第90話 すっかり『将軍様』とフラグが立った誠
「それじゃあ案内してくださる?誠様……初めて出会った真に心を許せる殿方……あなたならきっと私の希望をかなえてくださいますよね?」
麗子は愛想笑いを浮かべる誠に向けてそう言い放った。誠はただ隊長室に連れて行くだけのことが麗子の中では偉業認定されているのか疑問に思えた。
「はい、わかりました」
誠はそう言うとそのまま廊下を進んで二階に上がる階段に向かう。
「叔父貴のことだ、逃げてんだろ?いつもの事じゃねえか。それに今の時間はお蔦が家にいる。そうなると今叔父貴のしてることは一つだな。あの『脳ピンク』。昼間っからでもそんなことするからな。随分前に聞いた話だが三日三晩休まずにやったことが有るとか自慢していた。他に何かいい自慢はねえのかよ」
かなめは相変わらずニヤニヤ笑いながら麗子と鳥居のコンビの後ろを歩いていた。
階段をのぼり、そのまま隊長室に誠は麗子を案内した。
「ここです」
頬を赤らめて自分を見つめて来る麗子に半分当てられながら、誠は麗子を隊長室に案内した。ここまであからさまな行為を持った視線を自分に向けて来るのは自他とも認める変態であるかえでくらいなので、誠にはこれが不吉なことの前触れのように感じられていた。
「ありがとう。ご立派なお仕事です。さすがは誠様……そのたくましい背中。見ていて心動かされましてよ」
案内してきた誠に恍惚の表情を浮かべて笑いかけた後、麗子は隊長室の扉を三回ノックした。
「はーい」
意外にも嵯峨の声がした。嵯峨は面倒なことが有ると逃げ出す。そしてお蔦と暮らすようになってからはお蔦が暇な時はラブホに行くというのが誠の嵯峨観だった。その人物が逃げずに隊長室に居る。
誠もかなめもカウラもアメリアもあまりに予想外の出来事に一瞬何が起きたか分からないというように呆然と立ち尽くした。
「いるじゃないの」
アメリアは首をひねりそんなことはあり得ないという顔でかなめを見つめる。
「おかしいな……お蔦とよろしくやれる言い機会だと踏んで逃げ出すもんだとばかり思っていたのに」
アメリアにつつかれてかなめは不思議そうに扉を見つめる。
「失礼しますわ」
そう言うと麗子は静かに隊長室の扉を開いた。




