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61話 夜夢の過去3

〜回想〈族長視点〉〜


「咲人が貴女を好いたならいいわ」

「ありがとうございます」

「・・・頑張ってね」


 夜夢様が咲人様のことを好いているのは物凄くいいことですが普通にこの場で言えないとは思いますが、本気度を見せるのにはいいかもしれません。花蓮様の表情も先ほどよりかは和らぎましたので良かったです。夜夢様はみかん殿に病室まで連れて行かれました。これから相当大変なことになるかもしれませんが夜夢様に二度と同じ事が起きないことを私は祈ることしかできません。


「父様、咲人は無事なの?」

「命に別状はないから安心せい」

「・・・顔だけ見るのもダメ?」

「ダメじゃ……写真は送ってやるからそれで我慢せい」


 花蓮様は泣きそうな声を出しながら当主様に色々と質問をしております。私は咲人様の病室に行こうと立ち上がりますが「お聞きしたい事が」と凛奈様に止められてしまいました。先日、竜二が目を覚ました後に行われた事情聴取で「夜夢が小さい声で“助けて”と」って言ったそうなのですが……私には聴こえておりませんでした。ただ咲人様には聞こえている可能性がないかと問われました。それは知りませんと言いたいところですが、聞こえていた可能性もありますね。


 教育部屋で偶然止まる可能性もありますが当主様の予定を聞かれた後に走り始めたことを考えると聞こえたのでしょう。ただの臆測ではありますがお答えしておきました。それを聞いた凛奈様は「改めてお礼を言わないと」と言っておりましたが言わなくても良いと思われます。咲人様はそんなことはどうでもいいって言うと思いますので、意味がないと思いますが気持ちですので私からは何も言いません。



 三日後には夜夢様は退院されましたが咲人様はあと一週間は入院しないといけないので私は出来るだけお側におりました。毎日は流石の咲人様も気が滅入るとは思いましたので私は週5でお世話をさせていただきました。何度か咲人様に「父さんと母さんには会えない?」と聞かれましたが……お答えは出来ませんでした。ただ私は首を横に振るしか出来ないでいました。


「お姉さん、サキくんはどこに居ますか?」

「咲人様には申し訳ありませんが会わせることは出来ません」

「少しもダメでしょうか? 娘も私も迷惑をかけないでの」


 本日も咲人様のお世話を頑張ろうと意気込みながら病院に入ると母娘が私の下へとやって来ました。確かこの二人は調査部隊によると桜木奏、桜木雪菜でしたね。奏殿は花蓮様と仲が良いとの情報でしたが病院を教えるほどの仲だったとは思いませんでした。その辺もちゃんと調査部隊に調べるように言っておかないといけないですね。


 娘の方は咲人様に助けてもらったことで仲良くなった子ですね。少し前の事件の犯人の肩代わりになった方の息子、佐藤裕太と言う男の子にイジメられていたって報告にありましたね。重症ではあった筈ですが咲人様よりは軽傷だったようですね。もしかしたら大火傷を負ってしまった子、原たぬきもくる可能性があることを頭に入れておいて、護衛にも守らせておきましょう。


「申し訳ございません。一部記憶が無く急な刺激を与えないようにしないといけません」

「お兄様にお会いしたいのですね?」

「夜夢様!!」

「会わせてくれるの?」

「えぇ、案内いたします」


 今日も来られたんですか夜夢様。退院されてから毎日来られていますがちゃんと勉強などはしておられるのかが気になりますね。それに本当に大丈夫なのでしょうか? 咲人様はご両親を見ただけで嘔吐してしまいましたので、初恋の桜木雪菜は刺激が強すぎると私は思うのですが。私は夜夢様と雪菜殿が咲人様に対する狂気的な執着をこの時はまだ知りませんでした。


◇◇◇

[井上秋冬視点]


「ってな感じでお終いです」

「狂気的な執着はどうした」

「お二人とも我が一族よりも愛が重いのですよ」


 確か藤咲さんから聞いた話では婚約した者を監禁する事が普通にあるし、盗聴や盗撮は当たり前って言われたのにそれ以上となると怖すぎる。だから僕らに伏せていたのだと思うんだけど。そんな二人と同じ学校に通わないと行けなくなるって気が滅入ってしまう。



◇◇◇

[守友夜夢視点]


 お兄様は病院に行かれていてこちらに戻って来ることはないので秘蔵からコレクションを堪能できます。コレクションにある服を身にまとい……以前、父様たちと食事した際のことを思い出しました。父様から「すまなかった」と謝ってこられたので私は動揺してしてしまっていました。落ち着かせる為に一度外に出たらお兄様がおりましたので軽い相談したら「距離をおけ」と言われました。お兄様は初対面から父様を嫌っていましたので分かるのだと思います。


 私は父様が変わっていると信用はしたかったのですが、お兄様に距離を置いたほうがいいと思われているのなら変わっておらず、私たちを騙す為の演技だと思いました。お兄様と別れた後に部屋に戻りましたが自然なほど私たちのことを知っておりました。お母様は何も言わずにお食事をされていて、兄さんは無視しておりました。私は……怖くてずっと縮こまっていました。ここには私を守ってくださる人は居ないので我慢するしかありません。


「まぁお兄様が異常だったのですから仕方ありません」


 父様はお兄様がやって来られてからは私に花蓮叔母様みたいになることを強要しなくなっておりました。身体の傷もずいぶんと引き始めた頃、爺様が大事な会議で家を開けた事があります。教育部屋に私は連れて来られて顔を殴られました。父様は「お前が花蓮じゃないのが悪いんだ」と言われました。私の中で何かが割れる音が聴こえて近くにあった包丁を持って攻撃しました。


 父様は簡単に避けて私に蹴りを入れてきて「花蓮はそんなことはしないんだよ」と何度も何度も蹴られました。胃の中にある朝食を全て戻してしまいさらに父様の逆鱗に触れてしまったのです。戻したモノを私は命令されたのでもう一度食べました。何度も吐いては食べを繰り返してなんとか綺麗になりました。二度とあんな思いはしたくありません。


「お兄様に助けてもらえなかったら……」

「失礼いたします。夜夢様」

「月美ですか? どうしましたか?」

「・・・それをこちらにお渡しください」

「何をです?」


 月美は私が身に着けている服を指差して「そちらです」と言ってします。私が着ているのは昨日お兄様が着ていたお洋服一式ですので汚くありません。お兄様成分が枯渇しかけているのですからこれくらいはよいではありませんか。洗濯をする前に堪能するくらいしてもバチは当たりませんからね。


「・・・咲人様のパンツもないとのことですが?」

「月美、私が持っていると思っていますね」

「はい今の服装を見れば疑ってしまいますよ」

「使ったのでしっかりと洗って今朝、干しました」

「使って干した? 今朝?」


 全くもって失礼な月美ですね。お兄様のパンツであれば昨日、お洋服を回収する際に一緒に持ってきております。そして昨日ちゃんと堪能した後に洗おうとは思いましたが、そのまま眠りについてしまったので今朝、洗い干したのです。お兄様の部屋にそっと戻しておきました。私には抜かりはありません!!

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