表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第二十章 『将軍様』の仕事らしい仕事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/166

第93話 本格的監査とこういう馬鹿を取り扱うことに慣れたエリート

「うちで一番問題がありそうな場所……どこだ?アメリア、貴様の所より問題を抱えている部署なんてうちにはないだろう」


 カウラはアメリアにそう尋ねた。


「決まってるじゃないの……うちのおカネを握ってるとこ。お金の話。これは変なおもちゃや要らなくなった衣装の山より重要な問題でしょ?」


 アメリアはさもそれが当然というような顔で皆に向けてそう言った。


「管理部か……まあ、普通の監査ではあそこが一番狙われるからな。麗子がいくら馬鹿でも自分の仕事が遊びじゃなくて監査だと理解して要れば当然目を付けるはずだ。高梨参事は空いてるかな?」


 かなめは渋い表情を浮かべてそう言って歩き出す。そのまま廊下を進み突き当りの部屋の扉の前に立った。


「麗子。ようやく仕事らしい仕事になるぞ。良かったな、これでオメエも無能を脱出できるかもしれねえ」


 かなめは作り笑顔を浮かべて行き先を考え中の麗子と鳥居に向けてそう言った。


「これまでのどこが仕事らしくないとおっしゃるの?私はこの『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊の暗部を次々と改名してい参りました!妻として夫の雄姿を焼きつけられた事実を感謝してほしいものですわ」


 かなめの言葉を聞いて麗子は不思議そうに見つめ返す。誠は先ほどまでのお遊びを想像して吹き出しそうになるがにらみつけてくるカウラを察して黙り込んだ。


「うちの暗部?そんなもんこれまでのどこに有ったんだ?あったなら教えてくれよ。それにオメエはアタシから見たらただ寿司食って遊んでただけじゃねえか。今までの言動のどこに『雄姿』なんてものが有るんだよ。まあいいや、失礼します!」


 ノックをしたかなめはそのまま管理部の部屋に入った。かなめも温厚な背広組に有りながら人間味あふれる高梨には一目置いていた。


 端末が並び静かな雰囲気はこれまでのどの部屋とも雰囲気が違った。


「これは……お客さんですか?」


 高梨の部長就任で管理部部長代理から経理課課長代理へと降格された菰田邦弘主計曹長が不審そうな顔で立ち上がる。


「部長は?」


 かなめが部屋を見回す。菰田以外は全員パートのおばちゃん達で占められた管理部の雰囲気はこれまでの『特殊な部隊』のどことも違う雰囲気で包まれていた。


「ああ、いるよ。僕ならここだ」


 かなめの問いに奥の部長席で書類とにらめっこしていた小柄な背広姿の高梨渉参事が手を挙げる。


 高梨は部隊では珍しい背広組のキャリア官僚で、隊の財政事情に明るい。とりあえず麗子の目的が監査である以上会わないで帰す訳にはいかない人物なのは誠にも分かった。


「すいません、高梨参事。監査でして……」


 野球部の予算が足りなくなると時々『特殊な部隊』の裏帳簿ともいえる福利厚生予備費から金を貰ってしのいでいるかなめはいつものような横柄な態度ではなく丁寧に頭を下げつつ高梨に歩み寄った。


「隊長からは話は聞いてるよ……どうせ戦場を知らない軍人は人間の数に入れないんだという主義の隊長にあしらわれてここに来たんだろ?書類は揃ってる。菰田君!」


 高梨はそう言うと菰田に声をかけた。


 菰田は立ち上がると、書棚の前に置かれた重そうな段ボール箱を抱えて立ち上がりそのまま部屋を出ていこうとする。


「ここじゃあなんだ。会議室、空いてるだろ?そこを使わせてもらうよ」


 立ち上がった高梨はそのまま菰田に続いて部屋を出ていった。


「田安中佐たちが書類を見ている間、私達は……」


 アメリアは事務的な言葉ばかり口にする高梨にそう言った。


「君達は仕事があるだろ?そちらの方をやっておいてくれ。これから3時間は僕達で何とかするから。こういう無駄な形式ばかりの仕事は政治屋の連中が好きでね。そう言うのを取り扱うのは僕は慣れてるんだ。しばらくは君達も楽をした方が良い」


 高梨はそう言うと麗子と鳥居を連れて会議室の並んでいる別棟に向けて歩き出した。その思いやりに満ちた視線にかなめ達はようやく安どの息を漏らした。


「高梨参事様様だな。麗子の珍妙発言からしばらく離れられるのはラッキーだ。それより……アイツに書類を見るなんて芸当できるのか?」


 かなめは高梨の配慮に感謝すると同時にどう見ても難しい話をされても理解できそうにない麗子の頭の中身が気になっていた。


「私が知るか。それに高梨参事はどんな複雑な財政事情でも素人にも分かりやすくかみ砕いて説明できるスキルがある。そのスキルで我が隊の財政状況が田安中佐に理解できないのなら彼女には小学校低学年並みの社会常識しか無いというだけの話だ」


 かなめとカウラは顔を見合わせながら仕方なく機動部隊の詰め所に向けて歩き出す。


「なんだかなあ……小学校低学年でもあんな馬鹿なことはしないと思うから……高梨参事も大変な仕事を押し付けられたんだな」


 誠も不条理の塊である麗子から解放された安ど感を胸に二人の後ろに続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ