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庭の草むしりをしてると勇者が来た。

相変わらず家事の邪魔だ。草むしりをやらせてもいいんだが、育ててるハーブと抜いていい草との区別がつかないだろう。

我が家が王都のはずれにある理由の一つがこの庭にある。庶民がそこそこの広さの庭がある家を持つためには仕方がない。


「で、何の用?」

帰れ!全身で表現しよ♪

『ソバ粉ができたから持ってきたよ』

「あ、そ」

手は止めない。だって、まだ半分しか終わってない。暇人と違って町娘は働かなきゃいけないんだよ。

勇者を無視して草むしりを続けた。


草むしりが終わって家の中に入ると、勇者が勝手に自分のカップを出して白湯を飲んでた。

人んちで寛ぐなよ。

自分のためにリンデンティーを入れた。摘みたてのミントでもいいんだけど、リンデンの方が好きなんだよね。

前世だとリンデンはあんまし見なかったなぁ。カモミールならどこにでも売ってたのに。うん。いい世界に転生したぜ。


一息ついたところで、恐る恐る勇者が口を開いた。

『マリちゃん、ソバ粉を持って来たんだけど』

KYだと思ってたんだけど、たまには空気読むんだな。

「さっき聞いた」

『忙しそうだったから聞こえてないかと…』

「そろそろお昼か…軽くなんか作るかな」

勇者の目が期待に輝く。コイツ本当に食欲だけで生きてるな。

テーブルの上にある卵は勇者の手土産か。これを使って…



『……マリちゃん、コレ何?』

「ハムと玉子のガレット」

『ガレ…?』

「ソバ粉のクレープと言えばわかるか?」

勇者は力無く頷いた。

『でもなんで、なんで………お蕎麦じゃないんだ…』

「前世で中食と外食をメインにしていた私にソバ打ちのスキルがあると思う方が間違い」

『……あ…』

溶けたチーズが美味い。でもコレって家族分作るのは面倒だな。夕飯じゃなくて、妹のおやつくらいかなぁ。

なんて考えながら食べてたら、いつの間にか勇者がいなくなってた。ガレットは完食して、皿も洗ってある。

意気消沈したなら、そのまま蕎麦は諦めて、いや似非日本食そのものを諦めて、で、二度と来るな!

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