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『煮詰めてきたよぉ』
勇者が意気揚々と小瓶に詰めた液体を持ってきた。陶器の瓶だからどのくらいの量かわからない。
『で、こっちが塩』
麻布の袋を一つ。まずはこちらから確認。触って舐めて。
「まだ湿っぽいな、天日干しするか」
『お塩使える?』
「うん。乾燥したらフライドポテトを作ろう」
『ヤッター!マリちゃんが珍しく作ってくれそう♪』
「油を大量に用意してね。ちょうどランプの燃料が減ってきたから助かるわ」
『えっ?』
「使った油を燃料にしてるだけ♪」
ランプないとめちゃ暗いけど、庶民には油はまだまだ貴重品。簡単料理で釣ってゲットできるなら頑張ります。
さてと、問題はにがりの方か…。ちょっと舐めてみる。
苦っ。こんな味だったっけ?
カリウム溶液の苦さなら覚えてる気がするんだけど、マグネシウムの方は記憶にないな。
まぁ、失敗しても大豆は勇者持ちだからいっか。大豆は他の豆に比べてちょっと高めなんだよね。生産量も少なめみたいだし…うーん。そのうちちょっと叔父のとこで実験?あ、でもあそこは今、蒸留酒作りもやってるから…大伯母のとこで?大伯母怖いな。忘れようっと。
さてと、次は本格的に豆腐作りか。で、豆腐なんて作ったことないな。
固まる原理を考えて。試行錯誤は勇者の仕事って感じか。
『豆腐作ったことないけど、豆だからまずは一晩水に浸けるのがいいのかな。生水は危ないから湯冷ましで』
で、勇者。なんでうちでやるんだ?
かなり水使うんだぞ。湯冷ましにするんだから、薪採って来い!水汲んで来い!
いや、むしろ二度と来るな!




