ルルエラはシ○タ○ン
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side ルルエラ
ああ! なんて事なの!? どうしよう⋯⋯
私はどうやらトラップに引っかかってしまったみたい。しかも⋯⋯絶体絶命のやつだこれ⋯⋯
やだ⋯⋯やだやだやだ〜⋯⋯死にたくない!
周りを見れば暗い大空洞のような場所で、真ん中には魔物がひしめき合っていた。
私は今その端っこにいる。まだ魔物には見つかってないみたいだけど、それも時間の問題だわ⋯⋯
隠れる場所は無いし、脱出方法なんて直ぐにはわからない⋯⋯もうどうすれば良いの?
私はとりあえず焦げ茶色のマントを収納袋から取り出して、それを頭からすっぽりと被る。Aランクのパーティーにもなれば、個人で大容量の収納袋を持っていて当たり前なのだ。
これで少しは時間が稼げる筈ね。魔法を使ったら魔力で居場所がバレるだろうから、今はこれが精一杯かな⋯⋯
もうリーダー達に期待をするしかない。こんな場所で動き回る程、私は図太い神経をしてないのよ。
魔物に生きたまま食べられたらと思うとゾッとする⋯⋯早く、早く誰か助けて!
リーダー達がいなくなった私を探す筈よ。だから諦めるのはまだ早い──
*
──二時間後──
こんな事になるのなら、アーク君に話しかけておけば良かった。
町で偶然見つけたアーク君。腕輪の金星に驚いたのよ? それにかなり町で噂になっていたわね⋯⋯
あのクリクリとしたおめめ⋯⋯短いけどふわふわしてそうな髪の毛⋯⋯人懐っこそうなあの笑顔⋯⋯もし上目遣いで、「お姉ちゃん、あれが食べたいな?」ってお願いされたら⋯⋯お姉ちゃんがアーク君を食べちゃうぞ♡
あはははは。アーク君見ながら食パン三斤イケちゃう〜。
⋯⋯私⋯⋯ちょっと頭おかしくなってる⋯⋯でもむさ苦しい男冒険者に囲まれていれば、こうなってしまうのは仕方ない筈⋯⋯うん、私悪くない。
っと、現実逃避は後でしよう。もし生きて帰れたら、アーク君を捕まえてお持ち帰りだ。(物理的に)
家に連れて帰ったら何をする? まずは子供が好きなお菓子かしら? はいあ〜んってしたら食べるかな? やば⋯⋯尊い⋯⋯鼻血出そ──
──ズシーン⋯⋯ズシーン⋯⋯
何か重そうな足音が聞こえるわね⋯⋯
マントの隙間から外を見ると、ブヨブヨとした“肉”が震えていた。
く⋯⋯ヒュージスライムの亜種⋯⋯見つかった!
私はマントを勢いよく脱ぎ捨て、一目散に逃げようとした。しかし、ヒュージスライムは全方位に腕を伸ばし、瞬く間に私の逃げ道を塞いで行く。
魔法無しじゃ逃げきれない⋯⋯でも出し惜しみしてたら死ぬ⋯⋯
私は杖を取り出した。
こう見えても私は優秀な魔法使いなんだから!
杖に魔力を集めながら、飛び出してくる触手を躱す。輝き始めた杖を触手に向けて、溜まった魔力を解放した。
「“サンダーボルト”!!」
私の放ったサンダーボルトが、前方に伸ばされていた触手を全て焼き尽くした。
その瞬間に私は走り出す。追撃の触手も躱し、壁際を限界速度で走った。
左足から急に力が抜ける。
何かと思って見てみると、赤い棘のような物が脹脛に刺さっていた。
当然私は豪快に転んだ。痛がっている暇も無く、歯を食いしばって棘を引き抜いた。
「く⋯⋯」
咄嗟に完全回復ポーションと、幅広く効く毒消しのポーションを飲み干した。
「危な⋯⋯“テンペストウィング”!」
もう魔物達には見つかっている。受け止めたくない現実だけど、もう腹を括って戦うしかないのよ。
一瞬前に私がいた場所に赤い棘が刺さった。飛ばしているのは植物系の魔物ね⋯⋯
これでも私はAランクパーティーの冒険者よ。個人での実力はB以下だけど、ただでやられるつもりは無い!
私はテンペストウィングで空を飛ぶ。ヒュージスライムにはびっくりしたし、赤い棘を飛ばしてきた魔物には気がつけなかった。
まともに相手にしたら直ぐ死ぬわ⋯⋯足掻いてはみるけれど、五分もたないかもしれない。
私は回避に専念したけれど、格上の魔物の攻撃が避けられなかった。足を掴まれて地面に引きずり降ろされてからは、オーロラカーテンで時間を稼ぐ⋯⋯
もう⋯⋯限界かな⋯⋯そう思ってた時、目の前にいた魔物が真っ二つになる。
意味がわからなかった。何が起こったの?
私の前にいた魔物は、サイクロプス系の最上位種だった。
鋼鉄以上の硬い体を持ち、そのパワーは城壁をも粉砕する⋯⋯Bランクの魔物の中でも純粋に強い激ヤバモンスターだ。
それが綺麗に真っ二つになってる⋯⋯私は夢でも見ているの?
グレーターデーモンも首が落ちた⋯⋯紛れもないBランクの魔物が、次から次へと死んでいく。
「私はアーク。身に刀の大精霊を宿す者なり⋯⋯斬られたくなくば、目の届かぬ所まで逃げるがいい」
そんな声が聞こえたと思えば、鍔鳴りの音が響いた。それと同時に、百体以上いた全ての魔物の首が落ちる。
正に異常な光景だった⋯⋯刃を向けられてない私ですら、首筋に刀を這わせられているような気さえする。
背筋が凍りつく⋯⋯怖い⋯⋯怖い怖い⋯⋯
それは限界まで研ぎ澄まされた“何か”だった。人間が触れてはいけない存在⋯⋯絶対的な強者がそこにはいた。
「だ⋯⋯の⋯⋯」
誰なの? と、聞きたかった。でも既に私はボロボロの体。こんな体でまともに喋れる訳が無い。
小さな男の子に見える。頭に兜を被り、東国の和装と戦士の格好を混ぜたような姿をしていた。
男の子が私の目の前に立つと、兜と和装が光の光子となって消える。
黒かった髪が銀髪へと変わり、更に茶髪へと変化した。
そこにいたのは紛れもないアーク君だった⋯⋯私が妄想して遊び倒したアーク君⋯⋯ま、まさか、本当に夢?
「大丈夫? 間に合って良かったね」
アーク君が神聖魔法を唱えた。すると、私の穴だらけだった体が急速に治り始める。
「す⋯⋯ごい⋯⋯」
「“ウォーターウォッシュ”」
体まで綺麗にされて、本当に気持ちが良いわ。
夢って最高ね! 魔物の死体だらけだけど、ここは天国ってやつなのかしら? 間違いないわね。アーク君がいるし。
横たわる私の横で正座をして、ヒールをかけ続けてくれるアーク君。
もう完全に治ったみたい。私はアーク君を引き寄せて抱き締める。
「お、お姉さん?」
「お姉ちゃんって呼んで」
「え⋯⋯えーと、お姉ちゃん?」
私に抱き締められながら、上目遣いで首を傾げるアーク君⋯⋯なんて最高なの!? そして少し困った顔をしながら、私の顔を見つめてくる。
ああ、どうしよう⋯⋯こんな日が来るなんて。幸せ過ぎるぅ⋯⋯予習はいっぱいしてあるんだから!
「お菓子食べる?」
「食べる!」
幸せな時間を過ごしましょうね。
アーク君にクッキーをあげると、口をパンパンに膨らませて詰め込んでいる。
やっぱり可愛い。見ているだけでも幸せだわ。
周りにあった魔物の大量の死体が、次々と消えて無くなっていく。これも夢ね。はいはいわかってますよ。
次は立派な家まで出てきたわね⋯⋯夢って何でもありなの? でも使えるなら使っちゃいます。
「アーク君。この家に入るわよ!」
「え、うん。どうぞ?」
アーク君と手を繋いで中に入ると、温かみがあって少し生活感があった。
「魔物がいなくなっても出れませんでしたね」
「デレない? デレデレよ?」
「?」
アーク君が首を傾げている。一つ一つの仕草にツボるぅ⋯⋯まずは昼食にでもしようかな。
調理器具はあるのに、食材が見当たらないわね⋯⋯ちょっとサービス悪いんじゃないの?
「何か食べますか? いつ出れるかわかりませんし、多分外ではトラップの破壊を頑張ってるとは思いますが⋯⋯」
「え?」
外? アーク君は何の話をしているのかな?
その後、私はアーク君を心ゆくまで楽しみました。
*
side アーク
『ありがとう。ムーディスさん』
『困ったらいつでもな』
時の流れの違う世界で力を借りると、ムーディスさんもちょっと苦しそうにしていた。
イフリンですら苦しそうにしてたんだから、ムーディスさんはもっと辛かったと思うんだ。
ムーディスさんの精神が流れ込んできた時は凄い強烈だったよ⋯⋯斬る、斬る、斬る、斬る斬る斬る斬る斬斬斬斬⋯⋯
もう⋯⋯何て言うか、斬る事に全てを捧げている精霊なんだと再確認できたんだ。
ムーディスじいちゃんは怖い⋯⋯ムーディスじいちゃんを倒せる人間はいない。間違いなく。絶対と言いきれる。
目に見える物は全部斬られるよ⋯⋯夜空の星すらも多分ムーディスじいちゃんなら斬れる。
でも動きがとても勉強になったなぁ⋯⋯流石刀の大精霊様だよね。
変身を解くと、兜とヒラヒラした服が無くなった。漆黒の髪がSスタンダードの銀髪へ戻り、それすらも解除する。
救援も間に合ってお姉さんも治療出来た。でもなんかこのお姉さん、ベスちゃんみたいにくっついてくるんだ。ちゅーはやめてね? やめ⋯⋯──
早く助けに来てくれないかな⋯⋯
「アーク君。早くぅ」
「⋯⋯」
本当に、早く助けに来てね。
それから数時間後、空間が軋みを上げ始めた。
誰かが開けてくれたんだ⋯⋯ありがとうございますありがとうございます! もう限界でしたぁ⋯⋯
家をしまうと、僕達は外に放り出される。
とっても長い時間を過ごした気がするよ⋯⋯言葉を交わすよりも先に、僕はビビに抱き着いた。
「あ、アーク? ど、どうした?」
ビビがとっても懐かしい気分なんだ。ギューってしてたらビビの耳が真っ赤になっちゃった。
助けた女の人は呆然としていたよ? さっきまですっっっごく元気だったのにどうしたんだろう?
よし、まずは三十五階層までクリアして、この迷宮のトップに立ちたいね! 完全制覇が見えてきた気がするよ。
夢なら何でもしていいと思ってるんですか?
YES!☆d(´∀`*)
自由に夢が見れたら良いなぁ(ºωº э)З




