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NO,THANK YOU!!  作者: 伍代ダイチ
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15.窮地/襲撃





15.窮地/襲撃






 この惨状を、滅茶苦茶だ、と思わず、にいる人間は多かった。これは現実で、現状なのだ、と受け入れている人間の方が、圧倒的大多数であった。

 田舎から都会まで、それが手配され、全員に行き渡り、整備されるまでの時間は、一週間に満たなかった。ジェネシスは、神威業火は予め、全てを予想だてて、ここまでの準備をしていたのだろう。

 ふざけるな、としか、NPCの人間は吐けなかった。

 選択肢は、時間の事を考えれば強行突破しか、思い浮かばなかった。

 姿を隠し、街中を見てきた人間も、千里眼等、視覚の超能力を持っていて、それで隠れながらも外を見てきた人間も、その異様な光景には、戦慄を覚えていた。

 だが、得た者達は、何も気にしていなかった。新たに得た力を誇り、振るい、その人知を超えた力を、翳していた。

 人工超能力の商品化。実行されてしまった。その無謀とも思える行動は、あっさりと認可され、一般に浸透するに時間を要さなかった。

 商品化の早まった事実は、一般人は大して気に止めなかった。手元にずっと楽しみにしていたモノが届く、手に入る、それだけで彼らの理解を得るには十分だったのだろう。

 挙句、初めて、初回と言う言葉、現状を使って無料で配布しているモノも存在した。

 人工超能力を得るには、手術、が必要とされているが、実際はジェネシスに許可をもらっている人間が注射器で血流に『それ』を注入して乗せるだけの手術と呼ぶに至らない程度のモノであり、単純に、回転が早く、多くの人間に行き渡った。

 そして、何よりの問題が、NPCの襲撃が合った事と、神威業火がついに『本気』を出した事で、戦闘用超能力の規制がぐんと緩和されてしまった事である。

 自衛隊のみに配備、という規制は、白紙に戻された。自衛にのみ使う、という建前の下、一般人にも『ある程度』の戦闘用超能力『も』配給される事となってしまっていた。

 詳細も決められているのだが、それは、まだ、一般人に浸透してやいない。

 ほぼ、突然の出来事だったのだから。当然だ。皆、手に入る力にのみ、視線を集中していた。

 これが、現実だった。

 NPCは所謂悪役として一般に知られ、畏怖する者もいれば、敵対すると宣誓する者達も出てきていた。

 所謂裏の存在の人間達は、秘匿に力を与えてくれたジェネシスから、NPCだけには警戒しろ、と当然指示されている。

「襲撃どころじゃないな」

 臨時NPC支部――東京都、国分寺。

 そこで支部長のオフィスを任されている亜義斗は頭を抱えていた。

 自身の人工超能力が前期型のため、仕掛けによる影響はないが、そんな事はどうでも良い程に、危機だった。

 この支部の付近は垣根と零落希紀の一件があったため、未だ人の数が少なく、動きやすいが、一般人が一人でもいれば警戒しなければならない。

 海塚の判断でNPCの集結したメンバーを都内に散らばらせた。

 ここ国分寺には、亜義斗が率いる一団が集結して、身を隠しつつ活動を続けている。

 一般人の『喧嘩』には警察が動き、酷いモノにはジェネシスの用意した特殊部隊が動く。つまり、NPCの今までのメインの活動であった超能力の悪用をする人間の抑止はなくなったが、NPCはまだ、この危機的状況を打破しなければならない。

「恭介は今日はどこに行ってるんだったか?」

 亜義斗が問うと、部屋の隅にいた菜奈が応える。

「さぁ? 今日もいつも通り、出てるんじゃないの?」

 菜奈は手元の束になった書類の整理をしながら、呆れた様に言った。

 海塚は、恭介を支部の長には任命しなかった。まとめる力はある。当然だ。今までNPC日本本部の幹部格を担っていたのだ。

 が、彼の力は、そんな事で拘束出来る状態、状況ではない、と判断された。

 故に、彼は亜義斗の下に所属する形を取り、実質、フリーとして動いている。

「おい、あれ、郁坂恭介じゃないか?」

「いくさかきょうすけ? 誰だそれ」

「お前テレビも新聞もみねぇのかよ。あれだよ。ジェネシスが要注意人物だとか超危険人物だとか言ってるNPCの人間」

「あ、あぁ! マジだ。郁坂恭介じゃん! あいつ!」

 男三人組が未だ人の数が減らない新宿駅付近で遠くに見えた郁坂恭介を指差すと、

「おい、声がでかいって!」

 視線が、向いた。

 三人も戦慄したし、三人の話声でその存在に気づいていた人間皆も、戦慄した。

 郁坂恭介は視線を向けただけで特に動きを見せなかったが、周りはパニックだった。悲鳴が上がり、数分もしない内にほぼ全員がその場を離れた。残ったのは皆がパニックになったという状況に頭が追いつかず、動けなくなってしまった者達と、一部の、郁坂恭介の捉え、もしくは倒し、その首にかけられた多額の懸賞金を得ようと考える馬鹿者共。

 その懸賞金は、当然、ジェネシスが掛けたモノではない。ジェネシスに媚びを売ろうとしている裏の者達が、かけているだけである。郁坂恭介程の人間に、一般人が及ばない事は、ジェネシスの皆は分かっている。そんな馬鹿な事はしない。

 が、馬鹿者共の無駄な策略に乗ってしまう馬鹿者共も、まだ、大勢いた。

(何人か通報してたな。数分もすれば、ジェネシスの部隊が来るな。……ここなら、警察も来るか)

 辺りを見回しながら、恭介は考えた。

 恭介からかなりの距離をとってこそいるが、残っているのは十数人。そのほとんどが、恭介に対しての戦闘意思を持っている。暫くすると戦闘意思のない数名は駆け出し、遁走した。

 残っているのは、男が全部で一ニ名。

 恭介はその全員を見回して、嘆息した。

(本当に、ネットも発達しているこの世の中で、各地で暴れてる俺の情報が流れないよな。今の状況も考えれば、ジェネシスが規制するとも思えないし)

 男連中は自分達の数を確認して、これだけの数が揃えば一人くらいどうとでも出来る、つまり、余裕、と吐き出した。そして、強気で前に出て、恭介にじりじりと詰め寄る。

 自分達が人工超能力という未知の力を手に入れた時、男達は、自分達は誰よりも強くなった、と勘違いをした。当然だ。新たな力は、渇望を満たす。故に、強くなったと勘違いを引き起こす。その勘違いは、更に深く心に浸透し、最強になった、とより面倒な勘違いを引き起こす。

 自分達など、ジェネシスの管理下に置かれた、馬鹿者共だと気づかずに。

 一二人の男達と、恭介の距離が大凡五メートル程になった時だった。

 男の内の一人が、先を急いだ。

 瞬間移動。これは、戦闘用超能力として分類されている。

 男は瞬間移動して、恭介の背後に回った。

 完全に不意を付いた――はずだった。

「は!?」

 男が瞬間移動したそこには、恭介の姿はなかった。一一名の男達は、味方である一人の男を囲む陣営をとっていた。取らされていた。

 誰も、何が起こったのか理解ができておらず、全員が足を止めた。

 恭介は、敵の瞬間移動を確認してから、自ら瞬間移動をした。が、それを理解出来る人間は少ないし、少なくともこの場には存在しない。

 人が捌けて、風の通りが良くなった辺りには涼しい程度の風が吹き抜ける。

 と、同時、真ん中にいた男が、吹き飛んだ。

 何が起こったのかやはり、理解できなかった。男が吹き飛ぶと、その直線上にいた一人を巻き込んで、更に遠くへと飛んでいった。まるで、新幹線にでも真っ直ぐ突っ込まれたかの様だった。

 男が立っていた場所には、入れ替わる様に恭介が立っているが、それよりも、残された一○名の男達の視線は、吹き飛びながら、四肢を空中でもがれながら吹き飛ぶ味方の姿にしか、向いていなかった。

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