第6話 知らない人にはついて行かない
「すいません……僕押しに弱いもので……あの人僕より年上でしょ?僕って年上の女性には逆らえないんです。だからいつもアメリアさんにいいように使われてるんですよ」
誠の言い訳に嵯峨は大きなため息をつく。
「そう言う問題じゃないの。お前さんと氷上君子。当日、初対面じゃん。知らない人に誘われてもついて行かない。これって小学校のとき習わなかった?しかも制服姿って何考えてるの?うちの隊員が氷上君子謎の引退の原因を作りましたってふれて回ってるようなもんじゃないの……そんなにうちの恥を晒して楽しい?俺は良いよ、プライドゼロを売りにしてる男だから。でも、うちには二百人からの隊員が居るんだよ。その全員が同じ恥を掻くわけだ。中でもお前さんの正面に座ってるかなめ坊。アイツは人一倍プライドが高い。アイツがこのことを知ったらすぐに銃を抜いてその額をためらいもなく撃ち抜くだろうということは想像つくよね?」
嵯峨は一言一言物わかりの悪い子供に言い聞かせるようにしてそう言った。
「ああ、原因を作ったのは僕です……それとこのことは隊の他の人間には内密にしてください。特に西園寺さんには……間違いなく射殺されるんで」
くどくどと説教を始めた嵯峨に助け舟のつもりでかえでが言った言葉に嵯峨はさらに深刻な表情をしてため息をついた。
「ああ、その点は大丈夫だ。俺の元部下でね、そう言うところと関係が深い仕事をしている奴が居るからこの写真は週刊誌の手に渡る前に俺のところにやって来た。そこで仕方なく俺も氷上君子と会ったの。そしたら今じゃあ、かえでよりも神前の方に夢中らしい。こりゃあヤバいなあと思って何とか説得して遼帝国に出国させた。だからほとぼりが冷めるまではなんとか東和国内にも知れ渡らないし、隊内でこのことを知ってるのはここにいる三人だけだ」
嵯峨は冷たくそう言い放った。
「隊長の国ですよね。そこで何をしてるんです?」
誠は嵯峨が実は現在は行方不明ということになっている遼帝国皇帝遼献本人であることを思い出した。
「うん、遼帝国の皇帝が立ち寄った先で作った女ということで宮廷内部に匿ってる。なんで俺の女でもない人を自分の女だと偽って匿わなきゃいけないの?俺何か悪いことした?それと神前、氷上君子は東和を離れる条件として子供は三人欲しいとか言ってた。再来年には次の子供が欲しいんだと。そん時はお前がなんとかしろ。俺は知らない。これ以上の責任を俺に負わせるな。つまり、再来年後にお前さんが童貞だろうが誰と結婚していようがそんなことは関係なく氷上君子と寝ることは決定事項。これは遼帝国皇帝の勅命。分かった?恨むなら眠りが深すぎる自分の体質と変な『許婚』であるかえでを恨め」
嵯峨は厳しくそう言い放った。
「つまり、僕は絶対に童貞を卒業しなきゃならないんですね?その時は誰と結婚していても皇帝命令で浮気をしないといけないということですね?」
誠はうれしい反応をすればいいのか困った反応をすればいいのか迷いつつそう答えた。
「そう言うこと。まあ、相手は東和でも一二を争うスタイル抜群の美女で、お嫁さんにしたい人候補に何度も上がったことのある女だもの。断るようなことはしないよね?それにそん時童貞だったらそのまま結婚しちゃいなさい。いつも俺にお前さんお蔦と結婚しろとか言ってるじゃん。その仕返し。これも勅命だから逆らうことは許されない。いい?勅命が嫌だったら隊長としてのお願いに変えてやってもいい。どちらがいい?好きな方を選んで」
嵯峨はそう言って誠達に背を向けてタバコに火をつけると誠とかえでに部屋から出て行くように手を振った。




