表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/235

121

武器屋に行ったら、投げナイフもできてたけど、何より折りたたみ式の棒のメンテナンスが終わっていた。

これ持ち運び便利なんだけど、一度使ったら点検と修理が必要だ。だから帰って即座に出しに行った。

普通の棒は堅い木で作るんだけど、折りたたみ式のは中に鉄芯が入ってる。伸ばした時にこれを折り目とズラして全体を真っ直ぐに保つ。

木材をくり抜いて芯を埋め込むために木が薄くなって割れやすくなるんだ。

魔法での非破壊検査と目視でヒビや歪みをチェックして、必要ならパーツ交換になるんだ。パーツの予備が無い上に制作が特別になるもんだから、修理期間も修理代もハンパない。

樫の棒に正確に深さ30cmの正円の穴を開けるために最初ボール盤を開発した。棒状にしてから穴を開けるのは難しく、大きな塊に穴を開けてから棒にする方法も試したが、やっぱりうまくいなかった。

困り果てて試作品を持って武器屋に相談したところ、そういう加工が得意な職人に任す形になった。

ボール盤はそのまま放置したが、機械制作をしたリース商会が何やら使っているらしい。詳しいことは知らない。だいたい手動のボール盤って……正確には足で駆動、とりあえず人力……固いものに不向きじゃないか。何考えてたんだろ、あの頃の私。子供だったで済ますにはアホ過ぎる。

ちなみに、正円であるにはわけがある。一度モノは試しと四角い穴にしてみたが、見事に角のところから破損した。負荷の集中する形状はムリだったという当たり前の結論が出た瞬間だ。


今は夏用の折りたたみ式を持ち歩いているので、修理に出せていた。

春秋用、夏用、冬用の3本があるのは、気温による鉄芯の体積変化があるためである。強度を出すためには芯との間にできるだけ隙間がないのが望ましい。

スムーズな動きと相反するその要求に応えた職人技に惚れ惚れし法外とも思える言い値を躊躇いもせずに払ったのは未だに後悔してない。職人もそれに応えて更なる改良をしてきてくれる。

職人さんに感謝感激雨あられって、単に私が役立たずってだけか。

〈リース商会の隠し賢者〉……賢者って単に知識だけで実務に乏しいともとれるな。まぁ、理論派と言えば聞こえはいいが、割と不器用だし、その通りかも。

勇者の脳筋を笑えないが、悔しいので今度会ったらからかっておこう。

二度と会わないのが理想だけどな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ