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カスレで二度目の朝だ。

昨夜は歓迎の夕食会にまで巻き込まれた。

従姉に比べてパッとしない私に領主は落胆の色を隠さなかった。ってか、勝手に期待して勝手に落胆するなよ。髪の毛が不自由な癖に生意気な!

牛は牛でまとわりついてくるし…静電気防止スプレーが欲しかったぜ。

勇者は勇者で牛に対抗して構ってくるし…これは〈カレーではない何か〉を食事に振り掛けたら静かになった。その皿を食べ終わるまでは。

第3騎士団副団長とクマさんはその光景を生暖かく見てるし、勘弁して欲しかった。


ご飯は家族で和気あいあいと食べるのが好き。かしこまった食事は嫌い。

接待食が最低評価だよね。そんな昨夜の記憶は早めに消去しよう。


と言う訳で、不愉快な食事会から一夜明けた今日は市場の下見中。



やっぱり不愉快です。



朝市の見学に、勇者と牛…えーと、本物の牛じゃなくて、バカ兄ね…連れでってヤだ。

マジ、ヤだ。


両手に花ならぬ、両手に爆弾って感じ。そういえば、狙われるならTNT火薬でも作って常備しとくのはどうだろうか。町中では使えないから意味無いか。

即効性の吸入麻酔薬なんてないし、あったとしてもそんなもん運べないし、複数の相手を一気に無力化するのはやっぱり一人では難しいな。

魔力があれば手があるらしいが、私にはムリ。だとしたら護衛はいた方がいいのかとも思うが、これって目立ち過ぎてるじゃん。

主に特徴的な赤毛とか赤毛とか赤毛とか…………。

うん。赤毛が悪い。他人のフリをしたいのに、濡れ落ち葉のごとくまとわりついてくるこの阿呆を何とかしないと、私の平穏な市場巡りは有り得ない。市場巡りは結構好き。お一人様で、たまに買い食いしたりするの。妹たちと一緒もいいなぁ。ああ、妹に海を見せてあげたい。牛が危険なカスレじゃなくて、平和な海。クラーケンが泳いでたりしたら、もっと楽しいかも。



「あ、その塩焼き下さい」

『マリアンヌ。支払いは任せておけ』

『お義兄さん、ありがとう』

『お前は自分で払え!』

『将来の義弟に冷たいよ』

「『いつになってもお前は赤の他人!』」

ちっ。揃っちゃったよ。

勇者はほっといていいから、私の塩焼きの支払いしといて。

その間に逃げようかな。で、二度と会わないといいな。


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