自爆霊「父さん」
「ふわ~」
「おやおや随分大きな欠伸だね」
「……ああ、父さんおはよう」
「おはよう。姉の方は先に起きてお祖父さんと一緒に出掛けたよ」
「そうなんだ。起こしてくれればよかったのに」
「しょうがないよ。寝るのが遅かったからな。ゆっくり寝させておこうと思ったんだ」
「そっか。そう言えば、寝るの遅かった気がする」
昨夜のことはあんまり覚えてないんだよな。よっぽど夜更かししたのかな?
「大変だったぞ。寝ているお前を運ぶのは」
「父さん、細いからな~」
その割には結構力は強いのに。父さんにかかれば、岩なんて簡単に砕けるんだから。
そういうところは姉さんがすっごくそっくりだ。
「それにしても祖父さんと姉さんってそんなに仲良かったっけ?」
二人で出かけるなんてイメージにないんだけどな。
「そりゃあ、お前が知らない二人がいてもおかしくはあるまい?」
「そうか。俺は一番若いからな」
「そうだな。お前はまだまだ若過ぎる」
「そっか~」
若いってあとどれぐらい歳を取ればいいのかな?
「そうだな……ざっと千年ほどかな?」
「長いよ!?」
「そんなことはない。あっと言う間さ。ほんの少し眠ればいいだけだ」
「今起きたばっかりだよ!」
「そうだな。だが、もう一度寝てもいいだろう?」
「二度寝は気持ちいいからな~」
「ちょっと長い眠りにつけばいいだけだ」
「んじゃ、寝るか」
「――ああ、おやすみ」
「――寝るな!! こんの、バカ弟子がああああ!!」
「あべんっ!?」
い、いてぇえええええ!!
「だ、誰だ!?」
「誰だじゃねえわアホ!」
「えっ、へっ? ……し、師匠!?」
「……ったく、さっきから聞いてれば寒々しい家族コントをおっ始めやがって」
「ええ~寒々しいって……というか、ここどこ?」
あっるぇ~? 俺はたしかに神のいるところに来たと思ってたんだけど……?
「ここはお前らの言うところの神のいる場所。いわゆるあの世とこの世の境界だ」
「え~前来た時、こんな感じじゃなかったけど?」
「……お前、何気に修羅場潜ってるな。普通は一回しか来ないんだよ。ついでに言うと来たとしてもすぐに別の場所に行くだろ」
まあ、それは一緒にいる人間の影響だろう。
「ところで……師匠はどうしてここに?」
「お前らが帰った後に、あそこのクソ野郎にぶっ殺されたからだが?」
「えっ!? 師匠って死ぬんですか?」
「そりゃ死ぬだろ?」
「意外です」
「どういう意味だ?」
「そういう意味だと思うがね?」
「……人が話しているときに割り込むなんてほんっとになっちゃいねえな。お前、こんな風になるんじゃねえぞ?」
「いや、師匠を辞めてから師匠みたいな説教は止めてくださいよ」
しかも、そんな親が子に教え込むような感じで。
「――で? あんたは誰だ?」
「僕かい? 大体わかってるんじゃないか?」
「も――」
「――そういうの、このバカには期待しない方がいいぞ。冊子の悪さは天下一品だ」
「ふふっ、『天下』か。この天上でそれを口にするとは」
「天上? ここがか? 天上って言うなら、お前みたいな底辺が居ていい場所じゃねえな」
「……底辺? この、私がか?」
「他に……まあ、それは置いといて」
「置いとかないでくださいっ!! 今、明らかに『他にいないって』言いかけてから俺を見て言うの止めましたよね!?」
「……だったら何なんだ?」
「まったくだ」
「二人してそういうところだけ被らないで!?」
「まあ、なんにせよ……お茶にしないかい?」
「……何この食卓?」
変なおっさんと自称死人という名の師匠。その二人に挟まれて弄られる俺。
「せめて席を変えてくれ……!」
「円卓なんだ。位置を変えたところで意味はないだろう」
「そうだった!」
「……彼は本当に馬鹿なんだねえ」
「おいっ、その悲しい物を見るような表情は止めろ」
「そうなんだよ」
「師匠も肯定しないでください!!」
「……とりあえずお茶を飲みなさい」
「なんか、ムカつく……!」
「まあ飲もうじゃねえか。上手くはないかもしれんがな」
「そんなことはないさ。これでも長年研究を続けている」
「……どうでもいいんだよ」
「それで、お前は一体何者なんだ?」
「お前はまだわかっていなかったのか?」
「えっ? 師匠はわかるんですか?」
「やれやれ。名乗りがいのない相手だ」
「――私は破壊魔法を創りだした者。かつて神に会った世界の破壊者だ」




