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異世界でのんびり癒し手はじめます~毒にも薬にもならないから転生したお話  作者: カヤ
ショウとハル、リク編

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急展開

「どこにって、最初に会った時話しただろ。俺たちは、薬草採取とスライム狩りをずっと町の外で教えてたんだぞ」


 思いもかけないことを言われて答えられないショウの代わりに、リクが教室の向こう側から返事をした。


「リクには聞いてないんだけど。でも、そういえばそんなこと言ってたわね。どう、何人かは来た?」


 ニコニコと笑う悪意のないデリラに、ショウは力が抜けそうだった。ハルは何となくわかっていたのか、苦笑しているだけである。でも、ショウの代わりに答えてくれた。


「女の子は三人だけ。それも、見習いの仕事があるからって、大人に連れていかれちゃったから、男の子が数人やってくれてるだけなの」

「まあ。せっかく深森から来たのにね」


 同情的なのはありがたい。それでも完全に他人事でもあった。


「でも、正直なところ、私は草むらに踏み込むのがそもそも嫌だし、お金は大人になってから稼ぐので十分だと思ってるから、自分からやりたいとは思わないのよ。ショウ、それにハル、だった?」

「そう。デリラよね」

「そうよ」


 お互い名前を憶えていたことにほっとした。


「ショウとハルが頼むなら、つまり友達に頼まれたなら、何回かやってもいいけど、ずっとやるって言うのはちょっと厳しいわ」

「それが町のためであってもか?」


 リクがガタンと立ち上がってデリラを問いただした。結構怒っているようだ。


「待って待って。そんなに熱くならないでよ」


 そこに若い治癒師がやってきた。先生のようだ。


「あれ、君たち。深森の小さい治癒師さんだね。今日はどうしたの?」

「はい。平原の学校に行ってみたいなと思って」


 ショウの言葉に教室はざわついた。


「かわいそうに……」


 という声も聞こえた。ショウははっとした。今のセリフ、まるで普段学校に行ってないみたいに聞こえた?


「ハハハ。みんな誤解したかもしれないね。僕がちゃんと紹介しよう」


 焦るショウを先生が手招いた。


「こっちがショウ、だね?」

「はい」


 一応確認された。


「ショウは、まだ年少だが、優秀な治癒師で、導師の右手としてあちこちついて回っている。学校の勉強は」

「終わっています。深森では小さい子を教えていました」

「だそうだ。優秀な剣士見習いで、狩人でもあるそうだ」


 剣士と言う紹介のほうに大きなどよめきが上がった。次にハルが前に招かれた。


「君がハル」

「はい」

「彼女は、湖沼の学院を飛び級で卒業してる、本物の魔術師なんだ」


 先生がものすごく自慢そうにハルのことをそう紹介した。どうやら、平原では見ない魔術師というものに、若い治癒師はとても興味があるらしい。


「後で魔法を見せてくれないか」

「いいですよ」

「よし!」


 喜ぶ先生に、教室に笑いがあふれた。今まで町の外で、来ない子どもたちを待ち、切ない思いをしていたのは何だったんだろうと思うような一体感だった。


 一通り笑いが収まると、デリラが手を上げ、立ち上がった。


「先生、ショウとハルが、薬草採取を子どもたちにしてほしいって言ってるんですけど、私たち、よくわからなくて。だって、町の様子は今までと何にも変わらないのに、どうして私たちが手伝わなくてはならないの?」


 これを一番初めに聞いていたらショウは怒ったと思う。というか、すでにガーシュに言われて一度怒っている。でも、こうやってみんなの間にいると、意地悪や何かではなく、本当に子どもたちはわかっていないんだということが伝わってきた。リクも唖然とした顔をしている。


「これは待ってても来ないわけだよ……」

「ちょっとびっくりしたね」


 ショウとハルはこそこそと言葉を交わした。その時、別の子が席を立った。


「ちょっと待てよ。わかんないってなんだよ。俺の家の周りとか、スライムが増えて、怪我をしてる人が何人もいるんだぞ。ポーションが足りないから、それを作る手伝いにわざわざ来てくれてるのに、その言い方はないだろ!」


 それはいつも薬草採取に来てくれる男の子だ。家が貧しいのかと思っていたが、実は町はずれの農場の子だったらしい。


 その喧嘩腰の調子にも、デリラは負けずに答えた。


「だって、そんなこと知らなかったんだもの」


 いや、説明したよねとショウは心の中で突っ込んだ。しかし、デリラはたいして聞いていなかったらしい。


「薬師の人がやるだけじゃ、だめなの?」


 そうだよねえという声が教室に広がる。


「薬師の人がやってくれてるだけじゃ、全然足りないんだって。薬師ギルドに行っても、まだポーションは在庫切れが多いって父さんが言ってたんだ。それに、大人は忙しいだろ! だから俺、一生懸命薬草を採る手伝いをしているのに、お前たちときたら!」


 そんなに足りないの、足りないのかという声が今度は上がった。


 ショウたちが何もしていないのに、話がどんどん進んでいく。


「でも、そうはいっても、いつまでにどのくらいやったらいいの? ずっとやらなくちゃダメなの?」

「それに、お手伝いしてもいいけど、スライムは怖いし、草むらに入るのは嫌いなの。なにか別のお手伝いはないの?」


 これはデリラが言っていたことと同じだ。何か別のことで手伝うという発想はなかったので、ショウはその意見に驚いた。


「さ、問題を整理しましょうよ」


 デリラが立ち上がった。


筆者の作品紹介

「転生幼女はあきらめない」幼児が頑張ります!

「聖女二人の異世界ぶらり旅」仲良し二人で転生!

「この手の中を、守りたい」転生して孤児に。でも、仲間たちと楽しくくらすよ!

「まず一歩から始める異世界生活~魔物が強くて外に出られません」誤解とすれ違いをしながら強くなる少女のお話です。


どれも元気が出ますよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 突如始まる議論についていけないショウたち。 やはり深森と平原では文化性が違うなあと思いました。 問題対処の仕方が行動ベースの深森の人々に対して平原の人たちは議論ベースなのでしょう。 議論ベー…
[一言] 最近、人間関係でイライラしています。 でも、これを読むと、そんなささくれだった心が癒やされます! ゆっくり過ごす時間も少なかったので、久しぶりに10話まとめ読みだった事もあり、初めから読み直…
[気になる点] 平原ヘイトがたまる〜(>人<;) クソ発言に振り回される時間長すぎない?コイツもか…みたいなのもういらないんだけど。男班、女班みたいなのも何かモヤっとする。 [一言] これまでが面白か…
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