自爆霊「師匠」
今回、かなり短め。
「はぁ、はぁ……」
ちょっとしたコツは掴んだ。
あとは、練習あるのみ……というのはいいんだが毎日毎日こうも魔力を消費すると大変だ。
「あぁ……もう、限、界」
「あっ、倒れたわ」
「本日、五回目ね」
「~~~~~!?」
――そう言えば、昔もこんな風に倒れてたっけ?
「――おい、小僧! いい加減に俺に付きまとうのはやめろ!」
「い、いやだっ! 俺に魔法を教えてくれるまでは、絶対にぜぇ~ったいに離れないからな!」
「……ほぅ? だったら、魔法を教えてやろう!!」
「えっ、ちょっ……!」
でぶっとした体型からは想像できないほどの素早さで接近され、その反動で一気に吹き飛ばされた。
そして、そのまま俺は谷底まで……。
「うわぁああああああ!?」
「魔法は見せてやった。そのままどこへなりとも消え失せろ」
「こ、殺す気かぁあああああ!?」
いたいけな子供にすることじゃねえぞ!?
というかこの時は運良く枝に引っかかったけど、普通のガキだったら死んでたからな。
「……で、なんでまた来てんだよ」
「諦めない! 今日こそ魔法を教えてくれ!」
そりゃあ、殺されかけようとも目標があるのに加えて絶対に場所を動かなかったからな。思い返せば、逃げればよかったと思うのに……。
なんでだったんだろう?
「……一応、聞いといてやる。なんでそこまでして魔法を習いたい。しかも、こんな俺から」
「生きるためだ。生きるためには力がいる」
普通に訓練をして力を身に着けたとしても、それが実を結ぶのは何年先になるか……。
それなら魔法の方が手っ取り早い。……たしか、そう考えたんだっけかな。
「……お前、いつまでも付きまといそうだな。わかった。教えてやる」
「ホントかっ!?」
やけにあっさりとした答えだった。
本当に何がしたいんだか……。
「教えてやるとは言ったが、お前に才能があるとはとても思えん。どれぐらいで習得して、魔法を使えるようになりたいのかはわからんが……数年やって一つの魔法を得られるかどうかというのが俺の見立てだ」
「そんなに!?」
「正確には、本当に簡単な魔法なら覚えれるだろう。だが、果たしてそれが実戦で使える魔法と言えるか?」
「やってみなきゃわかんないだろ!」
「いいや、わかるね。覚えておけ。戦場では最下級魔法なんぞ一切役に立たん!」
実際にその通りだった。
ファイアボールなんかは連発しやすいが戦場では敵味方入り乱れて戦っているので、そんな魔法を放とうとするものなら背後から味方を討つようなものだ。
そして、ライトのような魔法では目くらましは出来ても対象は数人。使えるとしたら、一対一の対決だが無理だろな……。
「だから俺が教えてやるのは一発逆転の出来る魔法だ」
「一発逆転?」
「そうだ。魔法を使えるようにはなる。だが、魔法を使えるが連発は出来ない。おそらく生涯一度限りの魔法だ」
「それって魔法使いって言えるのか?」
「お前は別に魔法使いになりたいわけじゃないだろう? 魔法使いになりたいなら俺みたいないい加減な男には習いに来ん。それこそ学校とかで地道にやる。……お前が目指してるのは傭兵とかの大金が入る可能性がある職業だろ」
「な、なんで……」
「生きるためなんて抜かす奴の思考は読みやすいからな」
「ハッキリ言うと、死にに行く奴に生き残る魔法なんて必要ない」
「だ、だけどそれじゃあ金が……」
「そんなもん前金で貰えばいいだろ。そういうところを探せ。俺の知り合いを紹介してやるからまあやってみな」
「は、はいっ師匠!」
こうして修業の日々が始まった。
俺は師匠の予想通り物覚えが悪くてなかなか魔法を習得できなかった。
ようやく習得できたのは弟子入りしてから五年ほど経過した頃。
そして、それを使った瞬間命を落とした。
――一度は捨てた命、だけどこれ以上無駄には出来ない。
新しい人生は俺が俺であるために……!
そのためには毎回バラバラになってるわけにはいかない。復活するためのロスタイムも減らさなければ!
「俺は、こんなところで寝てる暇はない!」
そうだ。使う度に力をチャージするのは割に合わない。
使わない分も一緒に、別々にチャージすれば……!
イメージする。いくつもの弾を装填し、一つずつ使う。
ただ、威力は強く。強く強く!
「うおおおおおおっ!!」
吹き飛べ!
そうして、魔法は完成した。




