49話
先にスイーツを二人に奢ってあげたのはいいのだが……意外と食べたのには驚きだった。甘いものは別腹とか母さんもたまに言うけどしっかりと食べてるしな。ちゃんと食べるなら食べてくれてもらっても構わないけど、赤城は遠慮を一切しないな!?
「君は私たちに借りがあるんだよ?」
「アレに関してはオレは悪くないと思いたいわ」
「藤咲くんが応援に来てくれていたら助かったよ」
「そうですか。そんな事より上手くはいったのか?」
「それはもうバッチリ……って言えたらいいんだけどね」
まぁ原さんが乱入してきてしまっては失敗したのと同じ意味だろうからな。まぁあとはあの二人がどうにかしてくれないと亀裂なんてすぐに出来てしまうからな。・・・赤城はマジでよく食べるな。雪菜さんも食べている方ではあるんだろうけどコイツを見ると食べていないように見えるわ。
ここにくる前からずっと何かを考えてあまり喋らなくなった雪菜さんはちゃんと甘い物は食べている。糖分は必要なのだろうが流石に食べ過ぎだとは思うが黙っておこう。後悔するのは僕じゃ無くて二人だししっかりと運動をすればその分は大丈夫だろう。
「藤咲くん、原さんって知り合い?」
「それはなんとも言えないな。あっちは知っているみたいだし」
「顔を見ればなんと無く思い出せるのかな?」
「確かに顔半分以上は隠れているからなぁ。それでも分からん」
赤城は原さんの噂を話してくれて興味深いのを教えてくれた。体育の授業の時には必ず髪を結ばないしジャージを常に着ている。中学の同級生に聞いた話では水泳の授業は見学になっていたとか。体に大きな傷がある可能性が高いな。それと顔にもあると考えた方が良さそうだな。
そうなると佐藤に近づいた理由が……傷を負わせた相手への復讐になるのか。それなら何故、黒井先輩とのお見合いなんてことをしたんだ? 佐藤に助けを求めなくても別に問題はなかったと思うのだが? 親が決めたのなら仕方ないが原さんの両親は居なかった筈だ。じゃあ誰に決められていた?
「サキくん……あのモールでの爆発事件は知ってる?」
「・・・無差別殺人未遂であれば」
「未遂なの? 私が憶えてるのであれば一人亡くなってなかった?」
「沙耶ちゃん、それは……佐藤くんのお父さんだよ」
「そ、そう……なんだ」
空気が暗くなってしまったので僕は手を合わせてケーキを頬張った。「暗くなっても仕方ないだろ。食えよ」と言ってメニューを赤城と雪菜さんに差し出した。ジジィのカードがあって助かったと思ってしまったよ。僕のお小遣いじゃとても払いきれない料金だからね、すでに。
雪菜さんはお腹いっぱいなのか、もう注文しないで紅茶を飲んでいる。赤城は、まだ追加で甘味を頼んでいる。そろそろやめてほしいと思うけど、美味しそうに食べている人に対して何かを言えないのは……悪くないと僕は思いたい。
「二人ともどうしよう」
「沙耶ちゃん?」
「お、お腹がいっぱいになっちゃった」
「沙耶ちゃん……」
コイツは馬鹿なのか? 腹痛でも起きたのかと思ったんだが……そうじゃ無くてよかったが腹が満腹になっているのであれば帰るって手段がぁ〜あれか晩ご飯を食べれなくなってどうしようって感じか。正直に親に白状すればいいだろう。
「ママに怒られるぅぅぅ」
「サキくんどうしたらいい?」
「自業自得だとしか」
流石に怒られた方がいいくらいは食べているのでしっかりと怒られて反省してほしい物だな。一皿でホールの1/8くらいだとして、それを二十皿近く食って追加でパフェを5個は食い過ぎだろうよ。しっかりと怒られてこい。
しかもここのは普通の場所よりも大きい筈なのにそれをバクバクと食ったら腹にも溜まるだろう。僕は一皿で雪菜さんは三皿なのに対しての赤城は二十皿になっているんだからそりゃヤバイだろ。いくら大食いだとしてもそれでいいのかと心配になるレベルだぞ。
「顧問にも怒られちゃうじゃん!! 藤咲くんなんで止めてくれなかったの?」
「美味しそうに食べてたし……親戚が営んでいる所なんだから」
「・・・ここってバイト雇ってる?」
「赤城、お前は部活でバイトは出来ないだろ」
僕の言葉にショックを受けたのか急に大人しくなった。そういえば佐藤が言っていた他校の面白い女の子って赤城のことなのかもしれないな。練習試合で他校に行った際に仲良くなった子がいて気になっているとか言っていたような気がする。
「赤城」
「なに? 凹んでいるからそっとしてほしいんだけど」
「佐藤とはいつ頃に出会った?」
「ん〜中学2年の初夏くらい。どうして?」
佐藤の話にその子が出てきた頃も同じ時期になるな。流石に色々と問い詰めてもいいのだがそうすると雪菜さんに迷惑だろう。佐藤のことはあまり好きじゃないらしいからな。名前も知っているだろうしどうして今アレになったのかが気になる。
初恋の人は別に居るらしいからもしかして再開した可能性があるから赤城への想いは薄れたのかもしれないな。僕は経験したことない感情だからどうしたものか。父さんや母さんには相談は今の状況では出来ないだろうからどうしたものか。
「サキくん、沙耶ちゃんがずっと呼んでいるよ」
「すまん気になったことを聞いただけだ」
「そっか・・・藤咲咲人くん、明日は全力で潰して」
「いいのか? 本気でやるぞ?」
「うん、好きな人が間違えた道を行くのであれば止めないと」
「沙耶……ちゃん……」
赤城は「彼に二度と会えなくなったとしても私は対立するよ」と言ってくれた。そのくらい覚悟しているのであれば僕もしっかりとそれに応えないといけないな。佐藤には悪いが明日は本気でやらせてもらうから折れないでくれよ?
今回の勝負に新井先生も関わってくるのには少し疑問があるが何かしてくるわけでもないだろうから放置でも大丈夫だろう。もし学校全体が僕らに何かをしていた時点で……終わるだろうな。ただ僕を嫌っている人がいるのも確かだからそれに対しての対策として何かをするような人ではありそうなのがなぁ。まぁ今はそんな事よりも。
「赤城沙耶。君の想いを背負って明日は僕は本気で挑む。何があろうともな?」
「・・・・・それはズルいよ」
「サキくん、それはダメだよ」
「何故に!?」
「サキくん、次は絶対にダメ」
「それはそう。それは雪菜ちゃんにすべきだよ」
えぇー何が一体ダメなのかを聞きたいんだけどぉー誰か教えれませんか? 特に変なことを言った気はないんだけども二人がそうゆうってことはダメなんだろうからしっかりとやらないでおこう。何度かしたことはすでにあるけどね。




