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自爆霊「再生神ってか」

「それにしてもどうやって戻って来たんだい? 戻るにしても少しは時間がかかると思っていたよ。軽く五年ぐらいは待つつもりだったんだけどね……」

「軽くで五年かよ。……あんた師匠を随分舐めてるな。あの人はああ見えて天才なんだ」

「……天才という言葉は好きじゃないよ。自分が低くなるからね」

「そうだな。あんたともう一人は神が認めるほどの天才だもんな」

 一括りにはされたくない、か。プライドが高い奴だ。


「そうじゃないさ。僕は神を超えた存在だ」


「だからこそ、気になるのさ。あそこから出るにはそれなりに大変だと思うからね。それにあの状況は夢のようなもの。その記憶をハッキリと覚えているのにも驚きだよ」

「それについては師匠は別の見解だったぜ。あの空間は死ぬ前に見る幻。走馬灯のようなもんだってな!」

「……ああ、なるほど。言われればそうかもしれない。だったら、すぐに出て来れたのも納得だ」


「走馬灯は意識が凝縮されて時間の感覚が鈍る」

 周りがスローに見え、自分の人生を振り返る時間が与えられる。

「だから、俺はあそこで師匠に殺されまくった」

 もうあの人、一切の容赦なくやって来るんだから! 本気で死にかけたわ!


「精神の死を幾度も乗り越え、そして時間を越えて俺はお前を倒すためにやって来た!!」

 地獄を乗り越えた力、見せてやらああああ!!


「う~ん、単純すぎる」

「はぐっ!?」

 ば、バカな……!? 強くなったこの俺の攻撃をこうも容易く!


「何を驚いているのかな? そもそも君は肉弾戦での戦闘をさしてこなしているわけではないだろう? 僕の調べた限りだと初めて自爆魔法を使うまでは基本的に逃げの一手、魔法を使い出してからはそもそも攻撃を当てられないのだから悠々と準備が出来た。そして、今は戦場から離れている」

「ぐっ……!」

「そんな相手に易々と殴られると?

 ち、ちくしょう! 正論過ぎて反論が出来ない。


「加えて」

 まだあるのか!


「男の時と違って、君は女になっているからリーチも短くさらには攻撃力自体が弱い!」

 がーーーん!!

 く、くそっ! 物語とかで敵キャラが得意気に弱点を指摘するけど、実際にやられるとここまで精神的にくるものだったのか……!


「まあ弱点を挙げればキリがないんだけれど……さらにもう一点」

「黙って聞いていられるか!」

 殴れないのならば魔法を叩き込むだけだ!!


「ハアアアアッ!!」


「おっと、話を最後まで聞いてからの方が良いよ?」

「な、なんだ!?」

 集中させていた魔力が消えた!?


「ごめんごめん。話をするために少しだけ君の周囲から魔力を除去させてもらった。本格的に戦闘が始まったら使わないでおいてあげるから安心しなさい」

 安心、出来るかあああ!!


「で、最後の一つなんだけど……そもそも君は肉体から離れた霊体になっているわけだけだが、その状態で自爆魔法は使えるのかな?」

「……自爆魔法以外が使えないとは一言も言っていないぞ」

「強がらなくてもいいよ。現世での君達の行動は途中からとはいえ、観察させてもらっている。君が自爆魔法以外を習っていないことなど把握しているよ」

 魔法はもしもの時のための切り札として習ったんだ。

 別に魔法で勝とうだなんて思っちゃいない。


「さて、不満も溜まっていることだろうし、今度こそ遠慮なくかかって来なさい」





「――さっきの段階でトドメを刺さなかったこと、後悔させてやる!」

 自爆魔法は使えない。敵が言ったことを素直に信じるわけがない。


「それにしてもここは殺風景でいけない。そうは思わないかい?」

 そう言って手をサッと振るとそれだけで景色が変わる。

「どうだい? これが神と呼ばれる者の力の一端だよ」

「……神を超えた、そう言ってたが一体いつ超えたというんだ?」


「――決まっている。僕が君と同じように霊体になってここにやって来た時にだよ」


「――あの時の神はとても驚いていた」





『おぬしは!? い、一体どうやってここへ!』

『おおっ、神ではありませんか? どうしましたそのように怯えて?』

 神を支配下に置いてから知ったことだが、この時神は自分に迫る力を持つ者が自分の下へ辿り着いたことで下剋上を恐れていた。

 なんせ世界が出来てから神が認めるほどの才能を持っていたのはたった二人だけだったからね。初めての経験にさすがの神も戸惑ったのさ。


 もし、この精神状態のままだったら最近の地上から神への下剋上は幕開けと同時に終演していただろう。


 そして、神は私が霊体だと気付かずに攻撃を放った。

 私は咄嗟だった。あるいは必然だったのかもしれないが、破壊魔法を使うことに躊躇いはなかった。

 神から封印されていることも忘れていたほどに。





「そうして、私は神に勝ってしまった。神という概念を破壊してしまったのさ」

 そこからは大変だった。

 生前はわからなかった破壊魔法の新たな可能性に喜ぶよりも前に神を動かすために必要な力を求めた。だが、答えは最初からあった。

 神すらも破壊する魔法だ。

 応用して破壊という概念を破壊し、再生させる。

 再生した神からは私に関する記憶という概念を破壊し、私の命令に従うような精神状態まで追い詰めてやった。


「そこから先は操り人形として使ってやった」

 ただ、盲点だったのは神自体がそれほど使える存在ではなかったことだ。


「便利ではあるが、まるで紙のように薄い存在に修正を重ねることでなんとか意のままに操れるようになった。……一応言っておくが、君達が地上から攻撃を仕掛けた神は本人だよ」

 早々に飽きて旅に出てしまったからね。


「神を本当に紙みたいに扱ってるな」

「どうだろうね。紙よりは再利用しやすいか、民に慣れ親しんでいるという点では紙の方が便利が良いかもしれないぞ?」


「だが、それだったら再び戻って来て神を支配する必要があるとは思えないんだが?」

「言っただろ。君達と関わった時は神本人だったと。出て行くときに不要な設定は元に戻しておいたからね。もう一度洗脳し直す必要があったのさ。ただ、それも君達が変に動き回らなければ必要がなかったことだがね」

「どういう意味だ?」


「私の可愛い娘を色々利用し始めただろう? せっかく私が見つからないようにして自由に過ごせるようにしたというのに」

「じゃあ、神が見つけられなかったのは」

「目立つ行動をしない限りは認識できないようにしておいたのさ。軽く見た限りでは慎ましやかでとても紙にたてつくとは思えなかったからね。まあ、奪われた者の悲しみが理解できないのは天才の孤独ゆえだと思ってくれればいい」


「そうして神を操りに戻って来てみれば今度は娘を刺客として差し向けられたわけだ」

「別にそういうつもりじゃなかっただろうさ」

 声が聞こえるだけだったらそのままにしていただろう。

 だが、実際に神と会った人間がいて方法があったから送り込んだ。……あれ? そう考えると元凶って……。


「世界を作り変えるのにも時間がかかりそうだと思っていたらまたもやお客さんが来るし……。作業中は静かにしていてもらいたいのだがね?」

「知るかそんなこと」

 というか話を聞けば聞くほど手におえる相手じゃないような気がしてきたんだが……。


「ところでまだ来ないのかね? さっきからずっと待っているんだが?」

 チッ行きゃいいんだろ!


 なるようになるってこった!

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