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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十六章 『将軍様』の居ぬ間に

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第79話 大衆娯楽の国、甲武国

「私も歌舞伎は好きですよ……良いですよね……軍に入るまでは見られなかったですけど軍に入ってお給金が出るようになってからは何度か行きました」


 鳥居は自然体でそうつぶやいた。


「歌舞伎か……アレですか?東都の国立劇場みたいにみんな解説音声とかのイヤホンを配ってるんですか?」


 誠は歌舞伎を見たのは高校の校外活動くらいなのでそう言って鳥居に目をやった。


「なんです?それ?」


 鳥居は誠の言うことがまるで理解できていないというように首をかしげる。


「あのなあ、甲武の『文化復古主義』は筋金入りなんだ。それに甲武じゃ歌舞伎は庶民のものだ。貴族は相当好きな人間以外は歌舞伎なんて見ねえよ。甲武の貴族が見るのは『能』と『狂言』だ。叔父貴に聞いてみろ。叔父貴は貧乏人だけど、一応貴族だから歌舞伎なんか見たことが……ああ、お蔦に連れていかれた可能性はあるな。たぶん自分で好きで行ったことは一度もないだろうな。叔父貴は特に『狂言』が好きで、その『狂言』の登場人物の名前からとって自分の愛機に『武悪』の名を付けたくらいだ。だから甲武の庶民はひたすら歌舞伎に熱狂する。解説付きイヤホンだ?そんなもんなくても甲武で普通に生きてる庶民なら歌舞伎の世界観なんて日常生活で生で感じてるから歌舞伎のセリフ位訳なく理解できるんだよ。町じゃあ俳句をひねり、貴族達は和歌をたしなむ。それが甲武」


 かなめの言葉に誠は言葉を失った。


「そんな昔みたいな生活してるんですか?俳句……和歌……大昔の趣味ですね。甲武は……楽しいんですか?」


 正直な感想を誠は述べた。


「楽しいんじゃないの?地球の日本だって二十世紀初頭まではそうやって生きてきたんだから。私は勘弁してほしいけど」


 古典落語が好きな割にアメリアは甲武の『復古主義』とは相性が悪いようだった。


「寄席と芝居小屋と映画館があれば甲武の庶民は満足なんだ……東和みたいにテレビもゲームもねえけどそれなりに楽しくやってる訳……アメリア、古典落語が好きな割に食いつかねえんだな。確かに甲武の落語家は男しか居ねえな。うちの居候にも前座や二つ目の落語家は腐るほどいたが全員男だった」


 かなめはさもそれが当然のようにそう言った。


「さっき言ったように女流落語家が山といる東和と違って甲武の落語会は女人禁制なの!古典落語は語るのと見るのが好きなだけ。あんな世界で生活したいとは思わないわよ!」


 かなめはそう言って鳥居に目をやった。


「鳥居さんて、今、東和に住んでるんですよね?テレビとか見ます?」


 誠はそれとなく尋ねてみた。


「テレビですか……最初は珍しかったですけど……あんまり見ないんですぐ売っちゃいました。ゲームとか理解できないんで……」


 鳥居は照れ笑いを浮かべながらそう言った。


「西きゅんは甲武出身だけどゲームにどっぷりはまってるわよ。東和でもあそこまではまると仕事を辞めてニートになりかねないくらいだもの」


 アメリアはそう言って隊の女子の間でも比較的人気のある気が利く整備班のホープ西の名を出した。


「人によるんだろ?甲武の全員が『復古主義』とやらに賛成しているわけじゃないだろうし。それに日野と話をすると下手をすると東和よりも貴族の生活は地球の上流階級のそれに近いみたいじゃないか。東和じゃ手に入らないような地球の最新鋭の機械の話をされると東和の一般市民である私にはまるでついて行けない」


 鳥居とアメリアの言葉をカウラはそう総括した。

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