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デタラメな冒険譚が僕にくれたもの〜憧れを追いかける少年〜  作者: まあ(ºωº э)З
第七章 いきなり始まるスローライフ?
174/214

す⋯⋯す⋯⋯





 四十一階層は、真っ黒な奈落のあるダンジョンだった。地面の代わりに薄い透明なボードが沢山浮かんでいて、落ちればどうなるかわからない。


 空には星が瞬いていて、こんな状況じゃなければゆっくりと見ていたい程綺麗だった。



 普通なら慎重に進まなきゃいけないところなんだろうけど、僕達は今空を飛んで進んでいる。

 僕達に足場なんて関係ないからね。


 四十階層のボスは、天使のような大きな魔物だったんだ。顔はカエルみたいだったんだけど、翼が背中に生えて空を飛んだ。

 一瞬でビビに倒されたんだけどね⋯⋯


 ボス部屋に飛び込んだビビは、本来の姿になり赤いドレスに身を包んでいた。


 子供姿のビビが赤い霧に包まれると、二秒くらいで大人のビビになる。


 ライトメイルは外して、靴は赤いハイヒール。ドレスは貴族のパーティーで見るような、デザインの凝った美しい物なんだ。

 瞳は血のような赤に変わり、魔力も全て解放されている。


 本気のビビを見るとゾクゾクするね⋯⋯やっぱり人間と魔物じゃ根本的にスペックが違うんだよ。


 普通なら戦えそうに見えない服装だけど、これはビビが血晶魔法で創り出した物になる。

 長いスカートの部分も、薄く赤黒いロンググローブも、頭に咲く薔薇の花も、全て武器や防具に変える事が出来るんだ。


 ビビは最近家に帰ると、早着替え変身の練習をしていたんだよ。僕もその横で早着替えの練習をしたんだ。今の僕は三秒で赤いメイド服が着れます。


 ──ズガアアン!!


 背後で薄いボードが叩き割られる音が聞こえてきた。



「駄目だアーク。直線だ⋯⋯来るぞ!」


「む〜⋯⋯“フレイムランス”!! 連射連射連射!」



 鬼の形相で追ってくるヨコチンさんを、急に軌道を変えたり魔法攻撃したりしながらやり過ごしていた。

 魔法は弾かれてしまうけど、多少目眩しにはなる。


「ちょこざいなぁああ!! 殺す殺す殺すすすすすああぁぁぁあああ!!!!」



 いくら気をつけていても、ヨコチンさんの“縮地”は凄く洗練されていた。

 自我の感じられない虚ろな目をしているのに、体に染み付いた体術がとてつもないキレを生んでいる。


「避けきれない!」


「ぐがあああ! “黒虎闘気咆哮砲(くろとらとうきほうこうほう)”!!」


「「!」」


 ヨコチンさんが僕達の前に先回りをして、体術の上級スキルを撃ち放った。

 黒い闘気が虎の頭を摸し、開いた口から絶大な威力の砲撃が飛んでくる。



「“オーロラカーテン”!!」


「馬鹿! 避けろアーク!」


 ビビが僕の腕を掴んで急上昇した。

 僕の発動したオーロラカーテンは、黒虎闘気咆哮砲に容易く貫かれる。


「滅茶苦茶な威力だ⋯⋯」


「ありがとうビビ」


「アーク⋯⋯この階層の魔物が」


 ビビの見つめる先には竜が⋯⋯いや、違う⋯⋯あれはワイバーンだね。初めて見たよ。

 そのワイバーンは、さっきのヨコチンさんが放ったスキルでバラバラに消し飛んだ。


 僕のオーロラカーテンを貫いて尚あの威力⋯⋯油断してるとやられる⋯⋯



「休んでる暇は無いぞ。四十五階層までは同じようなフィールドだろうからな」


「うん。それに⋯⋯」


「ああ。更にデカくなってきたな」



 ヨコチンさんの体の膨張が止まらない。それなのに、スピードが衰えないんだよ⋯⋯力も上がり、どんどん人間離れしていってる。



「ヨコチンさん! 貴方には帰りを待ってる人がいます! 絶対に助けますからね!!」


「五月蝿い! 五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い!! 殺させろ!! 今直ぐお前達を殺したいぃいい!!」



「嫌です!」


 僕だって死にたくないんですよ。誰一人死んで欲しくはない!



「ああぁぁぁああああ!!!!」



 ヨコチンさんの背中が盛り上がり始め、皮膚を貫いて二本の腕が生えてきた。


 あれが元人間だなんて、誰も信じてはくれないだろう⋯⋯



「相手にしている余裕は無いぞ? はああ! “ディスティニーエンド”!」


 ビビが遠くの進行方向に見えたワイバーンに、フレイガースの時に見せた必殺の魔法を放つ。


 あれは範囲殲滅出来る強力な魔法で、赤い霧に包まれた魔物は為す術もなく死に絶える。

 体中から赤い花を咲かせ、根が内部を侵食するのだ。


 こんな時、ドラシーがいてくれたらなぁ。仕方ないけどさ⋯⋯



 ヨコチンさんと距離を取るために、僕とビビはワイバーンの群れに飛び込んだ。


「朧の夜桜! 行くよ!」


 ワイバーンの間を縫うように飛び、すれ違いざまに首を落とす。

 きっとムーディスさん契約する前だったら、ここまでの事は出来なかったかもしれない⋯⋯


「ぐくぅ⋯⋯」


「アーク!?」


「平気⋯⋯」



 ワイバーンは僕に沢山の力をくれた。多分今僕は魂魄レベルが急上昇しているよ⋯⋯


 死体は体だけ収納していった。頭が死に絶えるまで待っていたら、ヨコチンさんに直ぐ追いつかれちゃうよ。



「扉だ!」


「飛び込むよ!」



 ワイバーンの群れの先で、四十二階層への扉を見つける。



「通さねええ!! 死ねえええ!」


「くっ!」

「大丈夫だよ! ビビ、そのまま!」


 僕はビビの腕を掴み、ヨコチンさんの手前でファイアボールを使う。

 爆炎で目隠しをして、股下を潜って扉へ触る。



 視界が暗転し、四十二階層へ辿り着いた。


「全く⋯⋯無茶をする」


 呆れ顔のビビ⋯⋯一応上手くいったからお咎めなし。


「早く行くよ。四十三階層へ」


「そうだな⋯⋯後にしよう」


 え? お咎めなしだよね? 忘れてくれると嬉しいな。


 僕はビビに抱き上げられて、飛びながら吸血をされる。


「美味しくなったな。アーク」


「んむ⋯⋯」


 ビビは優しく微笑むと、いきなり唇を重ねてくる。


 家を建てた時以来だったんだ。そのまま見つめられて、何だかちょっとドキドキした。

 ちゅーされたからかな? なんだか顔が熱い⋯⋯

 この状態のビビは、いつもよりも遠慮が無くなると言うかなんと言うか⋯⋯



「ビビ、好き」


「な、なんだいきなり⋯⋯」


「好き」


 ちょっと言いたくなっただけなんだ。不思議な気分だなぁ⋯⋯


 僕の言葉を聞いて、ビビの顔が真っ赤になる。やっぱり何時ものビビでした。


 ドキドキするって心地良いな。


 ビビは自分を落ち着けるように一度深呼吸をする。



「あの三人にとって、あの男は全てだと言っていた。私にとってのアークと同じなんだ。だから、私もあの男を救ってやりたいと思う」


「あはは。ビビなら理由が無くても助けると思う」


「それは⋯⋯私を買い被り過ぎじゃないか?」


「ビビは、ビビが思っている以上に優しいよ」



「どうだろうな⋯⋯」


 ビビが困った顔をする。でもきっとそうだよ⋯⋯僕はそう思う。



 扉の方から雄叫びが聞こえてきた。きっとヨコチンさんがこの階層へ来たんだね。



「⋯⋯私とアークの時間を邪魔するな⋯⋯」


「二人でいる時間は沢山あるよ?」


「全然足りない。私はアークがす⋯⋯す⋯⋯」


「す?」


「⋯⋯」


 やっぱり何時ものビビでした。








 す⋯⋯すぅ⋯⋯寿司( ✧Д✧) カッ


 時すでにお寿司ぃ(ºωº э)З

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