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58話

 昼近くまで寝ていたらしく月美さんにかかと落としで起こされた。もう少し優しい起こし方があったと思うけど昼近くまで寝ていた僕が悪いので何も言えない。昨日も結構思っていたこと言うけど、僕は怪我人なんだからさ普通に優しくとかはないわけ? 松葉杖で移動とかもしているから結構、重傷なんだけどなぁ。


 月美さんをジト目で見ていたら「輪花ちゃんから昨日、押さえられた時のこと聴きましたからね」と言われてしまった。アレに関しては輪花自体が鈍っていたのもあるだろうからノーカンだろう。それに別に左足は使っていないし何も問題はなかった。その後の正座で相当な苦痛があったけどなぁ。それを言ってもいいけど何も反応は返ってこないだろう。月美さんは夜夢の専属の護衛だから僕の命令はほとんど聞かない。


「お怪我の具合はどうかでしょうか?」

「こんな感じだねぇ」


 僕は布団から出て浴衣を開ける。少しだけ青くなっている左足を見て月美さんは「病院に行きましょう」と大声で言ってきた。待て昼過ぎだから普通に家に大勢の人間がいるだろうがよ。ドアをぶっ壊して入って来たのは輪花で「咲人様は私がお守りします」と僕目掛けて拳を降ろしてきた。反射的に左へ逃げてしまった為、足に激痛が走ったがそんなことより何故、拳を降ろしてきたのかが気になるわ。昨日のことならすまないとは思うけどそれ以外は何もしていないのに。


 月美さんは急に入って来た輪花に驚いていたようだが僕に加害をくわえようとしたことに相当、怒っているみたいだった。輪花の首根っこを掴みそのまま外に放り投げた!! 相当怒っているのは分かったけども君も同じことしていたことをお忘れですかね? 腹にかかと落とし喰らわせるのはどうかと思うよ。急所を狙ってくるからマジで痛いんだよなぁこれが。月美さんも窓から出ていくスタイルなのね。


「そこにいる奴は出てこい」


 僕は部屋の外にいる奴に向けて言ったのに天井から子守家の族長が下りて来やがった。族長は「咲人殿、お久しぶりでござる」と言ってきたがお前は呼んでねぇし、その口調は昔から変わらねぇな。はぁ、見た目だけはいいのに中身がゴミ過ぎて誰とも婚約が出来ずに族長になるわ、自分の叔父に自害させるわで散々好き放題している奴に後ろ盾にはなられたくねぇ。


「拙者は咲人殿に言いたいことがあるでござる」

「何?」

「桜木雪菜という小娘は相応しくないでござるよ」

「それで?」

「殺します」


 子守族長が雪菜さんを殺すのであれば僕はコイツをやる。僕が殺気を出しながら睨むと「冗談ではないでござるよ」と笑いながら言ったので返事として松葉杖をぶん投げた。簡単に受けとめるのは分かっていたので怪我を悪化させないように動きながら懐に入り全力で殴ろうとするが届かなかった。いつの間にかセロハンテープを僕の周りに貼っていたみたいだ。


 テープじゃなくてそこは糸かワイヤーじゃないのかい。僕の動きが封じれたらなんでもいいんだろうがこんなもので動きを封じれたとでも思っているんだろうな。・・・普通に封じられたわ。このまま雪菜さんの所に行かれたらヤバイとは思うが、コイツなら絶対にいけないな。何故なら「藤咲さん、すごい音しましたが大丈夫でしたか?」と秋冬くんが入ってきた。族長は天井に姿を消した。


「子守家の族長が来てた」

「や、ヤバイじゃないですか。どこにいるんですか?」

「天井いるよ」

「井上殿でござるな。またご挨拶に伺うでござる」

「本当にいるんですね!?」


 秋冬くんは驚いているがその反応は正しいから僕からは何も言わないで普通にテープから抜け出す。族長はここから逃亡を図ろうとしているので僕は松葉杖を支えにして移動するであろう場所を先に蹴り壊す。蹴り壊した所からなんと族長が落ちてくるという現象が起きてしまう。秋冬くんは「変な格好をしている女の人が落ちてきました」とびっくりしている。


 いや声で女だと分かってあげてほしいと思うけどあの口調では無理な面もあるよな。子守族長、年齢39歳、独身で極度の人見知り。お見合いや出かける際には仮面が必須だということで唯一顔を見せない族長である。ちなみに僕も知らないし、ジジィもその顔を見たことはないので素顔がどのくらいとかは分からない。本人いわく可愛くないとのこと。


「咲人殿、ひどいではありませぬか」

「仮面が落ちていましたよ?」

「これはかたじけない。拙者は顔を見られたくな__」

「可わ__ふひはひはん」


 危なかった……可愛いとか秋冬くんが言ってしまったらコイツの中にある子守の血が目覚めて狙われるところだった。顔を見られている時点で普通にアウトの可能性もあるがなんとか大丈夫だと思いたい。これは僕も見たら問題ないのでは? どっちにしても面倒なことになるのは確定だとは思うんだが、輪花と族長が喧嘩するよりかはマシなのかもしれない。


 秋冬くんから僕は離れて族長を見ると仮面を着けてプルプルと震えていた。恥ずかしくてなのか怒りで震えているのかは分からないけどロクなことにならないのは分かった。族長は「二人の関係者は皆殺しにしてやるでござる」とものすごく物騒なことを言ってきたから秋冬くんは逃さないとダメだと思い窓から投げ出そうと思ったが、「若い子は元気がよろしいですね」と窓から登場してきたのはみかんさんだった。


「みみみみみみみかん殿!!」

「幼い頃から変わっていませんね。お仕置きが必要ですか?」

「もももももも申し訳ないでござるぅ」

「全く……世話がまだまだやけますね」


 みかんさんは窓からふわっと入ってきたと思ったら一瞬で族長の目の前まで移動していた。二人は追いつかなかったのか三十秒ほど止まっていた。そりゃ族長も動揺しまくるよ。いやね、族長も人が反応できない速度で罠とかをはれたりするのに相当な時間がかかるのに簡単にやってのけるなよ。


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