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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十六章 『将軍様』の居ぬ間に

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第80話 寿司で喜ぶ『将軍様』

「そう言や麗子の奴、何時に帰って来るんだ?隣の工場長だって暇じゃねえだろうし。あんな意味不明の事しか言わなくて男を見ると蕁麻疹が起きると公言している馬鹿に長く付き合う必要なんかねえんだよ。というか話す話題なんて有るのか?あの麗子と長話をできる男なんて相当出来た人間じゃなきゃあり得ねえぞ」


 爪楊枝で口の掃除をしながらかなめはそうつぶやいた。思い出されたお馬鹿な中佐殿の笑顔を思い出すと誠は吹き出していた。


「予定では一時半には戻ってくるはずですけど……話がはずんでいるかもしれませんよ」


 鳥居は懐からメモ帳を取り出してそう言った。


「話がはずむねえ……あの人の訳の分からない言葉に相槌を打つだけでも話がはずんでいるというのかしら?それより気になるのは何を食べているってことかしらね。あのお姫様の事だから……フランス料理とか?」


 アメリアは半分呆れながらあてずっぽうにそう言った。


「知るか!アタシはアイツの保護者じゃねえんだ!」


 アメリアの冷やかす調子に少しばかりキレながらかなめはそう返す。


「あれじゃないか、クバルカ中佐がよく行く寿司屋。この辺で高いものを食わせる店はあそこくらいしかないぞ。それに海産物の獲れない甲武の出身の貴族を接待するとしたら寿司が一番喜ばれるだろうしな。あの国はかつて存在した日本という国の後継者だと名乗っている。それならば日本料理を代表する寿司を東和自慢の新鮮な海産物で作ったものを出せば喜ぶくらいの事は工場長でも考え付くだろう。まあ、あそこの寿司ネタは全てうちの『釣り部』の釣って来た魚なんだがな」


 カウラはそう言うとテーブルの上に並んでいる空いたバスケットをかたずけ始めた。


「そうよね……あそこは『釣り部』が良い食材を提供してるから値段もそれなりだけど味は確かよね。あの連中は釣り上げた後の鮮度にまでこだわるから。船上で神経締めして最高の状態であの店に届ける。まあ、少しでも鮮度が落ちてるようならあそこの大将も怒るでしょうし、連中が一番怖がってるあの店の常連客のランちゃんがそんなこと許すはずもないものね」


 そう言うとアメリアは自分の分のナプキンをカウラに手渡す。


「寿司だったらあんまり時間とかかからないですからね。コース料理とか懐石料理とかだったら何時間待たされるか……というかあの人の会話を料理を待つ間聞いてることを考えると工場長に同情してきます」


 誠も冷やかし半分でそう言ってみる。


「まあな、アイツの気まぐれに一日付き合わされて、アイツはランの姐御が一番だという寿司を食って満足している。一方のアタシ等は変態のかえでの変態執事のリンの作ってきたサンドイッチを食ってその間の時間を潰す……麗子の奴は全く良い身分だぜ」


 あきれ果てたというようにかなめはそう言って楊枝を口にくわえて立ち上がる。


「タバコ吸ってくる」


 さすがに我慢できなくなったのかかなめはそう言うと会議室の入り口を目指した。


「別にことわらなくてもいいわよ。そんなのいつもの事だから」


 出ていくかなめの背にそう言ってアメリアはサンドイッチの入っていたバスケットを持って立ち上がった。


「自分も手伝いますよ」


 鳥居は気を利かせて立ち上がろうとするがアメリアは目でそれを制した。


「良いわよ。沙織ちゃんはお客さんじゃないの……誠ちゃんは手伝ってね。一応、この中では一番階級が下なんだから」


 そう言うとアメリアは持ち上げた空のバスケットを誠に手渡す。


「はい……」


 誠はしぶしぶアメリアからそれを受取ると彼女が開けたドアを通って廊下に出た。


「階段があるんだ。転ぶなよ」


 こちらも手ぶらのカウラにそう急かされながら誠は整備班員達が待つハンガーに降りていく階段をよたよたと下って行った。



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