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神「・・・飯はまだかの?」

「でやあああああ!!」

「フッ、甘い甘すぎる!!」

 さすがは神を超えたと豪語する奴だ。俺の全力がまったく効いちゃいない。


「そのなよなよしたパンチはいつまで続くのかな?」

「それを言うならあんたのまるで老人の体操のような動きもいつまで持つかな!?」


 ――残念なことに俺達の戦いは英雄伝には描かれない。

 描く人物がいないということではなく、あまりにもしょぼすぎて。

 そうだよな。こいつは神が認めるほどの魔法を開発した。つまりは俺以上に魔法よりの性質を持っている。だからか、肉弾戦においては俺とどっこいどっこいなんだよ。


「……娘さんや、飯はまだかの?」

「……おじいちゃん、今食べてるでしょ」

「ほっほ、そうじゃったか。……ところで、飯はまだかいの?」


 駄目だ駄目だ駄目だ!

 この世界が誕生してから最も危険な世界の命運を握っている戦いのはずなのに、ギャラリーからして緊張感がない!


「ち、ちくしょーーー!!」

 こうなったら一か八か!!

 魔法を使ってやる!!


「ようやくその気になったか」

 なんでお前はあの状態でも上から目線を貫けるんだ!! 

 もうお前が神を超えたのって精神力が九割以上の要因だろう!?


「この神以上がッ!!」

「ようやく認めたか! そうだ! 私は神を超えたのだああああ!!」

 うるっせえええええ!!

 マジもんのキチガイがああああ!!




 ――とはいえ、自爆魔法がこいつに効くとは思えない。

 どこまで行っても自爆魔法はこいつが考えた魔法だ。

 俺がいくらこいつよりも使っている……かもしれないと言っても勝っている要素が経験値だけ。それも予想では勝ち目がないだろう。

 経験値だけは勝っていると思えるのは明らかにあのイカレ女のおかげだが、絶対にそんなことは言わない。言ったら、最後何をされるかわかったもんじゃない。


『――私のおかげ? それは当たり前ね。だけどそうね感謝をしているのならば身を粉にしてでも私に尽くしなさい。手始めに適当な鉱山を吹き飛ばして資金を集めてくれる。あっ、恰好はこの超絶キュートなドレスでね』


 ……うん。シミュレーションをするだけで気分が憂鬱になる。


「んっ? 隙あり!!」

「ギャアアア!?」

「フッ、目つぶし破壊魔法バージョンだ!!」

「く、クソッ! 眩しい訳じゃないのに、目が暗い!」

 何も見えん!!


「君の視界に入る光を遮断させてもらった。これで、君は物を見ることが出来ない」

 なんつー嫌な攻撃を。

 というか、こんな攻撃を仕掛ける奴がなんで無駄に戦いに応戦してるんだ?


 いやいやいや。そんなことを言っている場合じゃない。

 こいつに攻撃を当てられるのか?

 下手をしたら攻撃か魔法どちらかの概念を完全に消されて終わりなんじゃ……?


「さあ、早く来たまえ!!」

「こいつっ!」

 完全に、舐めてやがる!! ……んっ? 舐められてる?


 そうか!

 わ、わかった! わかったぞ!!


「フフッ、勝機は見えた」

「どう見えたというのかね? この完璧な私から!」


 そうだ。こいつは師匠も完全には消してなかった。

 つまり、破壊魔法を使わずに殺したということ。つまり存在を消滅させるまでもない相手と油断していたんだ。

 こいつは圧倒的な才能を持っている。

 だが、そのせいで経験が足りない。

 さっきも思ったが、こいつには実戦が足りないんだ。


 だからどんな手段でもそれを試して見たくてウズウズしている。

 俺は実験台だ。

 自分がいかに優れた人間であるかを証明するための。


 つまり、俺が何かをしてもそれを余裕を持って迎える。

 だけど俺の手が尽きるまではおそらく消滅させるなんて真似はしない……と思う。


「この魔法はお前を出し抜いた師匠が開発した魔法だ」

「……ほぅ」

「言い換えればこの魔法に負ければお前はその程度。師匠にも劣る存在だという証明になる!」

「……い、言ってくれるではないか」

 いいぞ。いい感じに挑発に乗って来た。


「そこで、だ。お前のご自慢の破壊魔法と勝負と行こうじゃないか」

「勝負? そんなもの、勝負にはならん。私の魔法は神も認めた世界を破壊する魔法だぞ!」

「おやおや~? 神を超えたと散々豪語した割には神が認めたっていうことにこだわるじゃないか~ん?」

「なんだと?」

「ははぁん、さ・て・はお前が師匠を殺したのって、本当は自分を超える才能が現れたことに対する恐怖だったんじゃないの~」


「よかろう。そこまで言うのならば受けてみよ。我が究極の破壊魔法を!!」

 かかった。

「それを待ってたんだ!!」






「世界を破壊するほどの魔法、そんなものを使うのに集中力などのモーションなしでいけるものなのか?ずっと思ってた」

 師匠は何の気なしに使ってたけど、あの人は存在がその魔法そのもの。

 手足に力を込めるような感覚で使えて当たり前なんだ。

 そう言う点ではあんたは師匠に劣る!


「そして、これはもう一人の師匠が……俺の知る最高の天才が作り上げた魔法だ!」

 天才のあんたが作った魔法を改良し、鍛え上げる。

 そんな真似が出来るのは真の天才だけに決まってる。


「信じるぜ、師匠!!」


『いいか? この魔法の原理は自爆魔法と同じだ。体内の魔力を凝縮しまくり、その上で解き放つ』

 自爆魔法だって強い魔法だ。

 あれは肉体の損傷すらも厭わずに発するから覚悟が魔力に篭もり、生命力も加えられる。だからこそ本来は破壊できないダンジョンすらも破壊する。

 まさに破壊魔法の後継に相応しい魔法だ。


『その点、これは体内で爆発的に増えた魔力が破裂する前に外に放出する。――そうすることで魔力は指向性を得て、攻撃力のエネルギーの塊となる』


『それだけでなく、最大のメリットはそうやって解き放った分魔力を蓄えるスペースが生まれ、魔法を使った後も魔力をチャージし続けられる』

 魔力は肉体だけじゃなく、自然界にも存在し、人は無意識のうちにその力も使っている。

 空になるほど放出することで空いたスペースには外から魔力が補填されていくんだ。


『究極の魔力を限界まで出し続けられる。――その名も』


「喰らえナルシスト! これが師匠オリジナル“無限魔法”だあああああああああ!!!」

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