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自爆霊「・・・寝てた」

「……ってことは」

「そう。君が現世で師匠と呼ぶ少女の生みの親だ」

「……へえ」

「感動が薄いな」

「いや、正直言われてもピンとこない」

 師匠が人型なせいもあるのかもしれないけど、生みの親って言われると女性を思い浮かべてしまう。育ての親とか実の親とかだったら、まだすんなり納得できたんだろうけど……。

 その違和感のせいで話の核がぼやっとしてるんだろうな。


「でーその人がなんでこんなことを?」

「お前はその前に師匠を殺されたことについてこいつに抗議しろよ」

「嫌ですよ。そんなの目の前にいるんだから自分でやってください」

「今の俺では殴りたくても殴れないんだよ」

「え~。でも、ここにいるってことはこの人も半分死んでるような状態でしょ?」

 なら、イケますって。


「いや、私は君とはまったく違う方法で来ているからね。完璧に生身の状態だよ。だから、魂だけの君の師匠では私に触れることは出来ないだろうね。本来はそうして姿を現すこともできないはずなのだが……さすがの才能と褒めておこうか」

「あっさり殺しやがった癖に何をいまさら」

「あっさり殺したのはしょうがない。私の才能に比べればあくまで凡夫の類だ」

「か~っ、これだから根っからの天才肌は」

 いや、二人とも俺からすれば嫌味な性格だと思う。


「さて、こうして時間が出来たのも何かの縁だ。聞きたいこと、言いたいことがあれば遠慮なく聞かせてくれ」


「そうだな~んじゃどうしてこんなところにいるんだ?」

「神に会いに来たんだよ」

 ふ~ん。

「んじゃ、どうして師匠を捕まえた?」

「捕まえるも何もあれは元々私の物だ。神とあの魔法が君達の下に縛り付けていただけでね」

 ふむふむ。

「こっちの師匠を殺したのは?」

「自棄になっていた時の黒歴史の抹消かな?」

 ……なるほど。


「おい、真面目に聞くつもりがあるのかないのかわからんぞ」

「黙っててください」

 少なくともあなたのことはついでです。


「――あんたの目的は?」

「世界を作り変える」


 あ~駄目だ。

 こいつはイカレてる。

 あの聖女よりもよっぽど自分中心に世界が周っていると思い込んでる。


「最後に一つだけ。あんた生きてたんだよな?」

 理由は知らないけど、生身ってことはそういうことだろう?


「ああ、生まれてこの方死にかけたことはあっても死んだことはないよ」

「なんで今まで師匠に会いに行かなかった」

 会いに行けたはずだ。

 少なくとも生きていることを知っていれば師匠はそれを望んだはずだ。


「会えない事情があったのさ」

「その程度でしかなかったってだけだろ」

 カッコつけんな。


「君にはわからない。神の怠慢が我々に何をもたらしたのか」

「わかるつもりはない」

 神がぐうたらでだらしがないのは認める。

「神を言い訳にするような奴の言葉は聞く価値のない戯言だ」


「いいだろう。そこまで言うのなら証明して見せろ。そうだな、まずはこの空間から自力で脱出して見せたまえ。百年ぐらいは待っていてあげるから」

「――そんなにいらねえよ」

 俺は人間だ。そんな長く生きられない。人間である以上は俺は人間を全うする。





「――どうやって出るつもりだ?」

「師匠は知ってますか?」

「あんだけ大見得切って他力本願かよ」

「あいつは師匠がいるのがわかっていて何も言わなかった。師匠の協力があっても出れないと思ってるわけです」


「師匠、あなたかなり舐められてますよ」


「ハッ、安っぽい挑発だな。だが、たしかにその通りだ。一度は殺されたが、その程度で俺を負かしたつもりになるなんざかなりボケた奴だ」

「では、ご協力お願いします」

「まあ、本来なら俺が出て行ってやりたいところだが、まあ後のことは生きている奴に任せる。正直死んでまで働くつもりはない」

「……生前も大して働いてはなかったじゃないですか」

「それはそれだ」

 なんでもいいですよ。協力してくれるなら。


「んじゃ、お前は気張ってブッ飛ばして来い」

「はい。行ってきます!!」





「――さて、帰ってくるまでどうやって時間を潰すか」

 とはいえ、やることは多いからな。さほど暇な時間はないだろうが……。


「そんなに待たせてないつもりだったが、退屈だったか?」

「何?」

「とっくに戻って来たぜ!」

「ぐあああっ!!」


「……やれやれ。女の子が随分乱暴じゃないか」

「あの世界にいたあんたなら俺が元々は男だって知ってるはずだぞ?」

 まあ、男だったという感覚は曖昧だが……。よく考えるとかなり惜しいことをした。もう少し本来の姿を堪能しておくべきだった。

 こっちの身体も悪くはないけど、やっぱり自分の身体っていうと男の方がしっくりくるんだよ。はぁ、短い夢だったな。


 何はともあれ……!

「さあ、戻って来たんだ。こっからが俺とあんたの出会いの場にしようぜ!」

「まるで楽しい余興のあるパーティーのような言い方だ。だが、いいだろう。君にとってはかなり不本意だっただろうから、もう一度最初からやり直してあげよう」


「――世界の最初からね」


「出来るものならやってみな!」

 あんたが師匠の親だろうと関係ない。

 俺は師匠を取り戻して自分の世界に帰る!


「例え、帰ったら嫌な女が待っていようとも!!」

 故郷に女が待っている……そんな兵士の言葉を聞いたことがあるが、何がそんなに良いのやら。

 やっぱり愛情の差かね?



「――くしゅん!」


『――まったく! サボらずに仕事をしなさいってのよ!!』


「うおっ!?」

 神と会話できるってこういうこと!?


「お叱りも受けたし、ちゃちゃっと倒してお前を止める!!」

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