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勇者頑張ったな。結局一人で盗賊団の半数以上を戦力にならないようにしたし。
騎士団も頑張ってたけど、剣士のお姉さんも強いわ。
馬車の中でゆっくりお茶しながら見学してました。だってさ、魔法でお湯沸かしてお茶入れてくれたんだもん。
「いいの?」
『荒事は本職に任せるのが一番よ』
そうだね、従姉さん。面倒くさいし、町娘には関係ないし。
外が静かになって、魔術師が大丈夫だって言うから馬車から降りてみた。
盗賊団見事に捕まってるし。
そのうちの一人と目が合った。
『ひぃっ』
なんか悲鳴が上がったんだけど。
「あなた誰?」
三歩近寄って声をかけると、ソイツの顔から血の気が引いていった。
初対面で失礼なヤツ!
『マリちゃん』
勇者が気が付いて声を掛けた。
『ソイツ王都の魔物出現スポットで会ったヤツだと思う』
えーと…
「いつ?」
特に記憶に無いんだな。だってアソコはよく行くし。
『えっと………ほら、この人が倒されてた日』
勇者はロリ一号を指差した。
『もしかしてブランちゃんを攫おうとしたヤツかっ』
ロリ一号が怒り始めた。
私は全く記憶にヒットしないんだけどね。
「うーん。ごめん、覚えてないわ」
『マリアンヌ、相変わらず興味ないことは覚えらんないのね』
従姉がツッコミを入れてきた。
「とるに足りない人達まで記憶してたら、もったいないよ。その分を有効活用した方がいい」
威張って返答した。
『お…覚えて…ない?……マジで…』
あれ、盗賊団の人が虚ろな目になったけど、どうしたのかな。
「むしろ、会ったことある?って感じなんだけど、本当に妹を攫おうとしてたなら一発殴ってもいいですか?」
笑顔で言ってみた。記憶に無くても可愛い妹に危害を加えようとしたことは許しません!
『ひっ………』
もう一歩進んだら誘拐未遂犯が意識失っちゃったんだけど、なんで?
仕方ないから、起こそうと落ちてた枝でツンツンした。
『マリちゃん、止めたげて』
盗賊団でしょー。悪い人でしょー。遊んでもいいじゃん。
『その人、心折れてHP0だから』
ええーっ、まだ何もしてないのに!
『………いたぶって脅した挙げ句、覚えてもないって何気にヒドいよな』
勇者が小声でぶつぶつ呟いてた。無視しよ。
それより、心折るのはこれからじゃんね。つまんないヤツ。二度と見たくないわ!




