表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: ReseraN
第2章 ジュエルを求めて
59/123

第58話「集まったジュエル」

 ビラーレル村の教会。

 ヴィへイトル一味も闇魔導士もいなくなり、ティミレッジも無事に元の姿に戻せた。



「リリーヴ・プリフィケーション・シャワー!」



 さらに、ティミレッジの新たな浄化技で教会の崩れた天井や壁が修復された。そして、ダークティミーによって壊されたアビクリスの像も。

 今回は損壊範囲は広かったが、浄化技が強化されていたので事足りたのであった。

 彼が手に入れた青いジュエルは、いつの間にか彼の杖の先端部分にはまっていた。


 これで、今回の件はすべて解決したのである。



 しかし、ティミレッジの中ではまだ終わっていなかった。

 彼はダークティミーでいる間、アビクリスを「家族を捨てた最低な女」と吐き捨ててしまった。

 闇の力から解放されても、その記憶だけはしっかりと残っていた。


「ママ……。ひどいことを言って、ごめんなさい!」


 ティミレッジの罪悪感は大きく、アビクリスへ頭を下げながら謝った。

 だが、彼女は穏やかな顔で首を横へ振った。


「いいんだよ。ママもあんたに寂しい思いをさせてしまったからね。本音が聞けて嬉しかった」

「本音って……さ、寂しいって思ったことはあるけど、“最低だ”なんて思ったことは無いよ!」

「わかってる。あれは闇の力が言わせてたんだろう?」


 ティミレッジとアビクリスの間に和やかな空気が流れ、見ていたユアたちも安堵していた。

 そこに父・サティミダも入りたそうにしたがアビクリスに怒鳴られることを恐れ、どうしても一歩を踏み出せないでいた。

 気付いたディンフルが声を掛けた。


「そちらは何者だ? 先ほどからビクビクしているが?」


 自分より強いアビクリスに重傷を負わせたことがある魔王から急に話しかけられ、サティミダはこれまで以上に体を震わせた。

 察したユアがなだめる。


「サティミダさん、大丈夫ですよ。ディン様は、今ではフィーヴェの英雄ですから」

「そ、そういえば、そうだったね……」


 サティミダに目をやったアビクリスが口を開いた。


「せっかくヘタレとも再会して、ティミレッジにも色々あったから話しておこうか。あたしがヘタレと離れた本当の理由を」


 ティミレッジとサティミダは目を見開いてアビクリスを見た。

 離婚を切り出したのは彼女の方だが、これまでサティミダは自分が弱すぎるせいだと思って来た。

 だがたった今、アビクリスの口から「本当の理由」と告げられた。他にも事情があるようだ。


 彼女は話し始めた。


「あたしが黒魔導士と武闘家を兼ねているのは知ってるよね?」


 ティミレッジとサティミダは同時に頷いた。

 アビクリスは自身を指さし、勝ち気な性格を表した。


「そして、この性格だろ? だから、ここみたいに英雄と讃えてくれるとこもあれば、敵も作りやすいんだ。特に悪党とかの。ティミレッジが生まれて数年後に闇魔導士が来ただろう? あの時期、あいつ以外にも敵を作ってたんだよ。ティミレッジの体に魔法陣は埋められるし、敵も多いからヘタレと別れることに決めたんだ」

「ティミレッジの魔法陣って、君には話してなかったはずだけど?!」サティミダが素っ頓狂な声を上げた。

「とっくに知ってたよ! 怒られるのが怖くて言わなかっただろ? お見通しなんだよ!」


 彼女は気弱な夫が告白する前から、魔法陣事情を知っていた。

 サティミダはますます震え上がり、報告しなかったことが離婚の決め手になったのだと確信した。


「僕に魔法陣が埋められたのはともかく、何で敵が多いからって離婚したの?」ティミレッジが尋ねた。

「敵が多いあたしと一緒だと、あんたたちが暮らしにくくなるからさ」


 アビクリスは困った顔で打ち明けた。彼女は家族を守るために家を出たのだった。


「考えてごらんよ。もし、あたしの留守中に悪い奴らが来たら、パパがあんたを守れるかい? あんたもパパと一緒で白魔法専属だけど、それだけじゃ悪党と戦えないよ」


 ティミレッジとサティミダは納得するしかなかった。

 同時に、離婚後まもなくしてサティミダへ親権が変更された理由も理解するのだった。


「村を出て行ってからヘタレには会ってなかったけど、やっとティミレッジの魔法陣の話が出来たよ!」


 魔法陣の件はずっと知っていたが口に出さずにいたようで、精神的に解放されたアビクリスは思いきり背伸びをした。


「アビクリス、ティミレッジ、本当にごめん! 僕がこんなんだから、家族がバラバラになって……」

「あんただけのせいじゃないよ。敵を作って来たあたしも悪かったんだ。あんたのヘタレは死ぬまで直らないと思うしさ」


 気弱な性格に関してはもう諦めているようだ。それでもサティミダは安堵した。離婚の原因は自分だけで無いことがわかったからだ。

 さらに……。


「それに、ティミレッジをぶって説教したあんた、カッコ良かったよ……。ちゃんと父親やってるじゃん」


 アビクリスは照れくさそうにつぶやいた。お世辞ではなく、本音だった。


「じゃあ、さいこ……」

「それは無い。調子に乗るな!」


 気分が高揚したサティミダが思わず再婚を切り出そうとすると、瞬時にアビクリスに遮られ否定までされてしまった。うなだれるサティミダ。

 それでも穏やかな空気になり、教会内は笑いに包まれた。



 ティミレッジの両親が和解し、ユアも微笑ましく見ていた。

 だが、同時に……。


(そういえば、アヨも両親が離婚してたな……。)


 チャロナグタウンで友情を振り返った時のように、ユアは友人のことを思い出していた。

 アヨは幼少期から両親が不仲で、養護施設・グロウス学園に来た直後に離婚し、親権を持った母親も迎えに来ることはなかった。

 今は仲違いしているが、悲しい背景があることを思い出したユアはアヨに同情するのであった。


                 ◇


 夜が遅いので、今日はビラーレル村の宿に泊まることにした。

 一つの部屋に集まって、ユアたちは集まったジュエルを机の上に並べた。

 フィトラグスの剣の鍔にはまった赤色、オプダットの手袋の甲にはまった黄色、そしてティミレッジの杖の先端にはまった青色と、三色のジュエルが輝いていた。


「三つ集まったね!」

「でも、ジュエルって何個あるんだ? イポンダートのじいさんも、全部で何個あるか言ってなかっただろ」


 喜ぶユアへフィトラグスが指摘した。

 確かに、ジュエルが全部でいくつあるかは聞かされていない。もしかすると、この三つ以外にも存在するかもしれなかった。


「フィットたちのイメージカラーに合ってたから、てっきり三色かと……。また明日、チアーズ・ワンドに教えてもらおう」


 ユアがそう言った後でオプダットが、突然参戦したディンフルへ目を輝かせながら尋ねた。


「それよりもディンフル、来てくれたんだな? てか、来れたんだな?!」


 話を振られたディンフルは冷静に答えた。


「本当は今日も出てはいけないことになっていた。しかし、こちらも我慢が限界を迎え、イポンダートと急遽勝負になった。“戦いたければ、わしを倒してから行け”と言われてな」

「その時点で戦ってますよね……」ティミレッジが苦笑いしながらつっこんだ。


「イポンダートとやり合うのは久方ぶりだが、すぐに決着がついた。奴の口に大量のにんじんを詰め込んだら、一発で気を失ってくれたのでな」


 二人が直接戦ったのは出会い頭、人間嫌いになったディンフルがイポンダートに殴りかかった時。

 しかし今の話では殴り合いなどはなく、平和(?)に終わったようだ。


「にんじんがダメなんだな、じいさん……」老師の意外な弱点を聞き、苦笑いするオプダット。


「よってフィトラグス。バニラアイスに続いて、にんじんも頂戴したことをお詫びする」ディンフルはフィトラグスに丁重に頭を下げた。


「城にそんな大量のにんじん、あったか?」

「馬小屋のものを取らせていただいた」

「やめてくれ!! 馬が可哀想だろ!」


 怒りを露わにするフィトラグス。馬小屋には自身の愛馬もいたからだ。


 何はともあれディンフルも復活し、ようやく五人がそろった。

 ユアも今日の戦いだけで、力と自信がついたのであった。これから戦うのが楽しみになっていた。


(早く強くなった姿を、ディン様に見てもらいたい……!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>今回は損壊の範囲が広いため、強化された浄化技で事足りたのであった。 ここだけちょっと表現に違和感あります 「事足りる」は不足がない、必要十分、用が足りるという意味合いなので 損壊範囲が狭いから事足り…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ