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そんなこんなの退屈な馬車の旅もそろそろ目的地。明日には着いちゃう。
あ、ヤバい。来たくなかった場所じゃん。ああ、気が重い。ってか、毎日3食に加えて夜食までじゃ身体も重くなるわ。消費エネルギーがいつもより減少してるのに摂取エネルギーが増加してるって悪夢だ。
カスレに着いたら朝晩の鍛練を増やそうかな。絶対に運動不足になってるわ。チートならぬ身としては毎日の積み重ねが大切だもん。筋肉付けとけば基礎代謝も上がるから適正体重を維持するのが楽だし。
しかも私はパワーファイターじゃなくて、スピード重視。筋力に見合った体重の維持が必須なんだよね。力で男性に勝てるわきゃないじゃん。的確な急所狙いと重心崩しで勝負だよ。
って思いながらも今夜も試食会があるんだよね。従姉に強制的に食べさせられる…。
ああ、この世界で初めて食事に不満を持ったかもしれない。毎日のように食べ過ぎとかお菓子とか勘弁して欲しい。ため息出るわ。
従姉と同じ部屋って言うのがマズいのかな。でも、女性4人じゃ逃げようもない。
などと思ってたらショックなことに4人部屋だった。女子会メンバー勢ぞろい。先に寝ちゃお。寝ないと前途多難な明日を乗り切れない。
今日もまた馬車に揺られてお昼過ぎに最後の休憩。街が見えて……あの入り口にたむろってる柄の悪い、じゃなかった、待機してるのは…凛々しい騎士団…だよね。しかも、服から言って2つ。一つは第3騎士団。もう一つは…カスレの騎士団かな。
『さすが勇者様と来ると騎士団のお出迎えがあるのね』
キラキラした笑顔で従姉が言った。
『んーっ。でも〈カレーではない何か〉を待ってるのかも』
勇者は意外と冷静だった。
ってか、第3騎士団ってそんな組織かっ!………そうだったな。
でも、カスレ騎士団は〈カレーではない何か〉を待ってるわけじゃないよね。ああ、イヤな予感がする。
ちなみに、こんな近くで休憩するのは、身なりを整えるため。騎士団は意外にお洒落ってか、見られる立場を理解してるってか、モテたいヤツらがいるってか………。
ちなみに迎える方の準備の為でもあるらしい。ってか、儀礼的なものなんか無駄だから省いちゃえ!
拘束時間が同じなら効率的に働かせろよ。魔物も出てるんだろ。やることはいっぱいあるはずだ。こういうお役所仕事的なの大嫌い。
それはさておきカスレ騎士団の中にやたら背の高いがっしりとした男が見えるんだよね。
しかもさっきから落ち着かずにウロウロしてるのも…。
ああ、ヤダヤダ。行きたくない。帰りたい。
今からでも遅くないから、回れ右して王都に帰って妹の笑顔に迎えられたい。
でも、歩いて帰るのもイヤ。
馬車で2週間を徒歩で帰るのはムリっ!
旅行なんて二度としたくないわ!




