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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十七章 『将軍様』と落ちこぼれ

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第85話 低レベルの砂漠戦

「砂丘か……視界に入ったらいきなりズドンってわけなんだな」


 誠は独り言を言いながら利き手の左手用に改装されている230カービンに目をやる。


 誠は射撃が下手である。オートロックシステムが電子戦システムの発達によって無効化されているこの時代において、マニュアル照準システムを使いこなすことは射撃の必須教科だが誠にはその才能はまるでなかった。


 一面の砂丘の向こうにいるであろう麗子の機体が突然現れるのではないかとびくびくしながら誠は地上を進んだ。


 麗子の機体は飛行してはいないようで誠の上空にはただ青い空だけが続いている。


「いきなりズドンは嫌だな……」


 誠は左手に力を込めながらレーダーに目をやった。


 レーダーかく乱用のチャフが撒かれているところから見て麗子の機体はすぐそばまで近づいてきているのが分かる。


「こっちもECMをかけて接近戦に持ち込んだ方が……」


 そんな独り言を言っていた誠の背後で爆炎が上がった。


「見つかった!」


 誠は爆炎の背後に映る機影に向けて230カービンを乱射する。


『甘くってよ!』


 麗子の叫びに誠はたじろぎながらなんとか機体を立て直して砂丘の陰に隠れた。


「田安中佐……西園寺さんは無能扱いしてたけど、あの動き……意外と手ごわいぞ。西園寺さんは田安中佐を馬鹿だと決めてかかってるしあの人自身がサイボーグで生身のパイロットは全部下手だと思ってるからそう言えるけど……でもパイロットとしてはそれなりの腕だ。でもパイロットは……ああ、務まらないな。他のパイロットの人が嫌がるもんな、あの態度を毎日見せられたら」


 誠は麗子の機体を狙うものの明後日の方向に飛んでいく自分のレールガンの弾道を見て自分の射撃の能力の低さを嘆いた。


『なんだよ……いい勝負してんじゃねえか。神前の瞬殺勝利と踏んでたのに』


 かなめは不満そうに画面を見つめていた。


『まあ誠ちゃんだからね……あれだけ無駄弾を撃てるなんて一種の才能だと思わない?それよりかなめちゃんなら瞬殺でしょ?』


 アメリアは画面の中で我関せずというような感じの笑みを浮かべてそう言った。


『当たりめえだ!麗子が初弾を撃ち込みに来た段階で一撃で仕留めてる』


 かなめとアメリアは外野で好き勝手なことを言っている。誠は不貞腐れながらレーダーに目をやった。


 チャフは尽きているはずなのに反応が鈍い。


「距離を取ったのかな……それにしてはさっきはあんなに丸見えの所をウロチョロしていた。どこ行ったんだ?」


 そう言いながら有視界索敵をするべく砂丘から顔を出したとたんだった。


 05式の頭部が吹き飛んだ。


「なんだ!」


 誠は突然の一撃にうろたえつつモニターを腹部のサブカメラに切り替える。


『なんだよ神前……全く進歩がねえな。あんなところで頭を上げたら撃たれるに決まってんじゃねえか』


 かなめに言われなくても分かっていた。


 麗子は誠の機体の隠れている砂丘の真裏にいた。そこで至近距離から230カービンの一撃をかましてきたのである。


『神前曹長……逃げても無駄ですわよ!』


 得意げな麗子の叫びに誠は230カービンを投げ捨てて05式の大型軍刀、通称『ダンビラ』を抜いた。


『潔いですわね……飛び道具ではかなわないと分かってさっさと銃を捨てるなんて……よろしいですわ、お相手しましょう』


 麗子はそう言うと誠の機体に照準を合わせていた230ミリカービンを捨てて同じく『ダンビラ』を抜いた。


『格闘戦なら神前の勝ちか?』


 カウラは冷静に状況を分析してそう言った。


『そうとも言えないな……センサーの塊の頭部を吹き飛ばされたんだ。腹部のカメラは死角が多い。死角に入られたら格闘戦が得意な神前でも手こずるぞ。アイツは一応は『柳生新陰流』の免許皆伝なんだ。格闘戦なら互角だが……頭部のカメラが無い分、神前が不利だ』


 かなめとカウラはにらみ合う二機のシュツルム・パンツァーの映像を見ながらそう言った。


『誠ちゃん……勝てるの?』


 かなめの状況分析を聞いたアメリアが心配して声をかけてくる。

 

「僕にもパイロットの意地があります!にわか仕込みのパイロットなんかには負けません!僕は実戦経験者ですから!」


 心配そうなアメリアの言葉に誠はそう言い放って麗子の機体との間合いを詰め始めた。


 じりじりと照り付ける砂漠の太陽が天空から二人の機体を照らす。


『一撃で決めますわ』


 余裕のある笑みを浮かべながら麗子はそう言い放った。


 実際、腹部カメラの視界は狭く麗子の機体を捉えるには正面を向くしかなかった。当然、『ダンビラ』で狙える角度も小さい。


「一応、僕はパイロットなんだ、『近藤事件』、『バルキスタン三日戦争』、『厚生局違法法術研究事件』どれも常に勝ってきた!今更こんなところで負けるわけにはいかないんだ!」


 そう言うと誠は一気に麗子の機体へと飛び込んでいった。


 麗子はその誠の行動を読んでいたかのようにひらりとかわしてみせる。


『そのくらいのことが読めない私と思って?』


「じゃあこれで!」


 誠の作戦は二段構えだった。しかも半分の可能性に賭けた一撃だった。


 誠の左から斬りこむ一撃をそのまま左にかわすか右にかわすか。誠は麗子が右利きだと読んで右にかわす方に賭けた。策は見事に成功した。


 麗子は誠の機体がさらに一撃を繰り出してくるとは予想ができずにそのまま腹部を誠の左腕一本の『ダンビラ』の一撃で持っていかれる形になった。


 麗子の機体が画面の中で爆縮を開始しているのが映し出される。


『やりますわね……私の負けですわ』


 麗子は静かにそう言ってほほ笑む。


「僕はパイロットなんで」


 誠は自分自身に言い聞かせるようにして麗子にそう言って笑いかけた。その見るだけならば美人と言える麗子の称賛の笑みよりも誠にとってはかなめに射殺される危機から逃れたことの安心感が心の中を支配していた。

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