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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十四章 未知との遭遇『幼女編』

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第64話 『ちっちゃくてかわいいは正義!』と将軍様は言った

『あの二機の『オリジナル・シュツルム・パンツァー』について……知ってるのかな?この人?まあ、馬鹿だから知らないかもな』


 誠は鼻歌交じりで嫌そうな表情のかなめの後ろを歩いている麗子の表情をうかがっていた。


「そう言えば、嵯峨憲兵少将の機体とクバルカ中佐の機体が配備されたとか?」


 そう切り出したのはぼさぼさ頭の間の抜けた麗子のお供の鳥居だった。虚を突かれた形となったかなめは青い顔をして後ろを振り返る。その言葉にかなめ達一同の顔色が変わった。


「内府殿の機体?新型かしら?私は知りませんわよ」


 麗子は初耳だというような感じで鳥居の目を見た。本局ではあの『駄目人間』である嵯峨の話をするとろくなことにならないのでたぶん雑談程度の知識しか持たない麗子が『武悪』の存在を知らなくても誠には不思議には思えなかった。


「ええ、嵯峨憲兵少将……いや、特務大佐でしたね。確か泉州コロニーでテストされていた機体が先日ロールアウトしたと言う話を聞いています」


 鳥居のことばにかなめの顔はさらに青ざめていった。


「そうだったかしら……そうするとここのシュツルム・パンツァーは5機になるのかしら?」


 麗子の目が怪しく光る。しかし、そこには威厳というものが完全に欠如しているのはこの場に居る誰から見ても分かるものだった。


「いえ、6機です。クバルカ中佐の専用機が2機ありますが……まあクバルカ中佐はちっちゃいから専用機じゃないと搭乗できないので……」


 そう言うと鳥居はまたカメラをのぞきこむ。


「ちっちゃいから2機必要……無駄ですわね。そんなものはコックピットを改修するだけで済む話ですわよね」


 麗子のその思い付きの一言に誠達はうろたえ始めた。


 確かにクバルカ・ラン中佐はどう見ても8歳児くらいの大きさなので普通の機体には乗れない。そこで専用機がある訳だが、肝心の『方天画戟』は上層部の意向もあって部隊の全装備が使用可能な甲一種出動で無ければ起動すら許されない『封印された』機体である。幸いなのはその機体が現在は隣の工場で部品レベルに解体されて研究対象になっているということでこの場に無い事だった。


「そこはそれ、ちっちゃいからしかたねえんじゃねえの?オメエ小っちゃくてかわいいもの好きじゃん?ちなみにクバルカ中佐もちっちゃくてかわいい。何なら見てくか?そのちっちゃくてかわいい珍妙な生き物『汗血馬の騎手』クバルカ・ラン中佐を。たぶんオメエと関わるのが嫌で隊舎のどっかに隠れてると思うから……探すか?」


 かなめは振り向きざま恐る恐る麗子にそう声をかけた。


「ちっちゃいから?」


 唇に指をあてながら麗子は考え事をしているような表情でかなめの言葉を反芻した。


「そうですよ、ちっちゃいから良いんですよ」


 誠も特にそこを押すべきなのかわからないままかなめの言葉に続いた。


「ちっちゃいから……うーん……ちっちゃくてかわいい……。クバルカ中佐は本部にはしょっちゅう来ているはずなのですけど一度もお会いしたことが無いんですわよね……なんでも遼南内戦では『汗血馬の騎手』と呼ばれたエースだとか……それがちっちゃくてかわいい……ぜひお会いして私の側室にしたいものですわ」


 麗子は長考に入ったかのように黙り込んだ。そして8歳幼女を側室に迎えようと考える危ない将軍様の思考に誠は頭を抱えた。麗子がランを目撃したことが無いというのはたぶん麗子の馬鹿さ加減を上層部から聞いているランがあえて避けているのだろうということは誠にも嫌というほどわかった。


「ちっちゃいから……そして側室……そんなことをしたら幼児虐待になりますよ。あの人どう見ても8歳児ですから。この作品の登場人物は全員18歳以上ですって言うのはゲームの無茶な設定の話ですから」


 誠はそこはツッコむところじゃないと思いながらも目の前の馬鹿の考える姿に冷や汗を流しながら見つめていた。

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