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NO,THANK YOU!!  作者: 伍代ダイチ
THANXX!!
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15.再始動―8

 純也の言うとおり、問題は有り余る程にある。超能力が発現したばかり、というのはとても面倒な状態である。上手く力のコントロールができず、危険な状態に陥ってしまう場合が多い。あの佐倉でさえ、最初はあちこちに身体を接着してしまい、面倒な事になってしまっていたのだ。

 そのための、指導が出来る場所が必要だ。その後、特訓する場所が必要だ。そして、『超能力の暴走』をどうにかする場所も必要になる、と判断している。

「そうだな。今はとりあえず、人員の確保、それに伴う組織の拡大、アジトの場所探し、って感じだな。任務をこなしつつにはなるだろうけど、頑張るしかないか」

 流の言葉に、全員が頷いた。

 忙しいと言っている暇はない。ただ、止まるわけには絶対にいかない。






     31






 雪景色が目立つ様になってきたのは二月の始めの頃だった。この頃になると東京でも雪が降り積もるようになってきて、都内の電車が止まる日も増えてきた。

 電車通勤のサラリーマン達が悲鳴を上げる中、流達は少しでも落ち着ける日々を過ごしていた。敵も人間だ。車すら走らせられない日はやはり落ち着くのだろう。この季節もまた、超能力社会の少しだけ落ち着く季節なのだった。

 流達NPCは少しずつだが、勢力拡大を成功させていた。主に小規模で同意義を持つ組織の参加や、個人、フリーで活動していた、若しくは潜んでいた超能力者達を参加させていたのだ。

 場所は選ばなかった。そのために、広い範囲でNPCの活動を宣伝する事が出来ていた。

 流の名前も相まって、あっという間にNPCの名前だけは、超能力制御機関並に広がっていった。

 だがまだまだ、人数が足りない。

「メイリア……。誰だソレ」

 リビングにて寛いでいた流に、純也が資料を手渡した。それに目を通した流は眉を顰めてそう呟く。

「サンフランシスコ出身の超能力者みたい」

 流は聴きながら、資料をめくり、読み進める。

「今、日本に来てるんだって。向こうの超能力組織は日本よりは表に出てるみたいだから、情報収集は結構簡単だったよ。ま、メイリアがそれくらい向こうじゃ有名な超能力者だっていうのもあったけど」

「有名なのか。理由は……っと、複合超能力者か」

 純也は頷く。

「うん。それ。あと見た目ね」

「見た目……?」

 読み進めていたページを戻して、最初のページに書いてあった年齢や身長等のプロファイルを見る。

「ずいぶん小さいんだな」

「そうだね。容姿も向こうの人にしては幼い見た目だし、それで複合超能力者だからね。アイドルみたいな理由でも名前と容姿が売れてるみたい。当然、ほとんどの人間が手を出せないだろうけど」

「ほー。どこにいるんだ? っていうかなんで日本に」

「都内にいるみたいだよ。ホテルの場所は江戸川区だけど、主に新宿辺りでうろついてるみたいだね。SNSとかで話題になってるよ。愛想も良いみたい」

 そう言って純也は携帯電話を取り出して、画面に写る写真を見せた。誰かが撮ったであろう、カメラに向かって健気にピースをしている女の子が写っていた。

(人形みてぇだな)

 そう思っても、これで流と数個しか年齢の変わらない女の子なのだ。

「目的は?」

「さぁ、そこまでは。でもまぁ、なんか目撃情報とかだけを漁って見てみると、本当にただの観光っぽいけどね。それは一応引き続き調べておくけど、期待はしないでね。多分流が会って直接聴いた方が早いんじゃないかな」

「そうか……、」

 そうして、嘆息。

「ま、少し早い様な気はするが、海外に名前をおけるってのも悪くないか。交渉しだいだろうが」

 資料を読み進めて、気付く。

「ん? このメイリアってのは、これだけ名前が売れてるっていうのに、フリーなのか」

「そうみたいだね。売れてるから、かもしれないけども。日本に来てもらうってのもありかもよ。そこら辺は全く知らないけどさ」

「あぁ、とりあえず会ってみる……っていうか、探して見るさ。ありがとな。続けて暇な時で良いから、情報収集を頼む」

「おっけー。任せてよ」

 新たな、出会いが待っていた。

 メイリア・アーキ。彼女は超能力者だ。それも複合超能力者で、所属はなし(フリー)である。が、名前が売れている通り、その実力は本物で、向こうでは向かう所敵なし、という話しまであったのだ。更に、彼女の向こうでの行動を総評すると、やはり、流達と同様で、超能力を悪用させない、という建前が出てくる。

 見つけるのが、一番の問題だろうな、と思って出発した流を、襲った面倒は、結局、そこではなかった。

 数時間後の事だ。流が携帯電話でSNSの記事を追いながら、メイリアを探して新宿へと降り立ったのは夕方だった。電車が遅延していた事もあり、想定していたよりもずいぶんと遅く着いてしまったのだった。

「……日が沈んでるな。いや、そもそも雪で日なんてまともに出てないんだけどさ」

 駅に降り立った流はそうぶつぶつと呟きながら、携帯でメイリアの話題を探している。

 思いの外、メイリアの現在地は素早く見つける事が出来た。

「……近いな」

 劇場前。向かって見ると、そこまで多くはないが人だかりが出来ていた。

 人だかりには隙間なんてほとんどなく、その中心にいるであろうメイリアの姿は彼女の低身長っぷりも相まって全く見えやしなかった。

 人混みの外から、背伸びして先を見ると、顔の上半分程度はちらりと見えたが、そこから先は見えないし、声を掛けられる程の距離に近づけやしなかった。

 仕方ない、と流は脇に捌けて、人だかりが解消されるまで待った。

 メイリアを見つけた時点で街頭が点いていた。既に時間は夜という夜になっていた。雪も降り始めて、寒さがより身に沁み始めていた。コンビニで買った暖かい飲み物を両手で包んで時々啜るように呑む作業を繰り返し、空になったそれを買ったコンビニ店内のゴミ箱に設置して戻ってくると、人が捌け始めたのをやっと、確認した。

(芸能人かよ。一時間近くも囲み作りやがって……)

 メイリアの姿が見えてきた。海外ドラマや洋画でしか見たことのないフーディローブをまとってその全貌は隠している。小走りで雪の中を進んでいくその小さな影を流は追う。

 が、追われる事に気付くのは、超能力者だからこそ。

 メイリアは急に建物と建物の間の細い路地に飛び込んだ。

「しまった」

 と呟いたのは当然流だった。声をかけるタイミングを見失い、つい癖で追ってしまったため、それにメイリアが気付いて逃げたのだ。

 即座に流も追って、路地の中へと飛び込んだ。

 が、目の前に影。見下さなければ気付け無い程の小さな影だ。

 再度、同じ事を呟こうとしたが、遅い。

 斜め下から突き上げるような掌打。一気に浮き上がる様な素早すぎる攻撃に流は防ぎようがない、と気付く。

 一撃は、流の胸元にヒットして、流れる様に顎をも突き上げた。が、流は顔を持ち上げるように状態を逸らして顎を砕かれる事だけは、避けた。が、それによって体制を崩した流は隙だらけだ。当然武器を取り出す余裕なんて一切ない。

 そして、相手の動きは対照的に、一切の隙がない。完璧だ。小さい身体を完全に駆使した、恐ろしい程に早く、正確で、且つ、威力を増すための動きが織り込まれた攻撃だった。

 だが、戦いに来たのではない。

「ま、待って、待った待ったッ!!」

 今までで一番間抜けだったと流は両手を上げて、そう叫んで、思って恥じらいを感じた。

 メイリアの動きはそこで止まった。流れるままに攻撃しなかった辺りがプロの装いを見せている。

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