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NO,THANK YOU!!  作者: 伍代ダイチ
THANXX!!
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12.遅効性毒素―7


 それは、初撃で判明した。

 ナイフを片手に、周りの戦闘を一切無視して成城がNo.7へと突っ込んだ。

 No.7は未だ、成城をただの超能力者程度にしか見ておらず、突っ込んできてそのまま朽ち果てろ、としか考えていなかった。

 が、しかし、

 成城のナイフがNo.7の胸元に突っ込んで、そして、判明した。

 ナイフが朽ち、砂の様になって成城の手から消え去る。が、判定は同時。

「ッ!?」

 成城の胸元、服が裂け、そして肌が裂けた。

 思わず、No.7も後退した。そして、成城を、戦える超能力者として、見た。

(ナイフは確かに朽ちた……が、なんだ、この超能力!?)

 傷は浅い。だが、いつぶりかも判断出来ない程久しぶりに、傷を負ったのだ。当然、それだけの脅威として、彼女を見る。

 切創。聴けばわかるが、聴かねば判断のしづらい、少し特種な超能力である。あるが故、No.7にとっての脅威となりえた。

「いけるっ!!」

 わけがわからなかったが、攻撃が通用する事がわかった。

 成城は上着の内側に並べたナイフを再度一つ取り出して、構え、そして、後退したNo.7へと真っ直ぐ突っ込む。

(来るッ!?)

 当然、警戒した。ナイフ自体の攻撃は全く意味をなさないにしても、切創の攻撃を受けてしまう。どこまでの破壊力があるか想定は出来ないが、一撃必殺を警戒して、攻撃を避けるのが懸命だ、と判断した。

 が、しかし、攻撃を躱す事にも、技術がいる。触れるだけで勝利してきたNo.7と、どうしても体術を使わざるを得なかった成城とでは、近接戦闘での力量の差が目立つ。

 攻撃を見切り、避けようとした。が、成城のナイフは腹部を掠め、消失しつつ、腹部に切創によるダメージを与える。

「ッ!!」

 飛ぶ。No.7は警戒して一気に成城との距離を一気に取ろうとする。が、成城はそれを許さない。No.7が後退したと同時、新たなナイフを取り出しつつ、No.7との距離を詰めていた。

 そして、三撃目が叩き込まれる。

 ナイフが一つ減り、No.7の左肩に切創が浮かぶ。

 が、この三撃目で、互いに気付いた。

(浅い傷しか作れないみたいだな。影響腐食でナイフが触れた瞬間に朽ちるからか……?)

(この傷が、限界……!! それに、触れたら多分、死ぬ)

 形勢逆転。いくら体術技術的にNo.7が劣っているとしても、傷を負う事さえ恐れなければ、彼の力が圧倒的なのは明らかだ。

 今度は成城が後退する。が、No.7は真正面から堂々と成城へと突っ込む。

 が、油断していた。形勢逆転した、と思い込んだからこそ、まずかった。

 超能力制御機関のメンバーだって、決死の覚悟でここまで来ている。死んでも、勝つんだ、という気迫を放っている。それに、気付けなかったNo.7の致命的なミスである。

 No.7の右腕が、成城の左腕を肩からもぎ取った。が、同時、成城の切創は、No.7の額から左目にかけて、発動していた。

 皮膚の薄い額が裂け、血が溢れだす。それどころか、左目の角膜表面が裂け、中の液体と、それに近い何かが溢れだした。

「ッがあぁああああ!?」

 影響腐食のステージ7には欠点がないと言っても過言ではない。だが、No.7も人間だ。人間であるが故の欠点は、誰にでも存在する。

 咄嗟に後退しなおした。成城は腕をもがれた勢いでその場で腰を落としてしあう。

 見上げた。後退したNo.7の額からは血が溢れだし、顔を、服を真っ赤に染め上げている。左目を潰した事もわかっていた。

 だが、そこまで、だ。

 額は皮膚が薄く、浅く切れただけでもそれなりの量の血を流し、致命傷に見えて一切危険な状態ではない。ただ、派手な浅い傷を負わせたまで、だ。左目を潰した結果は大きいが、それも、致命傷ではない。この戦いから逃れて、しっかりと医者に見てもらえば回復はなくともその後の心配はないし、一般社会に生きていれば障害者年金までもらえる。

 つまり、命をとれていない。

 つまり、成城は、負けたのだ。

「こ……この。このッ!! くっそアマがァアアア!!」

 No.7が静かな怒りを口にしつつ、真っ直ぐ、一直線に、余裕を感じさせない程素早く、成城へと迫った。

(あーあ。もっと、イロイロやりたい事あったんだけど、なぁ……)

 成城も、わかっていた。負けた、という事実に。

 勢い良く、血を振りまきながら走ってきたNo.7は、怒りのまま、勢いのまま、詩夏を真正面から蹴り飛ばした。

 腹部から、足は突っ込み、そのまま縦に上がる様に、詩夏の身体は、肩を腰を横っ腹の皮だけでつながったその死体だけを残し、消え去った。

「詩夏ちゃんっ!!」

 近場で戦っていた仲間がそれを見て、泣き、叫び、復讐だ、とNo.7に突っ込んだが、動きもしないNo.7にぶつかり、灰と化して部屋の空気中に消え去った。

 血塗れの、見た目若い男が、怒りを宿して、この場に立つ。

 傷を負うまでは、適度に演出をして、超能力制御機関のメンバーの数を減らし、その後リアルのメンバーの数も調整する様に減らそう、と考えていたが、もう、遅い。

「皆殺しだ……!!」

 全員まとめて、殺す準備が出来上がった。

 それを聴いた、数名は、即座に逃げ出した。が、当然、戦争中だ。二つの勢力はどんな状況でも敵の油断を狙って攻撃をしかけようとする。

 大勢が、この広いフロアで死ぬ事になった。

「なんだこれは」

 その後の光景を見るは、遅れてこの場に到着した流、奏、そして途中で合流出来た三平や超能力制御機関、ディヴァイドのメンバー総勢九名だった。

 広いフロアだった。が、辺りには叩かいの後と少しの死体があるだけで、何もない。だが、違和感があった。足りない、という、圧倒的な不足を感じさせる違和感だった。

「何か、様子が変だな……」

 三平が眉を顰めて辺りを見回す。

 一見して変な箇所はない。だが、違和感があった。

「敵がいないならいいっすよね。先に進もうよ。戦場だし」

 流が冷たく言い放つ。が、誰よりも誰がここで死んだのか、気にはなっていた。

 結局、このフロアでは何事もなかったかの如く、九人は部屋を出る。出た、所で、傷を負い、血塗れでよたよたと歩いている三城の背中を見つけた。

「三城さん!!」

 流が叫び、流と奏が真っ先に駆け寄って、肩を貸してやった。

 三城は、あの時、No.7の戦いから、なんとか逃れる事には成功したのだが、逃げざまに、背中に攻撃を浴びてしまったらしい。

 致命傷ではない事だけを確認し、何があったのか、一度立ち止まって九人は彼女の話しを聴いた。

 そして、見た限りで、誰が死んだのかも、敵がどちらに向かったかも、全て聴いた。

「……例の奴だな。俺が殺す」

 聴いて、流が立ち上がる。

 神流川村に残っている非戦闘員からの連絡で、聴いていた。零落家現当主零落優流か、郁坂流のどちからでないと、零落家前当主が勝てない、と判断した敵がいる、と。

「一人で大丈夫かい?」

 三平が問う。自分が付き添っても、役に立たないと分かった上での問いだった。流は当然頷いて返した。

「勿論。触れるだけでマズイ超能力者で、挙句ほとんどの攻撃も通じないって前情報があるからね。この刀が折れない限りは、俺が戦うのが一番でしょう」

 そう言って、腰に落としている鞘を叩いた。

 奏と向き合い、

「後で合流しよう。絶対に死なないからな」

「うん。絶対に死なないでよね」

 流は一人、団体から離れて、フロアへと戻った。

 そんな流の背中を見送って、三平はディヴァイドの一人に三城を外に避難させろ、という指示を出し、隊を離れさせた後、覚悟を決める。

「人は少なくなったが、止まっていられない。先を急ごう」

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