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ラスボスと空想好きのユア 2 Precious Bonds  作者: ReseraN
第2章 ジュエルを求めて
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第46話「静かな怒り」

 チャロナグタウンの祠。

 近くの岩山で休んでいたレジメルスが体を起こした。相変わらず気だるいそうだ。


「シーラから聞いて来たけど、登るだけでも疲れた。いい体慣らしにはなったけど。あ~、だる……」


 肉弾戦を得意とする彼には登山は余裕だったが、少し疲れが出ていた。

 しばらく祠の近くで休息を取っており、これからジュエルを探しに行くようだ。



 岩山から降りようとしたその時、近くから男性三人の声が聞こえて来た。

 祠を守っているクロウズたちだった。


「オプダット、もう来ないかな?」

「来ねぇんじゃね? クロウズにびびって逃げたんだから!」


 クロウズの取り巻き・サークズへ、ムジーロが面白おかしく答えた。

 彼らの会話をレジメルスは陰で聞いていた。


(オプダットって、フィトラグス一行のバカの武闘家……?)


「それよりクロウズ。あれ、本気なのか?」

「あれって?」

「オプダットの彼女を自分のものにする話だよ! さっき、あいつらへ言ってたじゃん!」


 クロウズはオプダットと勝負をし、彼が勝ったら祠に入ることを許し、負けた場合はジュエルを諦め、普段一緒にいるチェリテットを「自分の彼女にする」と宣言した。

 今まで女性に興味がなかった彼がそのように言い出したので、サークズとムジーロは気になっていたのだ。


「あぁ、あの黄緑色の髪の奴ね。本気なわけねぇだろ!」


 クロウズがきっぱり言うと、二人は言葉を失った。


「あれはオプダットを困らせるためのウソだよ。ああ言えばあいつ、めちゃくちゃ頭に来ると思ったんだ。俺のこと、まだダチだとか言ってるが“こっちは仲良くする気なんてない”って伝えるためだよ」

「じゃあお前、勝ってもあの子と付き合わないの……?」


 サークズと共に幻滅しながらムジーロが聞くと、クロウズは笑いながら答えた。悪いと思っていないようだ。


「もちろん! 誰が、あんなバカをすき好んで付き合う女なんかと! 俺のこと尊敬の眼差しで見ていたが、もし向こうから誘われても“バカと付き合っとけ”って、こっちから振ってやるよ!」


 二人は返事が出来なかった。それぐらい、今のクロウズの反応は信じられなかったのだ。


「さすがにひどくないか……?」

「オプダットを困らせるどころか、彼女まで傷つけるじゃん……」

「だから何だよ? あの二人が困ったって、俺は痛くもかゆくもねぇし別にいいだろ!」


 さすがに注意を受けるも、クロウズは聞き入れる気はまったく無い。



 その時、彼に向かってレジメルスが強烈な飛び蹴りを繰り出した。

 寸前に気付いたクロウズが手で受け止めたが、威力に圧倒されてしまう。


「な、何だよ、お前?!」


 レジメルスは答えず、クロウズを睨みつける。

 至近距離のため、襲って来た相手の瞳孔が細長いことがわかった。


「その目……お前、ディファートか?!」

「だから何だよ?」


 レジメルスは冷静に言いながら、しゃがんだ態勢で着地すると素早くクロウズに足払いをし、転倒させてしまった。

 彼の言い方は、クロウズがチェリテットを振ったことを注意された時のものに似ていた。敢えて真似をしたのだろう。


「この野郎!」


 立ち上がったクロウズが拳でレジメルスに掛かって行く。

 ところが、相手は素早い動きで相手のパンチを避け続けた。しまいには、再びクロウズを猛烈に蹴り飛ばしてしまった。


「クロウズがやられてる……」

「武闘の授業ではいつもトップだったのに、それ以上に強い奴が来るなんて……」


 サークズとムジーロはすっかり顔が青ざめ、助太刀せず悲鳴を上げながら山を降りて行ってしまった。

 うつ伏せに倒れたクロウズの目に、その光景がしっかりと映っていた。


「おい……。見捨てるなんて嘘だろ?!」


 仲間だと思っていた二人の去る姿にショックを受けるクロウズ。

 倒れる彼の背中を、追い打ちを掛けるようにレジメルスが思いきり踏みつけた。


「私欲のために女性を侮辱する奴なんか、見捨てられて当然だけど?」


 クロウズは体を起こそうとするが、レジメルスが背中を踏む足にさらなる重心を加え出した。



 その時、レジメルスの体を青色の光が包み込んだ。

 すると体の力が抜け、クロウズが彼の足を手でつかんでどかし、自身の体を起こした。


「は……?」


 目の色を変えずに驚くレジメルス。クロウズが絶対に起き上がれないと思っていたのだ。

 体はまだ青く光り続けていた。


「これ、白魔法だね。と言うことは……」


 彼はマスクをずらして鼻を出すと、クロウズとは違う方向を睨みつけた。

 その方向には、ティミレッジとチェリテットが立っていた。


「なるほど。君たちか」理解するとマスクを元の位置に戻した。


「よくわかったわね?」チェリテットが睨み返す。

「僕は人間より嗅覚が優れているんだ」


 レジメルスが説明しながら青紫色の光の球を出し自分の体に掛けると、白魔法の青い光が消えてしまった。


「無効化された?!」衝撃を受けるティミレッジ。

「あなたも魔導士?」

「これはヴィヘイトル様からもらった特別な力さ」


 相手がティミレッジたちと話している隙にクロウズが再び拳を突き上げ、レジメルスへ攻撃を仕掛けた。

 しかしすぐに見抜かれ、今度は青紫色の魔法弾を食らってしまった。



「やめなさい!」


 チェリテットも参戦し、レジメルスへパンチを仕掛けた。

 しかし何度繰り出しても、素早くかわす彼には当てられない。


 レジメルスはしゃがんで彼女の足首をつかみ、放り投げた。


「チェリーちゃん!」


「頭から転倒してしまう」危険を感じたティミレッジが白魔法のバリアを出そうとした。

 ところが彼女が地面に着く前に、レジメルスが急いでその体を抱き上げた。


「えっ……?!」


 飛ばしておきながら相手を抱き上げる彼に、ティミレッジもチェリテットも理解が出来なかった。

 レジメルスは彼女の目を見ながら言った。


「君、弱いね。戦うのやめた方がいいんじゃない? その方が生き長らえるよ。大切な人がいるなら、なおさら」


 助言のような皮肉まじりの言葉にチェリテットは一瞬首を傾げるが、「大きなお世話よ!」と怒りを露わに、レジメルスから離れた。


                 ◇


 チャロナグタウンの裏山。

 クロウズに会うため、オプダットはユアとフィトラグスと共に、再び頂へ向かっていた。

 急いでいるのと戦う時のために体力を温存したいので、ユアのチアーズ・ワンドから出した魔法の四角形に乗っていた。


 途中、怯えた顔で下山するサークズとムジーロに会った。


「お前ら、クロウズと一緒にいた奴ら?」

「オプダット?! 何だ、その乗り物……?」


 ムジーロは息を切らしながらも、四角形を蔑んだような目で見た。

 三人が答える前に、サークズが慌てて言った。


「それどころじゃねぇ! クロウズが大変なんだよ!」

「何があった?!」


 緊迫した様子で聞くオプダットへ、サークズたちは状況を説明した。

 二人と別れた後、ユアたちは四角形のスピードを上げ、山頂へと急いだ。

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