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夕飯の後、私たちの部屋に魔術師と剣士と勇者がやってきた。なんか勇者パーティーみたいな…町娘は不要だな。帰ろかな。ってか、帰りたい。
それぞれ夕方に買い集めた食料品を持ってる。旅の途中で生物買ってどうするんだろって思ったら、魔術師が呪文を唱えた。
『凍結』
最後に魔術師がそう唱えて、テーブルの上の食料が凍りついた。
魔法ってスゴいって思うより、前世の記憶を思い出しちゃった。SWATが踏み込んできた時に、フリーズって超怖い声で言われたっけ。
勇者に言うと盛大に誤解されそうだな。あくまでも私は被害者だ。突入の直前に拘束を解いて、立てこもり犯を3人ばかりなぎ倒したが。SWATが入ってきた時には端の方で小さくなって巻き込まれないようにしてたっけ。
魔術師は続いて呪文を唱え今度は乾燥させた。
それをお湯で戻して試食。イケるのと何ともいいようのないのとあるね。
『お腹いっぱいの時にはキツいわね』
『これで食べられないようなら商品になんないわよ』
「相変わらず商売熱心」
『せっかくの技術よ。活用しなくてどうすんの』
「商品化するには魔力の無駄使いじゃないの」
『余力のある時に作って、携帯食としてふっかけるのよ』
『それよりさ、缶詰めの方が楽なんじゃん?』
勇者の一言に従姉が食いついた。
『缶詰めって何?どう作るの?』
『金属の缶に食べ物が入ったやつでパッカンって開けるとそのまま食べられる』
『マリアンヌ翻訳して!』
「金属の器に食べ物を入れて、金属の蓋で密閉して、密閉後に処理したら、腐りにくいものができるかもね」
『もっと詳しく!』
笑みを浮かべて黙り込むと従姉は焦ったように身を乗り出してきた。
『製品化のあかつきにはいつものマージンを払うわよ』
「汎用技術だし」
『1%上乗せと前回と同額の技術料もつける』
「うーん」
『2%上乗せで技術料を倍に!』
「加熱殺菌」
『ちなみに木製とか陶器じゃダメ?』
「密閉性と破損しやすさでダメ」
『密閉性を出す方法は?』
「見当は付いてる」
『密閉した後の開封は?』
「別料金」
『相変わらずシブいわ』
どっちが?フリーズドライと缶詰めとレトルト、これらは兵糧になる。軍事技術だよ。
『どんなものが缶詰めになるの?』
これは勇者に対して。情報料ケチったな。
これでリール商会もこの遠征の費用を持った元が取れただろ。商人と騎士団が同行する理由なんてそれしかない。王はマジ喰えない野郎だな。絶対に会いたくないタイプだわ。




