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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十七章 『将軍様』と落ちこぼれ

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第83話 暇つぶしの提案

「整備班はいつも弁当……でも出前を取るよりいいわね」


 アメリアはハンガーの手前で旧車のレストア作業をしていたひときわ大柄な古株の隊員である大野に声をかけた。


「これはクラウゼ中佐、お疲れ様です。まあねえ……あそこはうちで持ってるようなもんですから。手を抜く訳にはいかないし原価率を下げる訳にはいかないんでしょ……そんなことしたら班長が釘バットを持って怒鳴り込みかねないですからね。それより今日の客のあの見た目だけは立派で中身のまるでない姉ちゃん……大丈夫なんですか?班長かなりあの人と話してからキレちゃって……当たり散らされる俺達の身にもなってくださいよ」


 油にまみれた右手で寒空の中汗をぬぐいながら大野はそう言って笑いかけた。


「おう、来てたのか」


 喫煙所から戻ってきたかなめはそう言って誠達に駆け寄ってくる。


「まだ田安中佐が戻って来るには時間があるだろ?何をして潰す?」


 カウラは相変わらず借りてきた猫のようにおとなしい鳥居に目をやるとかなめにそう言った。


「そうだな……叔父貴の顔でも拝むか?……ああ、どうせ叔父貴は麗子に関わるとろくなことがねえと悟って逃げてるか……それじゃあ運航部!」


「げ!」


 かなめの提案にアメリアは明らかに嫌な顔をしてそう漏らした。


 運航部は部長であるアメリアにとっては『自分の城』である。今日、麗子がとりあえず冷やかす程度なら我慢できるがそこに居座られて鳥居の手にあるカメラで写真を撮りまくられるとなると話は変わってくる。


「あそこか……この前の映画の衣装とかまだ飾ってあるのか?」


 カウラはそれとなくアメリアに尋ねてみる。


「まあね……それよりシミュレータルームに行きましょうよ!あそこはうちの胆ともいえる施設だし、暇つぶしに沙織ちゃんに体験してもらうのも良いかもしれないわね」


 アメリアのそれと無い囁きに鳥居はすぐにうなづいた。


「ちっ!」


 自分の思惑が外れたかなめは舌打ちをしてシミュレータルームに向かうアメリアの後ろに続く。


「自分は小型クルーザーの免許は持ってるんですけどシュツルム・パンツァーの免許は持ってないんで……」


 鳥居はそう言いながら嬉しそうな表情でアメリアの後ろを歩いていく。


「甲武の海軍はまだ九七式にレールガンを両肩に載せただけの数だけ揃えたやっつけ機体の『火龍』が主力だからな……親父の軍への嫌がらせで最新の『飛燕』への機種転換訓練も進んでねえみたいだし」


 かなめの父の甲武国宰相西園寺義基は同盟成立を理由とした軍縮を主導し甲武国の最新装備転換作業はほとんど進んでいない有様だった。


「甲武も宿敵のハンイル国が同盟に加盟している以上、機種転換訓練など必要が無いということだ。その分内政に力を注力できる。甲武は地球圏の資産を先の大戦で負けたおかげで凍結されているからな……軍拡以前の問題だ」


 カウラの社会情勢の説明を受けて理系脳であまり社会常識に明るくない誠にも甲武国が軍備拡張をできるような国情に無いことは理解できた。


「平和が一番よ……まあ戦闘用人造人間の私が言っても説得力が無いけど」


 アメリアは力なく微笑みながらシミュレータルームの前に立った。

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