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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十三章 『将軍様』ロボットを見る

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第62話 選定理由が灰色の機体と馬鹿姫

「でもなんで機動性ゼロの05式が採用されたんですの?運動性と装甲は07式を上回っていますけど……鈍足で戦場に着いた時には戦闘が終わっているような……確かに一対一の勝負では07式は05式に勝てないのは分かってはいるのですけど……おかしいんでなくて?妻ならばその点の考えを夫にちゃんとわかるように説明して見せる。それが当然の役割だと思いますわよ」


 誠は麗子が05式の欠点を知っているのに驚いた。麗子は馬鹿だが知識だけは有るのだなあと感心すると同時に意地でもかなめを自分の妻として扱う態度に誠はかなめに同情の視線を送った。


「そんなもん決まってるだろ?神前は跳べる……遼州人に距離の概念はねえんだよ。いくら早くても瞬時に跳ばれたら相手はなすすべもねえ。このまえオメエの勤務している同盟司法局本局近くであった『同盟厚生局違法法術研究事件』の時、05式と07式がタイマン勝負して負けたの見てなかったのか?あれで07式の評判がガタ落ちになって制式決定が決まって納入予定だった07式の東和陸軍への配備はすべてキャンセルになった。そんな事も分からねえから馬鹿扱いされるんだ」


 かなめは麗子の問いにあっさりとそう答えた。


「かなめさん!夫を馬鹿扱いする妻が有りますか!つまり、内府殿は法術の存在を前もって知っていたわけですわね?」


 前髪をいじりながら麗子はそうつぶやいた。


「そうだ。あのおっさんはすべて知ってて05式を選んだんだ。神前の配属もすべて出来レース……振り回されたアタシ等が馬鹿だったんだ。つまりオメエと同じってこと。ああ、オメエはそれ以下の馬鹿だからな。アタシもそこまで馬鹿になり切ることは出来ねえ。さすが馬鹿。大したもんだ」


 不機嫌そうにそう言うとかなめはそのままハンガーに向かう廊下を歩いた。


「全く面倒な話だぜ……それと機体に触るのは良いが整備班長の島田の許可をとってからにしろよ。まあ、調べるも何もうちの機体は下手なカスタムはしてねえからな……そんな予算もねえし、島田の馬鹿もそこんところはランの姐御にくぎを刺されてる。まあ、馬鹿のオメエにそんな技術的なことが分かるとは思えねえがな」


 かなめの精神はかなり限界に来ている。誠はかなめの震える肩を見てそう確信した。


「航続距離を伸ばすためにロケットブースターを取り付けるとか言う話は……妻であるかなめさんなら夫の私にその程度の事は説明できますわよね?」


 また麗子はとんでもない話をしてきた。整備班長の島田からもそんな改造の話は誠も聞いたことが無かった。


「麗子、いったいどこでそんな話を聞いてたのか?あれだろ?さっき言ってたネットに出てたとか言う落ちなんだろ?そんな部外者の名がした無責任なデマを信じるから馬鹿って言われるんだ!そんな予算がうちのどこにあるよ。第一、パイロットは居るのに第二小隊の機体も年度末の予算が組まれるまで待てとか言われてまだ納入されてねえんだぞ。それに神前が跳べばすぐに解決するんだ。航続距離を延ばしたり、機動性を上げたりする必要なんてどこに有るんだよ!そもそもそんなものを付ける機材も予算もうちにはねえ!」


 かなめは全責任を誠に押し付けて無責任にそう言い放った。


「結局僕頼みだったんですね。僕の『干渉空間』って結構力を使いますから何度も跳べるわけじゃ無いですよ。無理言わないでください。僕の力はそんなに便利じゃありません!」


 誠は思わずそうそうぼやいた。かなめを先頭に一同はハンガーを目指す。その中央に満面の笑みを浮かべた麗子を案内してハンガーに向かう通路に足を向けた。

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