毒にも薬にもならないわけがない
追記(2017.11.20:一度この話で完結にしていましたが、ショウとハルが合流するところをこの後追加している途中です。そのころを読みたい人がいたら、この後を続けてどうぞ!
さて、それからショウとファルコはどうなっただろうか。
三日目には北の森に出発した。4人の狩人の世話をし、スライムと薬草のノルマをこなし、貯金もちゃんとため、荷運びの人はおやつも運んできてくれ、ときおり導師も運んできた。
春になり、次の星迎えの祭りではカインが年少組を卒業した。
次の年の星迎えでは、アウラが卒業した。そして13歳になったショウはファルコと部屋を分けた。ファルコは大騒ぎだったが、ジーナに怒られしぶしぶ従った。
その年、秋に来たドレッドに、ハルからの伝言をもらったショウは、ファルコとレオン、そしてドレッドとライラと共に、ハルを湖沼の領地から救いだした。保護の代わりに実験を強制され、どうしようもないほど疲れ果てていたのだった。
弱った黒髪の少女に、レオンは一目で恋に落ちた。70歳差の恋だ。ショウは大歓迎だった。70歳差を身近に見ていたら、40歳差なんて大したことないってきっとファルコも思ってくれる。
ハルも一緒に14になり、15歳になり、年少組を卒業したら、見習い期間はファルコとレオンと共にパーティを組んで過ごした。魔力量の多い最強の魔術師と、心も癒すと評判の治癒師、そして最強の狩人二人。
ファルコの黒狼からレオンは金狼と呼ばれ、やがて小さな魔術師と治癒師が加わると、金狼と黒狼たちとか、子狼連れの狩人とか、様々に呼ばれたけれど、結局ガイウスの決めたこれが浸透した。
「金狼率いる黒狼」
その長い二つ名が、彼らだ。そして結局、金狼御一行とか、黒いヤツらとか呼ばれている。
「ハル、行くよ!」
「ショウ、待ってよ!」
この優しい魔術師はちょっとトロい。そこがショウは好きで、レオンに至ってはおそらくかわいくて溶けてしまうくらいだろう。しかしトロい上に鈍感なハルはいまだにその気持ちに気づかない。
では、ショウとファルコは? ショウの決意は決意のまま、相変わらずショウがかわいくてしょうがないファルコと、面倒見のいいショウのままだ。
でももう抱き上げたりしない。
いつからかまぶしげにショウを見るようになったファルコ。ファルコと視線が近くなったショウ。
二人ともわかっている。今度抱き上げる時は、二人の仲が変わるときだということを。
だからまだ少し、この優しい時間を大切にしよう。
ショウとハルが成人した日、「金狼率いる黒狼」の4人は、平原に旅立とうとしていた。平原はこの数年間、高品質の作物を生み出し、富を蓄え、他の三領に高圧的だ。火種がくすぶっていた。その原因が転生した彼で、彼が幸せならショウとハルの関知するところではない。あとは国と国の問題だ。しかしハルのようにつらい思いをしているなら。
その時は深森に連れてくる。
ねえ女神さま。毒にも薬にもならないからと連れてこられた私たちだけど、後悔していませんか。結局私は薬になったし、ハルの知識は毒にもなった。彼は恐らく薬だったはずなのに、周りの人がその功績を毒にしている。
それでもこの世界が、そこに住む人たちが大好きだから、正義にも欲望にも傾かない。傾かせないために、ハルと一緒に旅立ちます。
優しい人たちと共に。
ここまでお付き合いありがとうございました。ここから先を書こうとすると、ガチでハイファンタジーになりそうなのでここまででおしまいです。恋愛と言えるか微妙かもしれませんが、作者的には甘くて甘くて……2人の今後はきっと幸せです。
よろしければ評価、感想などいただけるととても嬉しいです!
と書いていましたが、連載に戻しました! ガチなハイファンタジーにはなりませんが、またショウののんびりしたお話をどうぞ。
追記:この場を借りまして宣伝です。昨年なろうさんで書いていた『この手の中を、守りたい1~異世界で宿屋始めました』が2017年7月12日書籍化、発売です。二巻が10月12日発売中。『聖女二人ぶらり異世界旅』が冬発売予定。




