66話 佐藤と……3
はぁ……原さんがあの時いた少女なのであれば顔を隠しているのも納得できるが、そうなると一体どこで僕や雪菜さん、佐藤を知ったのか。一番可能性があるのは記憶がほとんどない幼少期になるが佐藤が気付かないなんてことがあるのか? 勉強出来ない馬鹿ではあるが人の顔や名前を覚えれない奴ではない。謎が多すぎるし、僕を巻き込まないで欲しい。
佐藤と絡むようになってから色々と巻き込まれてきたけど、高校に入学してからは格段に上がったな。知らない間に助けているみたいだけどもそれでも以前と比べるとおかしいくらいに増えた。てかさっさと赤城やその他の奴らとも仲良くしろよ!! これが恋愛ものだったら普通に何をしているんだよってツッコミを入れてるわ!! なんて考えていたら保健室の前まで来ていた。
「サキ、やっと来たか」
「死ね」
「はぁ!? 俺が一体何をした?」
「なんでお前が今まで助けた奴らが遠ざかってんだよ」
「・・・これを読めば分かる」
赤黒いシミが付いている紙を渡された。所々破れているのでしっかりと読めるかは分からないから不安だが、嫌な予感がする。読みたくないから突き返したが「バカ読め。先輩の次に助けなきゃいけない」と頭を叩いてきやがった。頭を叩いてきたので僕は松葉杖を使って佐藤の転ばした。普通に考えて怪我したんだろうから面倒なんだよ。
ただ怪我してしまったのかそうじゃないのかで厄介具合が変わるだろうからな。こんな厄ネタが普通に生活していて入ってくるようにはなりたくないし、巻き込まれたので今までやってはいたけど助ける理由も義理も一切ないから僕的には無視だ。ソイツらが自分の意思と関係なく佐藤から離れていったんだからお前も助けようとしないでいいだろうに、それを助けようだなんてお人好しだ。
「いいのか? 一度離れた奴なんだぞ」
「それを言うなら俺もだ。関係に亀裂が入っても……こうして心配してくれる友じ__嫌そうな顔!!」
「実際いやだしな」
「えぇそこはさぁ」
ここで笑ってやることなんて僕が一生するわけ無いだろう。僕はそれで流されるような奴とは思っていないだろう? まぁ別にどう思ってようが僕には関係ないしこれからも生き方を変えるつもりは今のところないから何も聞く気はない。だから佐藤も好きに生きてもいいとは思うんだが……それが出来たら今頃ハーレムが出来ているだろうなあ。
「とりあえずは先輩Aについてだ」
「協力してくれるのか?」
「状況による」
「・・・ありがとう」
今は先輩Aのことを優先することには納得しているのかは分からないけど、元々コイツの中でそこまで優先順位は高くないんだろう。まずはペンについて情報を共有した。なんとか機能だけを壊したがこれをどうやって贈った人に返すかを一緒に考えて欲しかったのだが「壊したぁ!?」と佐藤は何故か驚いていた。普通に考えてこんな危ないものを壊しておかないといけないだろ。
ペンとしては機能するんだから何も問題ないだろうに何をそんなに驚いているのかが分からないな。そんな佐藤を無視して保健室に入ろうとすると止められて「贈った相手が危害を加えるって考えなかったのか?」と両肩を掴まれて言われた。そんなのは可能性としてあったさ、手っ取り早く終わらせれるのであればいいと思ってわざわざカメラの方に顔と場所が分かるように映してから壊したのに、来なかったということはすぐには動かないってことだ。
これに関しては先輩Aと西さんに危害が行くことはないと考えている。くるとしたら僕か佐藤にだろう。このペンは親しい人からの贈り物だという線でいくならばだけどね。もし違うのであれば警戒するとしたら今ここでだろう。安否確認をする為に飛んでくる奴らの中に危害を加えれる人間がいるかを判断しないといけない。だからさっさと贈り主を聞き出したいんだから退けよ。
「そこを退いてくださる?」
「どちら様でしょうか? 部外者は入れない筈では?」
「顔だけの男に怪我をさせられた子の母ですが」
「せ、先輩の親……」
「えぇだからそこを退きなさい。その持っているのは娘のでしょう? あの子のペンを返しなさい」
僕は言われた通りにペンを母親に返した。先輩Aの家はここから近いのだろうか? 知ったことではないが少し調べてもらっておこう。輪花がちょうどいい感じにいる訳だし先輩Aの家族とその周りについて情報を集めてきてもらうか。学校のは宇恵野から聞けばいいわけだしな。・・・最悪の状況にならなければいいんだがなぁ。おそらくはジョーカーを引いてしまった。
僕の推測が正しくないことを祈るよ。この母親が原因で防衛本能が無意識に人格を作って護っているんだろう。ストーカーの被害に遭っていることも知っているが黙認しているんだろうなぁ。あのペンは特注品ではなく普通に作られている物だった。見た目は少しだけ高そうな感じではあるがどこにでもありそうなデザインを一発で娘のだと思うか?
「サキ、チャイムが鳴ったし教室に戻ろう。母親も来たわけだし」
「そうだな。一つ確認だが」
「ん?」
「先生にどこまで話した?」
「怪我をさせてしまった経緯のことくらい」
旧校舎から保健室には大体五分くらいだろ。僕がここまでくるのにかかったのは10分ほどで話した時間はせいぜい四分くらいだと思うが、一体どうして早く来れた? って疑問になるんだよ。一応保健室に先生がいるかを確認すると「いるな。親御さんに連絡は入れるって言っていたぞ」と帰ってきた。佐藤が保健室にいる間にはかけていなかったらしい。
真相を知りたくはないけど、知らないと先輩Aと西さんが……いや別にそのままでもいいとは思うんだが助けてほしいってのは本心だろうから助けるが、家庭の事情だった場合はしんどいけどね。自分を傷付けてでも助けてもらうとしていたんだから相当限界な筈だから今日乗り込むなんてことはしない。先輩Aには悪いけど、もう少し我慢してもらわないと。




