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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『特殊な部隊』と『征夷大将軍』  作者: 橋本 直
第十二章 モテない『将軍』モテる『大納言』

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第58話 『斬大納言』と『馬鹿公方』の対決

「お姉さまー!かなめお姉さまー!」


 誠は聞きたくも無い人物の声を聴いてかなめの表情の変化の理由を理解した。


 そこには乗馬服姿の男装の麗人、日野かえで少佐と彼女の身の回りの世話をする部下、渡辺リン大尉の姿があった。リンは手にバスケットを抱えうっすら笑みを浮かべながらかえでに従っている。


 上機嫌のかえでだが、麗子がその声の主の方に振り向いたとたんに凍り付いた表情に変わった。


 かえでのいつものさわやかな笑顔の上に浮かんだそれはまさに虫唾が走るという言葉を絵にかいたような表情だった。


「これは……無能な『将軍』が……一体何しに来た?貴様に出来ることが何かあるのか?あるなら僕に教えてくれないか?貴様のような無能は軍に居る資格はない。そもそも四大公家の恥だ。分家に家督を譲って甲武の辺境コロニーにでも引きこもっていろ」


 明らかに見下すような冷たい視線をかえでは麗子に向けた。


「無能?弾正尹から大納言に出世されて頭のねじが少しばかり緩くなられたのかしら?上に立つ右大臣の私としては……困ったものね。男の格好が好きな変態さん」


 麗子も負けてはおらずかえでに向けて敵意と軽蔑をあらわにした表情で余裕の笑みを浮かべてみせる。


「家柄だけでのし上がった女の言うことは……それしかないのかな?僕は海軍省には幹部士官として勤務していたんだ。お前の無能さは良く知っているよ。あっちこっち飛ばされて、どこでも無能の烙印を押された挙句、ようやく司法局本局の地下室の座敷牢言う骨をうずめるに値するゴミ捨て場が見つかったんだ。永遠にそこに閉じこもっていればいいのに。なんでこんな戦場に近い場所にお前が居るんだ?邪魔だ、帰ってくれ」


 生粋のエリートで将来を嘱望された公家軍人のかえでと無能で役立たずの武家軍人の象徴ともいえる『征夷大将軍』の麗子。そのにらみ合う姿を見て確かにこの二人なら相性などあうわけが無いと鈍い誠でも理解できた。


「家柄だけ?まあ、何をおっしゃっている事やら?まったくお公家様の軍人さんは考えることも単純で困りますわね。サムライである私達武家が守ってあげないと何もできない。だからサムライの国である甲武には私のような有能な『征夷大将軍』が必要とされているのですわ。だから、どこに行っても評価が最高なので、私の奪い合いになって結果として今の地位にありますのよ。それに私には『征夷大将軍』人望と知性……私に欠けてるものが何かありまして?『徳川恩顧』の者達もみな私を讃えております。それが何よりの証拠です」


 麗子は自信をもってそう答えるが、麗子のどこからその根拠のない自信がわいてくるのか誠には理解できなかった。


「人望?知性?そんなものが貴様に有るとは……思いもしませんが……それと『徳川譜代』の方々は貴様の血筋だけを頼りに無理をして持ち上げているだけだね。その事実に気付かないとは……まったく救いようがない。馬鹿もここまで行くと一種の芸だね。称賛に値するよ」


 かえではあきれ果てたというように麗子とのにらみ合いも馬鹿馬鹿しいというように目を逸らした。


「それは日野少佐に人を見る目が無いというだけの話ですわね……残念なことですわ。それに私は『将軍』として若くして不慮の事故で亡くなられた先代から人の心の真実を見る目を学びました。あの者達の言うことは真実です。私が有能なのは皆の認めるところ。その事実はお忘れなきように」


 一触即発。誠は二人の関係を見てそう直感した。ここでリンが止めに入ってくれればいいのだが、こちらはこちらで鳥居となぜかにらみ合う状況になっている。



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