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『なんかね。急に納豆巻きが食べたく…』

「そう、それは食欲があってよかったね」

海苔も米も納豆も手に入らないがな。

『納豆は身体にいいし』

「隠れ関西人だから食べなかったな」

『マリちゃんって関西人だったんだ』

「いや、生まれも育ちも関東。親も関東」

『関西関係ないじゃん』

「納豆を食べない説明が楽なんだ」

文句あるか。ないな。


『僕は納豆の作り方は知ってんだ♪』

「どんな?」

『茹でた大豆を藁でくるんでおけばいいらしい』

お前、重要な項目に気づいてない。早速ツッコませて頂きます。

「その藁はどこから手に入れるんだ?」

『えっ…』

「納豆菌は稲藁に多く存在してたと思うんだが、麦藁でもイケるのか?」

たたみかける。まだ稲見つけてないよな。

『そうなの?』

「そうなの」

勇者は沈黙した。

「同じ菌が存在するか知らんが、似た環境に存在する可能性が高いだろうな。私は発酵には手を出さないが、お前が目で見て菌がわかって腐らさせないなら挑戦は止めないぞ」

大豆の量産体制はまだ整ってない。

「但し」

『ただし…?』

「私に納豆の匂いを嗅がせたら、殴る!」

うっかり殺気が出ちゃった。

同じ部屋で誰かが納豆をかき混ぜただけで倒れそうになったことを思い出す。

『ウォッシュのチーズと似てるじゃん』

「全然違う!」

『区別つかないってか、チーズ食べてたら納豆巻きが食べたくなったんだけど…』

「全然、違う!いや、だったらチーズ食べろ!チーズは身体にいいぞ」

勇者が立ち上がってじりじりと下がっていく。

「選びに選んだ最高のチーズを食べさせてあげよう」

にこにこ。

勇者はなぜか顔を引きつらせて、首を思いっ切り横に振った。

『お、王様に呼ばれてたの……思い出した…から…行って来ますっ』

脱兎のごとく逃げ出したんだけど、なぜだ?

二度と戻って来るな!

戻ってきたら、最高にオススメなチーズを…もったいないから自分で食べよーっと。

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