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48話 私の小さく醜い嫉妬の復讐1

「アレか化け狸って言ったところか」

「アンタは簡単に地雷を踏むわね。昔の一切変わってなくて逆に安心したわ」

「人間はそう簡単に変わるとでも思っているのかよ」

「少なくとも助けられた時は思ったわよ」


 確かに助けたが今は後悔しているよ。あのまま僕は無視しておけばこんな演技が上手い奴に目を付けられずに済んだ。助けてしまったのは仕方がないのだが疑問に思っていることがあるとすれば佐藤への想いが本物かってことだな。他のことはぶっちゃけどうでもいい。


 そろそろ学校に向かわないと行けないから原さんは無視しても何も問題はないだろう。僕と過去に会っていようが一切憶えていないので勝手に恨んでくれて構わないと思っているしね。復讐のために佐藤に近づいて僕と仲違いさせるのはいい作戦だとは思うけど。


「ちょっと待ちなさい」

「待つ理由はないだろ」

「明日の勝負はしないほうがいいわ」

「理由は?」

「あなたは確実に負けるからよ」


 敵の原さんがこういうって事は普通に僕は負けるって事だろうからそれは別にいいかな。特に何かペナルティがある訳でもないわけだしね。日時だけしか教えてくれなかったけどズルをするとは思っていないからなぁ。明日なんとはすればいいだろうから戻るか。





 うるさい原さんを無視して学校に戻ると……正門で何故か疲れ切っている雪菜さんと赤城が居た。二人の先輩は先に帰っているとのことだったので別にいいんだが、本当になんで疲れているのかがわからない。まぁ何かあった事は分かるけどなぁ。


「ふ、藤咲くん……遅いよ」

「サキくんが遅いから先輩達帰ったよ」

「待たせたのは悪いとは思うけど、何しているのさ」


 赤城が疲れるのはなんとなく予想はしていたけど、雪菜さんが疲れているのは予想外だったわ。よっぽど原さんの相手が面倒だったらしいな。僕も少し相手したけど面倒だからその気持ちはわかる。そろそろ真面目に帰らないと母さん達が心配するから二人にとりあえずは帰ることを提案した。


 早く帰った方がいいと提案したのだが……何故だか微妙な空気になったんだが? 特に変なことを言った訳ではない筈だけど、二人からしたらおかしかったのか? それならそれで別になんら問題はないのでいいんだけども何か言ってくれたら分かるんだがな。無言なのは一切分からない。


「アンタ……速すぎない?」

「二人とも立てる?」

「なんで私を無視するの!!」

「何か甘いモノでも奢ろうか?」


 何か吠えている人がいるみたいだけど僕には関係ないだろう。思いっきり太ももを蹴ってきているけどもおそらくは人違いだろう。そういうことにしておいてあげた方が楽そうだな。もうすぐ最終下校時間になる訳だから__って痛いな。


 流石に蹴るのが強くなってきたから次蹴られそうになったら避けるか掴むかするか。「・・・はぁつまんないの」と言って原さんは帰って行った。おそらくは満足してくれたのだろうからよかったと思うが……一体何をしたかったのかは分からないから別にいいや。


「もしかして……たぬちゃん?」

「・・・誰それ。桜木雪菜、頭でもおかしくなった?」


 雪菜さんは原さんのことを何やら知ってそうな雰囲気だったが原さんは一切知らないという感じだった。どちらも知らないからなんでもいいのでは? と僕は思ったけど。




◇◇◇

[原   視点]


 藤咲咲人が私を無視してまで行こうとしていた所が気になってついて行ったのが間違いだったのかしら? 桜木雪菜……彼女がそこには居て彼は優しそうな表情をしていた。記憶が無くなっているって話の筈なのに、なんで彼女を見る目だけはあんなにも…………こんなことを考えるのはやめましょう。


 今の私にはユウくんという素敵な人がいるのよ。いざって時に助けてくれるし優しくて気が利くからいつまでも初恋を引きずっていてはダメよ。あぁ〜私は狐には成れないのか。狐に成れないのであれば狸になれば良いだけだ。私はユウくんを手に入れて彼を潰す。今のところ唯一対抗出来ると考えれるのはユウくんただ一人なのだから。


「悩んでいるみたいだな? 助けてやろうか?」

「竜二さん、貴方には助けられていますよ」

「それならいいが。復讐はやめるか?」

「今更遅いじゃない。しっかりとやり遂げるわ」

「そうか。だが引き返すなら今のうちだ」


 目の前にいる彼は楽しそうに「あの男は本当に容赦なく潰してくるぞ」と言った。そんなのは昔から彼らのことを陰から観て来たんだから知っているわよ。藤咲の凄さも雪ちゃんの優しさもユウくんの弱さも、私は他よりも観てきた。


 だからこそ私はこの復讐を絶対に失敗させないようにしないといけない。あの國とかいう先輩は竜二さんの力を借りても失敗したみたいだけど、そんな事には私はならないようにしっかりと計画を立てている。私が失敗するなんてことが無いように竜二さんの介入だけは阻止しないと。


 仕事柄、役を演じている人はある程度見抜けるから彼は私を騙すために何かを演じている。この洞察力は竜二さんでも分からない筈だから慎重にしておけばなんとかなると思いたい。彼が私からしたら一番警戒しないといけない対象だ。藤咲の周りで起きている事の黒幕は絶対にコイツだと思えるほどに腹の中は黒い。


「警戒するのは結構だが、周りも警戒するべきだな」

「一体何をいっ__」

「動かないでください。学校で仲良くやっている人を殺したくはありませんから」

「だから……彼に見つめられていたのね」

「もう気が付いたのか!! 流石だ!!」


 急に出てきた同級生に刃物を喉に当てられているせいで大声を出したら傷が付いてしまう。これ以上、痕が残る傷は負いたくは無いわ。しょうもない事だけども竜二さんが興奮しているところは初めて見るわね。私を拘束している彼女も驚いているみたいだし、相当珍しいものが見れたってことね。


「喜んでいるところ申し訳ありませんが気付かれてはいません」

「違和感があると思われているということか。別人なのにか?」


 藤咲に一度素顔を見られてしまったのね。それなら違和感に気付かれるわよ。彼は物覚えはかなりいい方だから何もしていなくても気が付かれるわ。いくら変装や演技をしたところで見抜かれるに決まっているわ。やる気が出ればの話だろうけど。


 彼は才能を使うのには消極的な人なのよ。ご両親や桜木雪菜が絡んでいるのであれば即使うと判断する癖に。あの時だって……気絶する前に見たのは桜木雪菜を守って血だらけになっているところだったわ。本当になんで私じゃなかったのかしら……だったら


「・・・私は死神を演じてやるわ」

「タヌキがねぇ」

「問題なんてあるのかしら?」

「いいやない」


 竜二さんのこれは問題があると言う事なのだろうが私には関係ない。死神になって死神を……討ち取ってやる。私の小さく醜い嫉妬の復讐よ。


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