表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NO,THANK YOU!!  作者: 伍代ダイチ
NO,THANK YOU!!
24/485

2.兄弟―9


 恭介は一度も地面に付くことなく飛び、背後の壁にぶつかってやっと、その動きを止めた。恭介は顔面に走るい痛みに耐えながらも、すぐに起き上がる。

「恭介くん!」

 琴がすぐにカバーに入る。背後から一気に詰め寄り、すぐに攻撃を

仕掛ける。琴の蹴りが金井雅樹の背後から迫る。金井雅樹は即座に振り向いて対応する。

 琴の蹴りを避け、カウンター。

 琴は相手の能力を探っている途中だった。相手の能力の詳細はハッキリしないが、防御を無効とする何かしらの超能力だ。ならば、最初から避けてしまえば良い。

 カウンターの軌跡を先読みする。そして琴は上体を捻り、その攻撃を避けようと狙う――が、拳を避けたそのすぐ横、自身の顔の横を通り過ぎた金井雅樹の腕から、電撃が飛んだ。

「ッうぅううんんんっ!!」

 言葉にならない悲鳴を上げ、琴は身体を硬直させ、震え、そして、床に落ちてしまった。

「長谷さんッ!!」

 琴の意識があるのは見て分かる。だが、強烈な電撃を受けて、身体が麻痺してしまい、動けなくなってしまっているようだった。

 琴を無力化した事を確認した金井雅樹は、一度、足元に落ちる琴の腹部を蹴り上げ、数メートル転がした後、不気味な笑みと共に振り返り、言う。

「面白いモンを見せてやるって言っただろ?」

 笑う。余裕の笑み。そして、今からお前も楽々と倒してやるよ、という宣言。

(なんだ。今の今まで電撃なんて使わなかっただろ!? それともさっきの防御を越えた攻撃も、電撃の超能力でどうにかしてたってのか……!?)

 恭介は落ち着け、と自身に言い聞かせつつも、焦っていた。

 超能力に、恭介や『複製』の超能力者でもない限り、多重超能力というモノは存在しない。そして、恭介の『強奪』や、『複製』なんてモノは、特異中の特異であり、そうそうそこらに存在するモノではない。

 故に、考えがまとまらないでいた。

 だが、今、床で転がる琴には見えていた。

(超能力が――変わった!?)

 身体こそ動かせないが、千里眼の発動は出来ているようだ。そして、琴は見た。金井雅樹の中に潜む超能力が、『変化』したことに。

 恭介と金井雅樹が向かい合う。一騎打ちだ。琴の動きが封じられてしまった今、ここで恭介が負ける訳にはいかない。幸いにも、恭介には絶縁機能が備わっている。琴の様に電撃を受けたとしても、恐らくはダウンしないと思われる。

 恭介と金井雅樹が互いに踏み出した。そして、互いとも拳を振るう。当然、二人を中心にして、青白い閃光が恐ろしいばかりに炸裂していた。空気が弾ける音が炸裂する中、二人の拳が、打ち合った。

 電撃と電撃が衝突し、拡散される。青白い稲妻は二人から弾ける様に飛散し、部屋中のパソコン等の電子機器を破壊し、それでもまだ、収まらなかった。壁や床に焦げ跡を残し、単純な腕力差で負けた恭介が吹き飛ばされるまで、消えやしなかった。

 恭介の身体が後方に再度吹き飛び、壁にぶつかって床に落ちてやっと、電撃の名残も消失した。

「がぁ……、」

 恭介も殴られ過ぎた。相当なダメージを負っていた。

 だが、ここで、今の一撃で気付くこともあった。

(今の一撃、さっきまでの防御を越えたあの感覚がない……)

 単純に今、攻撃を仕掛けたがため、とは思えなかった。

 そして、その考えから導きだす。

(超能力の入れ替えでもしてんのか……、俺みたいに複数所持してるようには見えないな)

 入れ替え。そういう単語が浮かんだ。

 恭介はゆっくりと立ち上がる。

 最初、金井雅樹を琴が千里眼で見た時は、超能力を所持していない無能力者の状態だった。だが、その後、防御を無効化するかのような超能力を所持し、そして今、電撃を所有している。最初から超能力者であれば、強奪や複製なような多重超能力の可能性を考えても間違いなかったのだが、無能力者だった時点でそうはいかない。

 そして、考えつく。

(他人の超能力でも与えられてんじゃねぇのか!?)

 そうだ。金井雅樹が超能力の変化を見せたのは携帯電話を弄った後。あれで誰かにメールでも送り、超能力を入れ替えるような指示でも出していたのでは、と推測する。

 バチリ、と恭介の右腕に稲妻の閃光が走る。

「分かったぞ。お前の超能力」

 そう宣言し、バチバチと空気を鳴らす電撃を宿した右手を上げ、正面の金井雅樹を得意げに指差した。

 自信はなかった。だが、自信を持ったフリをした。

「ほう、そりゃ面白い。言ってみろよ」

 対する金井雅樹は本物の自信を見せる。超能力を暴かれる事には慣れていないだろうが、それでも、暴かれても、仮に恭介の推理が正しかったとしても、それでも負けないという自信があるのだろう。現に状況を見れば、金井雅樹が有利なのは分かる。腕力でも圧倒しているし、複数の超能力を入れ替え入れ替え使える可能性だってある。

「お前は、弟だかの超能力で、超能力を与えられてんだろ」

「正解」

 答えはあっけなかった。金井雅樹は容易くそれを認めた。本当に、超能力がバレても問題ないようだ。

 当然。まず、相手は超能力を入れ替える事が出来る。それも、どれだけ入れ替える事が出来るか把握していない恭介達から見れば無制限同様だからだ。まだまだ隠し球を持っている、と言われても、まだ二種類のそれしか見ていないのだ。どうしようもない。

 だが、恭介にも勝機は見えた。

 相手は、恭介が『強奪』の超能力者である事を知らない。雷撃どころか電撃の超能力者だとでも思っているだろう。そこを、狙う。それしかない。一瞬の、勝負だ。

「分かったところで何か問題でもあんのか? お前、俺に勝てるのか、そのちっぽけな電撃だけで」

 だけで、その言葉が恭介に確信させた。相手は、油断している。

「勝てるってんだよ」

 そう叫び、恭介は再度、踏み出した。それに合わせる様にして、金井雅樹も進みだす。

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 雄叫びを上げながら、恭介が駆け出し、拳を振るった。金井雅樹もそれに合わせるかの様に、拳を振るった。再度、拳を正面からぶつけて、もう一度同じ目に合わせて、痛めつけて嘲笑ってやろうという魂胆が見え見えだった。

 だが、拳と拳が衝突するその直前で、恭介が――『ズレた』。

 確認していたはずの光景の錯誤に、金井雅樹は対応しきれなかった。確かに、拳と拳は正面で衝突するはずだった。だが、気付いたその一瞬で、恭介の拳は金井雅樹が放った拳からはずれた位置に移動していて、そして、

「おおおおおおおおおおおおおっらあぁっ!」

 金井雅樹の顔面を、穿つ。

「ぶっ!!」

 金井雅樹には、やはり雷撃によるダメージは微量となったようだが、それでも、しっかりと捉えた拳は、確実に彼にダメージを与えた。

 そして、傷が付くはずがない、という自信でもあったのだろう。金井雅樹は防御の態勢をとっていなかった。そのため、容易く後方に倒れ込んだ。

 金井雅樹の巨躯が落ちると、床が揺れた。気がした。

 金井雅樹はまさかのダメージに驚きながらも即座に態勢を立て直そうとする。が、すぐ目の前には今の一撃で勢いづいた恭介の姿が。

 上体を起こそうとした金井雅樹の上体を蹴り飛ばし、再度仰向けに無理矢理寝かせた恭介は、そのまま金井雅樹に馬乗りになる。金井雅樹は即座に抵抗し、拳を振るおうとするが、それは恭介に防御されてしまう。

 防御が出来た。やはり、先の超能力は失われている。

「お前の負けだってんだ!」

 叫び、恭介は拳を何度も、何度も金井雅樹の顔面めがけて振り下ろした。

 最初の内は金井雅樹もその拳を両手で顔面を覆い、防いでみせていたが、時間が経てばそうはいかない。金井雅樹の両手はおびただしい程のダメージを受け、力が入らなくなり、落ちる。そこから先は一方的な攻撃だった。

 数分間だっただろうが、恭介には一時間程度にも思えた。金井雅樹が動かなうなったのは、それだけの時間が経ってやっとだった。

 恭介は立ち上がり、金井の側から離れてやっと一呼吸置く。金井雅樹も死んではいないようだ。あれだけの肉体があれば、そう簡単に死にもしないか。だが、相手が貧弱な男だったら、死んでいたかもしれない。恭介はそれ程に攻撃を仕掛けた。

「長谷さん」

 金井雅樹が生きている事を確認すると、いつの間にか起き上がり、壁に身体を預けていた琴の下に恭介は駆け寄った。

「あはは、恭介くんいなかったら私負けてたね……。っていうかまだ、身体麻痺してるんだ。肩貸してもらってもいいかな?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ