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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十三章 『将軍様』ロボットを見る

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第61話 まったく計画性のない視察開始

「さて……どこへ行けばよろしいのかしら?かなめさん、夫である私の行くべき場所を妻として助言する。そのくらいのことは出来てもよろしいのではなくて?」


 麗子の第一声に誠達は顔を見合わせてため息をついた。


「なんだよ……そんなことも決めてなかったのか?監査だろ?問題のある場所に行くに決まってんじゃねえか……それとも何も調べずにこんなところまで来たのか?それと……もう……いい、オメエの脳内ではアタシはオメエの妻なんだろ?反論するのに疲れてきた。もうどうにでもしてくれ」


 半分呆れながらかなめは麗子の顔をのぞきこむ。麗子はそんなかなめの軽蔑するような口調に目を吊り上げて怒りの表情を浮かべた。


「何も準備もせずに来たなんてそんな間抜けなことあるわけないじゃないですか!私は悪名高き問題児集団であるこの司法局実働部隊の問題点を白日の下にさらすために来ましたのよ!本局での個々の評判。正直申し上げて最悪です。ですので、その最悪な原因が何かを突き止めるためにちゃんと昨日最近覚えたネットで『特殊な部隊』と検索して色々と情報を調べてきました!出来る夫はやることが違うんです!」


 麗子はムッとした表情でそう返した。誠は要するにあること無い事書きまくって誹謗中傷に満ち溢れているSNSの『特殊な部隊』のデマ情報を強いれただけなんじゃないかと思いながら得意げに胸を張る麗子の顔を見つめた。そこには全くその自覚の色は見られなかった。


「まあ、その情報の酷いことときたら……あれが事実ならこんな部隊、即解散ですわ!それを上に報告されても妻であるかなめさんも困るでしょうから、多少の手心はくわえて差し上げます。それよります、ここには法術特捜と言う『法術犯罪』を取り締まる司法局でも特殊な任務に従事する捜査官が居るはずですわ!その詰め所まで……」


「いいか?田安中佐」


 投げやりにもっともらしいことを言い始めた麗子に向けてカウラが水を注す。


「ベルガー大尉!なんですの!」


 麗子は苛立ちながら半分呆れた調子のカウラに視線を向けた。


「その『法術特捜』だが、今日は主席捜査官の嵯峨警部は部下のカルビナ・ラーナ巡査を連れて本局出勤の日だから法術特捜の詰め所は空だ……それに関係する書類はすべて本局にコピーがあるはずだ……ここに来ても特に見るものなどないぞ」


 そう指摘するカウラの顔は完全に表情が死んでいた。


「うぐっ!」


 カウラに指摘されて麗子の表情は明らかに不機嫌なものに変わった。隣でカメラをいじっている鳥居の明らかに麗子に対して怯えの感情を抱いているのがまるわかりの表情を見ればそれがかなりの危険水域まで達していることが誠にも見て取れる。


「それじゃあ我が隊の誇るシュツルム・パンツァー05式を見ていきましょう!一番うちで予算がかかっているのはアレですから……ねえ!」


 誠はこの『特殊な部隊』に配属されて特殊な女性達の相手をしているうちに身に着けた独自の勘で麗子達にそう提案した。


 そんな誠の『特殊な部隊』ではレアな気遣いスキルのおかげで麗子は何とか怒りのマックスモードから抜け出した。


「そうですわね……確かに費用対効果を考えるとアレは異質な代物ですわね。私の愛する妻が乗る機体。ぜひ確認する必要がありますわね」


 麗子は誠の言葉に目を輝かせてそうつぶやいた。


「費用対効果とか知ってんだ……ふーん……その割にはいつまでたっても第二小隊の機体が納入されねえんだな。やっぱ特別監査官なんてただのお飾りなんだな。よく分かった」


 かなめは死んだ目をして歩き出した麗子の後ろを後ろ手に手を組んで歩き始めた。


「第二小隊の話はしないんじゃなかったの?この馬鹿がまたかえでちゃんの事を思い出したら面倒なことになるわよ」


 麗子の何気ないつぶやきにかなめがツッコミを入れるがアメリアが全力で首を振ってかなめのそれ以上のあおりをなんとか阻止した。


「麗子様。機体の効果的運用がなされているかどうかは重要な監査項目になりますよ……部隊増設の話は以前から来ていますから……それを判断する材料にもなりますそれにここに納入されている05式はかなり問題のある機体ですから……選考過程からしてかなり灰色の存在です」


 カメラをいじりながら鳥居もまた適切なアドバイスを麗子におくる。麗子はここで満足げにうなづくと視線をかなめに向けた。


「そうですわね……戦場では丸に役に立たない程度の機動性のほとんどない機体がなぜ選定されたのか……かなめさん、それじゃあハンガーに参りましょう。夫である私の後ろを三歩離れてお歩きなさい」


 気まぐれな麗子の一言を聞いて麗子がどうやら三歩歩くとすべての事を忘れる鶏並みの記憶力だと知って一同は大きく胸をなでおろした。



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