北の森のある夜
おまけのショートストーリーです。
「なあ、その焼いたやつ、端っこでいいからさ」
「ダメです。もうちょっとだから、ちゃんと待っててください」
「小さいのもダメか」
「ジェネとビバルを見習ってください。まったく町の代表なのに」
お肉を焼くショウの後ろでガイウスがうろうろしている。ジェネとビバルは後ろでゆっくりと食前酒を楽しんでいるというのに。
「まあ、俺たちは確実にありつけるってわかってるからなあ」
「まあな。最初のころは、やっぱり早く食べたくてそわそわしたよなあ」
狩りが終わってお風呂も先に済ませた。苦手な温風の魔法もショウかハルがかけてくれるから、髪もサラサラだ。
「もっとも奴らがいたらそうもいかないがな」
「今日はちょっと遅いな」
ショウもチラチラと玄関のほうを気にしている。と、ショウの耳がピンと立ったように見えた。
「いや、錯覚だ。どうもリスかなんかに見えちまって」
「違いない」
ショウはちょうど階段を下りてきたハルに声をかけた。
「ハル、後は肉が焼けるまで見てるだけなの。いい?」
「いいよ」
ハルと台所を代わると、玄関の方へ急ぐ。ショウは耳がいい。何か聞こえたのだろう。
「なあ、ハル、そこの端っこ、ちょっとくれよ」
「ガイウス、ショウに怒られますよ」
「今、いないだろ? なあ」
「しょうがないなあ」
ハルはショウより甘い。一週間も一緒に暮らしていないのに、ガイウスは既に知っていた。そこに付け込んでおいしそうな肉を味見するのだ。
がやがやと音がしたところを見ると、残りの4人も帰ってきたようだ。
「ハル、早く」
「え、ええ? 一つだけですよ、はい、あーん」
ショウが箸と呼ぶ二本の棒で肉をはさむと、ハルはそれをガイウスの口に近付けた。
「あむ。うまい!」
「よかった」
「は、ハル……」
二人が玄関のほうを振り返ると、そこにはガイウスを指さしてわなわなと震えるレオンがいた。
「おま、俺、ガイウス、あーんて」
「レオン、落ち着け」
ファルコがあきれたようにレオンをいさめる。
「俺だってしてもらったことないのに!」
「そういえば、俺もショウにしてもらってない! ショウ!」
そんな二人を、ショウが腕を組んで冷たい目で見ている。
「ショウ」
「ハル、駄目だよ甘やかしちゃ。狩人はすぐに調子に乗るから」
ひどいことを言っているが、すでに少しほろ酔いのジェネとビバルに、
「違いない」
「ははは」
と大うけだ。ハルは困ったように笑うと、
「でも、お肉たくさんあるし、いいんじゃないかな」
と言った。ショウは組んでいた腕をほどき、肩をすくめた。
「ハル!」
「ショウ!」
「ほらね? こうなるから……」
結局ファルコとレオンも、ショウとハルからあーんを勝ち取ったのだった。
「まあ、たまにはいいか。ちょっと面白いし」
「ね」
結局、ファルコには甘いショウなのである。
ここで一度更新は止まりますが、今年中に再開する予定です。この続きのお話になります。
そしていよいよ、一巻の発売です! ファルコとショウのおまけのお話が入っていますよ!11月12日、「この手の中を、守りたい」と共によろしければどうぞ!
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