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NO,THANK YOU!!  作者: 伍代ダイチ
NO,THANK YOU!!
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5.臨戦態勢―11

 零落がおねえちゃん、と呟いたあの消える事のない炎の塊は、超能力が発現して暫くして、その炎が消えなくなってしまった、零落希華の姉、零落希美。その人である。

 彼女は最初の内は『獄炎』としてこのNPC幹部格のとして、零落希華と共に仕事をしていた。任務に一緒に出る事は限りなく少なかったが、確かに一緒に仕事をして、過ごして来ていた。一部の人間は、その頃はまだ、零落希華は明るかった、と言う。

 とある任務で、彼女は現在の状態に陥った。激しい戦闘があった任務。彼女は力を使いすぎたのか、それとも、そうなる運命だったのか、彼女の炎は、消えなくなった。

 故に、あそこに閉じ込められている。閉じ込められていた。自ら望んだ事だった。

 この様な超能力に飲まれた人間の状態を、『暴走状態』と呼んでいる。連中をここまで運んだのは、能力が故、郁坂流である。こんな場所でもなければ、連中はその存在すら許されない。殺して、その超能力ごと消さなければ、一般にまで驚異が及んでしまうからだ。

 だから、流の超能力を使ってここまで運び、ここに封印したのだ。連中も、ずっと流と一緒にいるわけにはいかないし、流だって睡眠を取る時もある。

 そんな中にいる、燃え続ける『不死鳥フェニックス』が、零落希美。そうだ、霧島雅の狙う、目標だった。




    24




 時間はあっという間に流れた。恭介達は明成高校にも大分慣れて友人も沢山作った。作れた。相変わらず香宮と恭介に琴は嫉妬し続けていたが、それは大した問題ではない。

 相川高校の方は、修復も大分進んできていた。恐ろしい程に早い速度で修復は進んでいたが、年内に戻れそうにはなかった。多めに見積もっても、来年になるだろう。もしかすると、恭介達の学年が上がってからだろう、という事だった。

 それでもNPC日本本部に立ち入る事は可能なため、特別な問題はなかった。

 十二月二三日。夜。

「明日はクリスマスイヴだねぇ」

 NPC日本本部。休憩室。その一角に、恭介と桃、琴はいた。

 桃はそんな事を呟いていた。その呟きを訊いて、二人もそうだ、と思い出したようだ。

 だが、そんな事より、恭介には心が惹かれる事がある。

 当然だ。明日十二月二四日。クリスマスイヴ。恭介のあの家が、ついに戻ってくる。八月の最後に燃え盛ったあの家が、ついに復活したのだ。四ヶ月は、あっと言う間に感じた。引越しように荷物は既に移動はしてあるが、明日が入居日なのだ。

「そんな事より、俺は家の方が気になってる」

 恭介が素直に言う。そうだ。引越しとなれば誰もが心を躍らせるだろう。大人に限らず、子供であっても。

「そうだよねー。っていうか、きょーちゃん明日からお隣さんだね」

 琴のテンションが上がってきていた。

「戻ってくる、かな。私から言えば」

 桃が首を傾げていた。

 引越しの荷物の運び入れ自体は終わっているため、今日は流もNPC日本本部にいる。奏は早めに切り上げて帰って大介達の世話をしている様だ。

 時刻は二一時前。恭介達も明日もあるし、そろそろ帰ろうか、と話を初めて立ち上がった所だった。

「きょーちゃーん。明日、デートしよ!」

 琴が、言った。言ってしまった。桃がハッとしているが、そして、琴はその桃の様子にも気づいているが、敢えて気づかない振りをして、無邪気な様子で恭介に抱きついてきた。

 抱きついてきた琴を引き剥がしながら、

「明日は引越したばかりで忙しいんだよ」

 と恭介が言うと、

「そーだよ!」

 と桃が便乗した。どうやら桃は、琴と違って引越しで忙しいだろう、と思って誘うのを我慢していたようだ。

 む、と膨れる桃を琴はやっと見て、あはは、と笑いながら、

「そーだよねぇ。ごめんごめん」

 と言って恭介から自ら離れて、

「じゃあ、二五日はどうでしょうか!?」

「考えといてやる」

 恭介が冗談混じりにそう言った――時だった。

 ブツン、と嫌な音がした気がした。同時、辺りが真っ暗になった。

 休憩室にいた恭介達以外のメンバーも、皆、が停電か? と騒ぎ出した。

 だが、そんな言葉が増えるよりも前に、電力は戻った。数秒程だっただろうか。数秒間の停電、明かりが付くまでで、変わった事はただ一つ。琴の、視線の位置だった。

 琴の超能力千里眼は、その超能力によって全てを見通す。それは、例え周りが暗闇で、普通の視界が消えていようが、だ。

 琴が斜め上を見上げていた。恭介が視線を辿っても、見えるのは照明と天井のみ。その先までは見えない。だが、琴には見えていた。そして、その琴が表情を歪めていたのが分かった。

「何かあったのか!?」

 察した恭介がすぐに訊いた。が、琴が応えるよりも前に、音が、響いた。

 受付、エントランスの方だった。続いて悲鳴が聞こえてきた。その悲鳴は甲高く、聞き覚えがあった。一番にその悲鳴に反応したのは、当然恭介だった。

「エレナさん!?」

 恭介の言葉で全員が察した。受付で何かがあったぞ、と。そして琴は、学校で何かがあった、と気づいている。

 恭介が真っ先に外へと出て、続いて琴達も、皆が通路へと出た。通路を駆け、エントランスへと出ると、壁にもたれかかって倒れているエレナを見つけた。頭から血を流していた。恭介はすぐに駆け寄った。

「大丈夫ですか!?」

 意識はある様だ。抱えてくれた恭介を見上げ、言う。

「……早く、こっちへ……」

 そう言って、エレナはエントランス右の扉を弱々しく指差した。

「分かりました。エレナさんはここで大人しくしててくださいよ!」

 そう言って恭介が、扉に入ろうと立ち上がった時だった。そこで、やっと気付いた。たった一瞬だったはずだった。恭介達が休憩室からここまで来るのは。なのに、なんなのだ、この、受付の荒れ用は。

 受付はぼろきれの様な状態になっていた。恭介に続いて受付に来ていた人間も皆、その光景を見て驚いていた。あちこち破壊され、壁や床は穿たれ、照明も一部破壊され暗くなっていた。カウンターは真っ二つにされ、吹き飛ばされていた。

「……練習所。だね」

 嫌の予感しかしない、そんな表情で琴が呟いた。琴の呟きに反応して、皆が右の扉へと入り、真っ直ぐ一直線に進んで練習場へと向かった。走っている間も、恭介は嫌な予感しかしなかった。

 全員が練習場に入った。そして見えてきた光景は、と、認識する瞬間だった。

 全員が、全員。吹き飛んだ。左へ、右へ、中央超えて練習場の最深部へ。全員が、『その中』に、謎の力、あるいは超能力で詰め込まれた。練習場の最深部、そこには、NPC日本本部内にいた人間の大勢がいた。そして、そこから動くことは出来なかった。いや、正確にいうなれば、数歩は動けた。だが、一定から先に、進む事が出来ないでいた。

「なんだこれ!?」

 恭介達を囲んでいるのは、半透明のバリアだった。練習場の最深部を隔てるように、謎の力によって作り出されたバリアの中に閉じ込められてしまっていた。

 そして、練習場の中央。そこに、一五人の姿があった。当然、恭介達はすぐにその連中に気づいて見て、更に気付く。その中にいる、見知った唯一の顔に。

「霧島さん!」

 バリアに突っ込み、恭介は叫んだ。恭介の中で渦巻いていた嫌な予感が更に膨れ上がった。その物理的に恭介達の進行を防ぐバリアを叩きながら、恭介は睨んだ。一五人の中にいる見知った顔を、だ。

 霧島雅は、一四人を置いて、進んでバリアの手前、恭介の目の前まで進んできた。

 バリアの中に閉じ込められているNPCメンバー四○名程の全員が、一気に軽快した。そんな様子を視線だけ動かして見た霧島雅は、恭介に視線を戻して、言う。

「このバリアは物理的な移動を絶対に許さない。それに+して、超能力の干渉を許さない。それは、中からも、外からも。だから、その中にいる間は、互いの攻撃は一切通用しない。だから、大人しくしていなさい」

 それだけ言って、霧島雅は一四人の下へと帰っていった。

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