険者パーティーを雇って進んでいたんだけど、昨日の夕方オークの群れに襲われちゃったらしい。

 それで冒険者は全滅して、サラさん達は攫われそうになる。

 サラさんは妹二人だけでも守ろうとして、使える水魔法で戦ったそうだ。

 妹を逃がしたところまでは良かったけど、オークはとても頑丈で倒すことが出来なかったらしい。


 でも後悔は無かった。二人が逃げる事が出来たのなら、私は姉として十分だと思ったそうだ。

 捕まる覚悟はしていたつもりだったけど、手を縛られて足を潰されてあの薄暗い部屋に閉じ込められた時、恐怖でどうしようも無かったと言っていた。


 妹のモカちゃんとマーズちゃんは、頼れる人がいない状態で街道を走って戻っていたらしい。

 マーズちゃんはお姉ちゃんの事を考えながら、モカちゃんの手を引いて頑張って走ったんだ。


 でもオークの足は子供二人に振り切れるものではない。最後まで頑張って走ったんだけど、ハイオークに道を塞がれたところで意識が途絶える。

 マーズちゃんは後ろから殴られたみたい⋯⋯その後は集落まで引き摺られ、後は僕が知っている通りだ。


 オークにとっては半分遊び感覚だったのかもしれないね。捕まえようと思えば直ぐに追いつけただろうし。生きるためってだけならば、もっとやり方があったんじゃないかと思うよ。


 雑食みたいだし、動物や野菜を食べて人は殺さないようにする。繁殖? は、わからないけど⋯⋯ん〜⋯⋯


「ねえベスちゃん」


「ん? なんだ?」


「繁殖ってどうするの?」


「クックック⋯⋯それは! こうだ〜〜!!」


「ぎゃあああ!!! ちゅーはやめて〜!!」


 ちゅーは好きな人とするんだって母様から聞いたんだよ? 両手を地面に押さえつけられて、逃げられない僕にベスちゃんの顔が迫って来る。プルプル首を振って抵抗したのに⋯⋯


 ベスちゃんは僕の事好きなのかな? どれくらい好きだとちゅーするんだろう?





 町に戻り、入場の手続きをする。僕の冒険者カードを見て、兵士さんの口が開きっぱなしになった。門だけは開きっぱなしにならないように注意して欲しい。


 冒険者ギルドに到着すると、集落で保護したサラさん達を預ける。護衛で雇った冒険者達の末路を、ギルドに説明する必要があったからだ。

 その間にサラさん達の母親が呼ばれ、再開した時に酒場で号泣したのは仕方ないよね。


「良かったなぁ。アーク」


「うん。良かったね。知らないドワーフさん」


「ま、まだ怒ってるのか!?」


「⋯⋯」


 家族の暖かい再会を見ると、こっちも暖かい気持ちになった。

 再開に水をささないように、僕とベスちゃんはその場から離れる。


 魔物の解体場に入ると、作業員のジョーさんが暇そうにしていた。冒険者のランクがE以下だった時に、依頼で何度も手伝いに来た事があったんだ。今ではすっかり顔見知りです。


「アークか。今日は暇だぞ? 依頼無かっただろ?」


「こんにちは。今日は魔物を狩ってきました」


「おお! アークもCランクだからな。早速出してくれ」


「はい!」


 解体場はそこそこ広い。訓練場に比べるとそんなでもないけどね。でもオークも量があるんだよなぁ。

 一体、二体、三体と出していく。そこまでは良かったんだけど、五体を超えたあたりから、作業員さんの口が半開きになる。

 十体目ではあんぐりと開いていた。二十体を超えるともう口が取れちゃうんじゃないかと心配するくらい開いていたよ。

 オーク三十四体とハイオーク一体を出し終えて、僕はとてもスッキリした。


 査定員のお姉さんもびっくりしていたね。


「ど、どれも急所を一撃ですか⋯⋯あはは」


 一撃じゃないのもあるよ? 矢が数本刺さってるのもある。

 査定員のお姉さんはメモを走り書きすると、その紙を僕に渡してくれた。


「それをミラっちに見せてね」


「はい。ありがとうございました」


「いーえ。沢山狩って来てくれてありがとうね」


 査定員さんと別れ、ギルドのカウンターへ向かう。ミラさんに貰った紙を渡すと、とてもびっくりしていたよ。


「が、頑張ったわね⋯⋯とりあえず、今日の依頼料は5000ゴールド。これはベスさんと半々で良いのかしら?」


「うん!」

「いや、私は見てただけだ。しかも美味しい昼食と美味しいアークを頂いたから満足だ」


「美味しいアークちゃん!?」


 何を言ってるんだろうか? ミラさんも何に食いついているのだろうか?

 今日の流れを大まかに説明する。三姉妹を無事に助けられた事に、ミラさんはとても喜んでくれた。


「はぁ⋯⋯私もアークちゃんのお弁当食べてみたいな」


「普通のサンドイッチだよ?」


「良いじゃないの。森でピクニックしながらサンドイッチ! 私なんてギルドで煙草の煙に包まれながら社食よ! 社食!」


 確かに楽しかったな。僕とベスちゃんは魔力感知や気配察知をずっとやっている必要があるんだけど、僕は分割思考のお陰で余裕あるからね。ベスちゃんも苦もなく周りを警戒していた。


 社食⋯⋯どんなのか気になる。


「じゃあ僕がもう少し強くなったら外にピクニック行く?」


「行く! 絶対に行く!」


 じゃあもっと訓練しなくちゃ。ミラさんが嬉しそうだから頑張ろう。今日のオーク狩りでまた少し魂魄レベルが上がったみたい。魔導兵はたった二体で一気に二十レベルも上がったけど、オークは全部合わせても上がったのは三レベルだった。

 どんどんレベルって上がりにくくなるらしいから、やっぱりスキルが大事になってくるんだね。


「私がアークを鍛えとくよ。今でも町の周辺なら問題無い程度だが、ミラを守りながらだともう少し強くならなきゃいけないしな」


 それはそうだ。気合いを入れて訓練しないとね。

 ベスちゃんに頭を撫でられる。僕の頭がきっと撫でやすい位置にあるせいかも。


「早く大きくなりたいなぁ」


「「それは駄目!」」


 な、なんでぇ!? ベスちゃんとミラさんがハモっちゃったよ。


「とりあえず、報酬の5000ゴールドね」


「そんなに使いきれるかなぁ?」


「まだあるわよ? 通常のオークが一体1000ゴールドの買い取りになるの。ハイオークが6000ゴールド。全部合わせて45000ゴールドよ」


 ちょっと何言ってるかわからないですけど。ちょっと何言ってるかわからないですけど!


「そこそこだな」


「ちょっと何言ってるかわからないですけど!」


 大きな数字に現実感が無い⋯⋯今日は疲れました。ちょっとよくわからないので帰りたいと思います。

 Cランク冒険者の稼ぎって⋯⋯魔王みたいだ⋯⋯


 僕はぽわぽわした気分のまま、抜け殻のように家に帰るのでした。







ベスちゃんの顔が〜( °∀°)(♡•ε•♡ )




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― 新着の感想 ―
だいぶ昔読んだ事ある作品でした、ブクマしてなかったという事は途中で切ってる可能性あるけど今の所は楽しみに読んでいきます 1つ気になる点がオークが繁殖に人を使うなら、オーク肉は人肉と変わらないのでベー…
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