第98話 本気で金ですべてを解決しようとする姫
「おい、アメリア、そしてカウラ。オメエ等もいくら欲しい?アタシは神前を買う。オメエ等も神前を諦める為には慰謝料を払う必要があるだろう。金ならある。だからそれで諦めろ。そうすれば神前はアタシの自由に扱って良い専用のおもちゃになり、アタシ自身はあの馬鹿から妻扱いされる境遇から解放される。いくらなら納得する。言ってみろ」
かなめは誠の思いなど完全に無視してその場にいるカウラとアメリアに向けてそう言った。いつもながらのかなめの思い付きの自分勝手さにカウラは大きなため息をついていた。
「そうねえ……あのお蔦さんが20億円で身請けでしょ?それならそれ相応のお金を貰わないと……ねえ?カウラちゃんもそう思うでしょ?」
明らかにはねつける気満々のカウラとは対照的に時折携帯端末に目を通しながら満足げな笑みを浮かべるとアメリアは完全乗り気でそう言った。
「アメリアさん!何ですかその態度は!僕は何時商品になったんですか?ここは東和共和国であって一階が普通に歩き回ってる甲武国じゃないんです!人身売買は法律で罰せられます!」
必死になってアメリアを説得しようとする誠。
「冗談よ、本当に誠ちゃんも冗談も分からないなんて……ふーん、こんな金額しか出さなんだ……じゃあ、こういう商品情報を提供したらどうかな?」
アメリアはかなめの提案よりも携帯端末の中身が気になるようだった。誠はどうやらアメリアがネットオークションで何かをしているらしいことは分かってその内容を見ようと画面をのぞきこもうとするのだが、アメリアは器用にそれをかわして誠から見えないようにしていた。
「オメエ等、なんでそんなに反応が薄いんだ?アタシは本気だぞ。おい、アメリア。20億は花魁の太夫の値段だ。神前は東都一のホストと言うわけじゃねえ。さすがにそんな金額は無理だな。どうだ、カウラ、3億ぐらいで手を打たねえか?オメエも思い切りパチンコを打ちたいだろ?3億あれば相当負けても大丈夫だぞ。良い話だろ?なあ?」
携帯端末ばかり気にしてかなめを無視しているアメリアに比べてかなめの顔は真顔だった。
「西園寺。『愛は金では買えない』という言葉を知らないのか?私は神前を金でどうこうするつもりはない。そんな話は拒否する。それに今の私のパチンコの技術はすでに週四回しか行かないというのに月給よりも買った金額が多いというもはやパチプロレベルなんだ。金云々で動く女だとみられるのは正直心外だ」
毅然とした態度を取るカウラが誠にはまぶしく見えた。
「ほう、言うじゃねえか。半年前はよくパチンコで負けた時に泣きそうな顔で金を借りに来たオメエにそんなことを言う資格があるのか?今のツキだっていつまで続くか分かんねえぞ?オメエだって所詮世の中金だって分かってるんだろ?神前だって……アタシのものになれば好きな物を買ってやるぞ。ただ、アタシの趣味で荒縄で縛ったり鞭で打ったり、先のとがったお馬さんに乗ったり……その他アタシが男が喜ぶいろんなプレイを楽しめるんだ。良い話だろ?」
そう言うかなめの顔が全く笑っていなかったのが誠には怖かった。




