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70話 守枝家に殴り込み!?2

 タクシーを使って山の奥にあるホテルみたいな豪邸にやって来た。守枝家いわく山籠りの方が修行にちょうど良いとのことで戦後に作られたと言われているけどさ、洋風な造りであるのが意外だったりする。先代が相当柔軟に物事を進めれる方だったことを考えるとまぁ納得は出来る。


 先代が直々に指名したのが今の族長であるが本来であれば別の奴になっていたとか。もしそれが無三郎だと仮定するのであれば目的は……僕や輪花ではなくて守枝家族長__神月(しんげつ)ってことになるから殴り込みはある意味正解かもしれないな。無三郎を探す前に族長を探さないといけないけど、この敷地広いからどこに居るのかが分からん。アイツってスマホとか持っていなさそうだし、どうしたものか?


「お客様かと思ったら小さき者ではありませんか」

「この声と変な呼び方をするのは神げ__うぉ!」

「何を驚いているのですか。たかだか熊でしょうに」

「驚くわ。素手で仕留めたのか?」

「それでは弱い者イジメになってしまいます。なので武器を使いました」


 熊を三頭担ぎながらやって来た漢が守枝家族長_神月だ。武器を使って仕留めたらしいけどその武器とやらは見当たらないのはツッコミをいれないからな。そもそも素手の方が武器より強いってどういうことだよ。せめてそれよりも弱くはあれよ。何事もなくて良かったとは思うが流石に三頭を一人で仕留めるのは危ないだろ。けどコイツなら普通に出来そうな感じがするから嫌なんだが。


 熊に素手で勝てる人はいるかもしれないけども武器を使う方が弱いってなんだよ。流石に僕でも武器を使う方が強いぞ。人間じゃないのかもしれない。こっちに危害を加えないのであればどっちでもいいか。はぁ……族長達って個性的な奴らが多すぎて話すのに疲れるから出来れば会いたくはないんだけど、それが出来ない理由がこっちにはあるわけだから仕方ないよな。



「無三郎の件でこちらに来られたのでしょう?」

「話す手間が省けて良かった。ソイツはどこに?」

「立ち話はなんですのでお部屋に案内します」

オレ(・・)としては何も問題はない。ここで話せ」

「そうですか。皆さん仕掛けなさい」


 神月の合図で僕が立っていた場所に穴が開き底に落ちかけた。松葉杖が穴の直径と同じだったらしくそれで落ちるのを防げた。本当に松葉杖って便利だとは思うが本来の使い方では無さすぎるな。穴の深さが40mほどだと仮定するとその半分くらいは落ちたろうな。ここから抜け出せても守枝の連中が待ち構えているのだろうからやり合うって手段を取るのは面倒だ。


 それにしても神月は何故、無三郎に用があると分かっていたのかを知りたい。アレか竜二のところのメイドが神月にたれ込んでいたからそれを知っていたのか? ただそんなことをする必要性があるのかと言われたら無いだろう。そもそもが竜二の利益に何もならないだろうし、あっち側の味方を減らすような行為だとして処分させる可能性もあるわけだしな。


「・・・足を怪我している状態でどうしたものか」

「落ちていないのですね。流石は小さき者です」

「てめぇ、煽ってんのか?」

「いえ純粋に驚いているのですよ。なのでご褒美です」

「はっ???」


 神月は穴に物を投げてきた。それはあまりに巨大で獣臭すぎるものだった。神月は仕留めた熊を何食わぬ顔で落としてきたのだ。狭い穴の中では避けることも出来ずにそのまま熊と一緒に落ちていった。松葉杖は一本しか借りていないで折れてしまったら病院側に弁償しないといけないのに折れてしまった。そんなことよりも浅いが下が水で良かったと心底思うよ。


 熊の下敷きになって左足がもうアウトだろうけどな。痛み止めをポッケに入れていたからなんとかなったがこれは普通に医者からもドクターストップが掛かるだろうからこのヘンテコな地下で待つしかない。熊の下敷きになって分かったがコイツの中に何かが入っている。それを取り出せば良いのだろうけど、浅かったとはいえ水に濡れてしまったのだ。使えないかもしれない。


「ご丁寧に防水用に入っているとは。紙に着替え、サバイバルグッズにポーチね」


 熊の中によくもまぁこんなに入ったもんだな。外は完璧に熊そのものだが、中身は別のものに造り変えていやがるのは流石に引くが今回はそれに助かった。紙にはここからの脱出ルートや僕をここに落とした理由が記されていた。左足が完璧に逝ったのに理由が敵を欺くためだとかふざけてるのかよ。受け身が取れなかった僕が悪いかもしれないけどね。お咎めはなしにしておかないとな。


 今日はここから動かなさそうだな。痛み止めを飲んだと言っても左足を治療せずに動き回るのはさらに悪化させるだけだしな。誰かをここに送り込んで来るとは思うが流石に今日では無いだろう。おそらくは僕に早く脱出してもらいたいんだろうけど流石に無理だな。とりあえずランプを付けて着替えようとしたが足音が聞こえたのでやめて隠れることにした。


「あのクソガキはどこだ」

「近くにいる筈です」

「なら早く探して殺せ」

「ですが!」

「俺様は次期族長で、いずれはあの守友家の孫娘と結婚する男だぞ!! 言う通りにしろ!!」

「は、はい」


 そういうことね。あの怒鳴っている男が無三郎ってわけか。夜夢に婚約者って話は一切聞いたことがないけど、アイツとさせられるとか普通に可哀想だと勝手に思ってしまうな。まぁ本人が勝手に言っているだけだとは思うんだけどね。容姿は美形ではあるだろうが他の要素がダメにしてそうな人だな。野心があるのは結構だけどもね。


「俺様はあの夜夢を嫁に貰った後はお前らにも味合わせてやるからな」

「ほ、本当ですか!!」

「時々来ていたあの桜木雪菜だっけ? アレもくれてやろうにしてやろう。もちろん他の奴らだ!!」

「お、お前ら無三郎様について行こう」

「「「おー」」」

「俺様に従った方が___なんだ!? 寒気がする」


 よく分かった。コイツ……いやコイツらはただゴミで情けなんてかけなくて良い奴らだ。パッと見た感じ6.7人はいるな。仕方ないから命までは取らないでおくが地獄を見せてやる。左足が使えないだろうが知ったことではないし、すぐに同じようにするから何も問題はない。元々は殴り込みに行くつもりだったから当初の目的通りだ。

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