第76話 平民趣味の姉、貴族趣味の妹
「でもかなめちゃんの妹のかえでちゃんは典型的な貴族よね。……いつも従者としてリンを連れてるし……趣味が狩猟だし……。家事は全て使用人任せ。すべての持っているものは甲武の気に入った職人にオーダーメードで作らせてる。ここの制服だって胸が大きすぎて苦しいからってわざわざその職人に自分向けに作らせてるくらいだもの。それに持つものは何もかも一流じゃないときに食わない。拳銃はCZ75のショートレールだし、ライフルだってあの人だけSIG551なんていう馬鹿高いライフルを使ってる。刀も平安時代に作られた大江山の鬼を退治したと伝えられる『鬼切丸』。やることなすことすべて一流で上品じゃ無いと気が済まないなんてまるでかなめちゃんとは似ていないわ。ああ、似ているところがあったわね。二人とも変態で、かえでちゃんはイノシシとかしかを撃つのが好きで、かなめちゃんは人を撃つのが趣味だったわよね」
「アタシのは趣味じゃねえ。仕事だ。それと人を変態というな。ちょっと嗜好が違う程度でやめておけ」
アメリアに見つめられながらかなめは意に介せずというようにそう言い放った。
「僕は西園寺さんは親しみやすくて良いと思うんですけど……気取らないところはかえでさんより親しみをモテますよ」
誠はフォローのつもりでそう言った。
「親しみやすい?かなめちゃんが?『射殺する』が口癖の女のどこが親しみやすいの?誠ちゃんそんなに死にたいの?」
何気なくつぶやいた誠の言葉にアメリアがすかさず食いついてくる。
「甲武は行ったことが無いからな……そもそも貴族と言うものに私はあまり会ったことが無い。私の知る貴族と言えば生まれながらの貴族の西園寺と日野。そしてこれも西園寺と並んでなんで貴族なのかよくわからない隊長。そして日野に拾われて士族になってそのまま日野に取り立てられて国持ち大名クラスまで出世した渡辺くらいのものだ」
カウラはかえでのサンドイッチについてきた紅茶を飲みながらそうつぶやいた。
「面倒なだけだぞ、貴族制なんて。親父に言わせればそれを形骸化できれば甲武の社会問題は半減するそうだ……どんな家に生まれようが馬鹿は馬鹿だ。麗子を見てみろ……あそこまでひどくは無くても頭の具合がかなり残念な貴族は山ほどいる。そいつ等は貴族である限り失業もしねえし食うにも困らねえ。そんな国おかしくねえか?」
投げやりにそう言うとかなめはサンドイッチの端に着いた粉を乱暴に払い落とした。




