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NO,THANK YOU!!  作者: 伍代ダイチ
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8.後天的超能力―6


 変装は、完璧だった。DNA情報まで完璧に変化させ、事前に触れた人間に変わる事が出来る超能力である。だが、欠点も存在する。それは、超能力者に変装しても、その超能力者が持つ超能力を使えるようになりはしないという事。あくまで姿形のみなのである。

 だが、この超能力はイニスのその力の様に、不意打ちという面での攻撃力が高い。イニスの透明化とは違い、相手の信頼を勝ち得ている人間へと化ければ、正面からの不意打ちが可能となる。そんな、超能力である。

 今回、典明達を一気に無力化出来たのも、そのためである。実際の戦力では、典明達の方が遥かに高い。

「よろしくな、二人共。さぁ、NPC日本本部に一回向かおうか」

 四十万のその言葉に二人は頷くしかなかった。NPC日本本部で、一旦分かる情報を整理し、皆に拡散させて、典明達に対する警戒も強めなければならない。そして、狙われている蜜柑の護衛も考えなければならない。

 そのまま、三人で典明達がどうなったか確認はせず、四十万が隣町に来るために使ってきた車に乗り込み、そのままNPC日本本部へと向かった。相川高校に着く頃には日が沈みかけていた。が、季節が季節だ。まだ明るかった。

 NPC日本本部に戻った三人は四十万を先頭に、そのまま小さな会議室にて情報を整理して、執行部に今回の情報を回し、そして、海塚に蜜柑の護衛の話をつけてもらった。

 決まったのは、一人目。四十万美緒。その超能力を使って遠くもなく、近くもない距離から見張れ、という事なのだろう。だが、彼女だけでは戦力が足りない。そう考えた海塚は典明、香宮、林檎の三人に対抗できる戦力を彼女につける事にした。

 三島幸平。

 現在恭介と桃の登場で目立たなくなってしまっていたが、恭介と桃に次いで、幹部格候補である。

 その超能力は。





    43





「私って遠出、あんまり好きじゃないんだよね。実は」

 NPCの部下が運転する車の後部座席に琴と桃がいた。琴は外に見える武蔵野市辺りの景色を眺めながら不意にそんな事を呟いた。当然、隣にいる桃が反応を見せる。

「そうなの? あ、アレ。やっぱり千里眼が?」

「そうそう。結構遠くまで見ようと思えば見えちゃうからね。千里眼。なんだか遠くにずっと見えてる景色が段々近づいてくるってのがあんまり好きじゃないんだ」

「でも、普段からずっと発動しているわけじゃないでしょ?」

「そりゃそうだけど、一応警戒の意も込めて何もない時でも結構使ってるからね。なんだろうねぇ」

「なんだろうねぇ」

 二人が今、向かっているのは新宿だった。二人の任務は煤島礼二と霧島深月の確保、護衛である。新宿にて、霧島深月と会う予定をつける事が出来た。アポを取るのは容易かった。霧島雅の姉だという事から同姓同名がいようが個人を特定するのは簡単だった。そこから連絡先を取り出すのは更に容易い。住所から職場、ありとあらゆる個人情報が簡単に出てきた。

 連絡を取り、超能力の名前をちらつかせれば彼女は会う、と即座に場所と時間を指定してきた。

 あまりにすんなりと話が進み過ぎて琴達も驚いたくらいだ。相手の反応から、やはり超能力を探っていた、とは気付けた。好都合だ。

 数十分で新宿へと到着した。霧島深月が指定したのは、新宿駅東口から近い個室のあるちょっと高めの喫茶店で、その中の個室だった。

 到着した二人が受付で霧島深月の名前を出すと、上の階の個室へと案内された。そこに入ると既に人影が一つ。やはり、見覚えのある影。制服姿ではないが、顔に見覚えがあった。

 霧島深月で間違いがない。

 二人が入ってきた所で、霧島深月は椅子に預けていた腰を持ち上げて、深く一礼した。

「会うのは……二回目でいいのかな? 霧島深月です」

 言って、顔を上げて、二人を見て、

「あの時の男の子はいないんだ?」

「あぁ、きょーちゃんは今外国で修業中だからねぇ」

 さて、と本題。四人席に三人は腰を下ろす。当然霧島深月の前に二人が座る事になる。まずは、と適当に注文をし、メニューが揃ってから話を始める。

 切り出すのは琴だった。

「霧島深月さん。貴方の上司に煤島礼二さんがいますね?」

「うん。いるよ? 彼がどうかしたの?」

 桃が続く。

「その煤島礼二さんと、あなた、霧島深月さんの二人をNPCに連れていくのが今回の任務なんです」

「NPC? 任務?」

 知らない単語に霧島深月が首を傾げたため、琴が説明をする。

「NPCっていうのは、私達が所属する超能力の団体です。超能力を悪用する人間と秘密裏に戦ってます。貴方と出会ったあの時も、NPCの任務の一環でした」

 言われて、なるほど、と霧島深月は納得する。

「えっと、じゃあ、勝手な推測だけど、NPCの任務を決める様なお偉いさんが、私と課長を呼んでるって事なのかな?」

 二人が首肯する。

「そういう事です。だから、今が無理なら煤島さんは後にしても、とりあえず今日は、深月さん、あなたにはNPC日本本部に来てもらいたいと思ってます」

 琴のその言葉に、霧島深月は即座に頷いた。

「うん。私も、イロイロ知りたい事があるし、訊きたい事だらけだから。この前の一件から、超能力って存在を認識し始めて、ちょっと、ねぇ」

 そこからは早かった。待機させて置いた部下を呼び戻して車を持ってこさせ、カフェを出て車に乗り込み、そのままNPC日本本部へと向かった。移動中の車中では会話はあったが、女子三人が日常的な会話を交わすだけだった。敢えて、この場での超能力の話をするのを避けていた。

 二時間弱を要してNPC日本本部へと三人は到着した。三人はそのまま真っ直ぐ、海塚のオフィスへと向かった。

 海塚はすぐに霧島深月を受け入れた。握手を交わし、挨拶を交わし、名刺の交換なんてものはなかったが、これだけで十分だった。海塚は琴と桃に今日は休んでよいと伝えて、霧島深月と二人でオフィス内の小さな接待スペースで向かい合って腰を下ろした。

 話を切り出すのは当然、海塚だ。彼女を呼んだのは彼なのだから。

「訊きたい事は分かっている。両親の件だろう」

 その言葉に、霧島深月は驚かなかった。それについての話が出てくるとは思っていた。そもそも、それを訊きにきたのだ。それに関する情報を訊きにきたのだ。彼女が超能力に興味を持つ理由はただ一つ。両親が殺された件についての事である。

 霧島深月は頷いた。

 ここに来たのは正解だ、と海塚は続けた。

「ハッキリ言おう。君の探している答えを私は知っている。煤島礼二と君を連れてくるように言ったが、その目的は一つではない。煤島礼二には君のそれとはまた別の件で話がある。行きつく所は同じだろうがな。それで、君には、全てを話した上で、警察として、我々の連携者になってもらいたいと思っている」

 そのまま海塚は連携者や事細かな事情と目的の説明をした。

 そしてすぐに、本題。

「まだ私が幹部格だった頃だ。零落希美という女が幹部格にいた。零落希美はある日、ジェネシスに手を貸すある一族を殺すように任務を受けた。幹部格が受ける任務だ。相手は強大な力を持った一族だった。そうだ、君の両親の事だよ」

「って事は、零落希美っていうのが……」

「そうだ、君『達』の両親を殺した人間だ」

 海塚は何かを感じ取る様に僅かに俯いてしまった霧島深月の反応を伺いつつ、続けた。

「彼女は当然、超能力者だ。その超能力につけられた名は『不死鳥フェニックス』。名前から連想できるかもしれないが、『炎』の系統の超能力だ」

 炎。その言葉は、霧島深月を確信に迫らせた。

 両親が殺された際に自身は現場にはいなかった。ただ、燃え盛る家と既に救助された妹を見ただけだった。当時、妹の口から訊いた言葉を思い出した。その言葉はずっと思い込みによる幻覚めいた何かだ、と否定してきたそれだったが、今、それは現実だったのだろう、と思った。

 突如として自身を襲う悲壮感や責任感に苛められながら、霧島深月は顔を上げた。

「その、彼女が、私『達』の両親を殺したんですね」

 力強い眼光が海塚に向けられた。確認する様に、海塚は首肯。だが、ただ肯定するだけで終わりはしない。全てを説明するつもりだった。

「そうだ。殺した。それは間違いない。霧島雅がNPCに対して零落希美の名前を出したと聞いてから、調べたら記録があっさりと見つかったさ。それに、私も訊いた事のある事件の話だったし、揚句、それは記録的な問題にもなったからな」

「問題?」

 眉を潜める霧島深月に、海塚は、あぁ、と続けた。

「零落希美はその圧倒的な力で容易く君達の両親を退けた。だが、その直後、問題が発生した。それが、超能力の暴走」

「超能力の暴走……?」

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